『シンプル・プラン』 サム・ライミ監督 ☆☆☆★
原作がとても面白かったので、iTunesのレンタルで映画を観てみた。主人公のハンクはビル・パクストン、妻サラはブリジット・フォンダ、社会不適応者の兄ジェイコブはビリー・ボブ・ソーントンという顔ぶれだ。なかなか面白いキャスティングである。原作ではジェイコブは肥満体という設定だったが、ビリー・ボブ・ソーントンは別に太ってはいない。前半のストーリ . . . 本文を読む
『絶頂美術館―名画に隠されたエロス』 西岡文彦 ☆☆☆☆☆
これがどんな書物なのかは、タイトルと表紙を見れば一目瞭然だろう。名画とエロス。魅惑的なテーマである。私も子供の頃家にあった美術全集を眺めながら、いかにも高尚そうな画題の絵画にエロを感じてどきどきしたものだ。これは芸術を見てエロに反応してしまう自分がいかんのか、それともエロい絵がいかんのか。大体、芸術とエロは別物なのか。これらはとて . . . 本文を読む
『最も危険な遊戯』 村川透監督 ☆☆☆☆
遊戯シリーズ一作目を、日本版DVDを購入して再見。昔TVで観た時はどうやらズタズタにカットされていたようで、記憶にない場面も多かった。私は冒頭の麻雀をやる場面がすごく好きなのだが、あれもあんなに長くなかったような気がする。全体に昭和のB級アクション映画の雰囲気ムンムンだが、低予算ながら公開時はかなりヒットした映画らしい。
とにかくこれはもう、松 . . . 本文を読む
『終の信託』 朔立木 ☆☆☆★
映画はちょっと不満が残る出来だったけれども、『死亡推定時刻』の朔立木が原作なので小説を読んでみた。その結果、映画はかなり原作に忠実だったのだな、ということが分かった。ただし映画化の際に端折られた部分は当然あり、小説はその部分があることによって微妙に印象が変わってくるところも少なからずあった。たとえば、主人公の女医・綾乃が訴えられた経緯が詳しい。映画では検事の . . . 本文を読む
『間宮兄弟』 森田芳光 ☆☆☆★
所有している日本版ブルーレイで再見。最初に断っておくが、私は森田芳光を映画監督としてさほど高くは評価していない。時代感覚に優れていると言われているが、私には奇を衒った作為的な映画作りが目を引くあざとい才人、ぐらいの認識しかない。とんでもない駄作も多いし、そうでなくても底が浅い印象が拭えない。そんな森田監督の作品にしては、本作はわりと好感を持った方である。
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『シンプル・プラン』 スコット・B・スミス ☆☆☆☆☆
大金を見つけた三人がネコババしようとしてドツボにはまるという、サスペンス・スリラーである。日本での刊行は1994年と新しくはないが、今読んでも十分面白い。
ネコババ話といえばコーマック・マッカーシーの『血と暴力の国』(映画は『ノーカントリー』)を思い出すが、あっちでは究極の殺し屋アントン・シガーに追われるのに対し、こちらはネコババ . . . 本文を読む
『Saravah!』 高橋幸宏 ☆☆☆☆☆
高橋幸宏のソロ・アルバム第一作。YMO結成の年である1978年に発表。参加ミュージシャンは坂本龍一と細野晴臣に加え、サディスティック・ミカ・バンドの盟友である高中正義と加藤和彦、そして山下達郎、吉田美奈子などである。細野晴臣が「日本人離れしている」と評した高橋幸宏の垢抜けた趣味性とセンスがそのまま反映された、とても優雅で享楽的なアルバムだ。サラヴ . . . 本文を読む
HB爆弾に関する報告書
遺憾ながら以前とはすっかり変わってしまった私たちの現在の社会のありようを記述するにあたって、やはり私自身の経験を最初から語り起こすことがいちばん妥当で、理に適っているように思う。というのも、私はきれいに梱包されて誰からともなく郵送されてくるあれら無数の爆弾、あの致死性の贈り物を最初に受け取ったグループの一人に違いない、と思えるからだ。ただし言うまで . . . 本文を読む
『海街diary』 是枝裕和監督 ☆☆☆★
日系ビデオ屋のレンタルで鑑賞。原作は吉田秋生のコミックだそうだ。未読だが、この原作者の名前は非常になつかしい。昔『カリフォルニア物語』や『吉祥天女』が好きで、何度も読み返した記憶がある。少女マンガらしくないリアリズムと、シャープな描線と、奥の深いストーリーに魅せられたものだ。
この映画の舞台は鎌倉である。愛人に走った父親、家を出て行った母親と . . . 本文を読む
『明治断頭台』 山田風太郎 ☆☆☆★
山田風太郎の「明治もの」の一つ『明治断頭台』を読了。これだけが他と違って、かなり明治初期の時代設定になっているらしい。『警視庁草紙』では警察機構全体を操る切れ者として登場した川路利良が、まだ一役人として登場する。主役は弾正台の役人である香月経四郎と川路利良のコンビで、この二人が役人として競い合いながら一連の奇怪な事件を解決していくという趣向だ。なぜタイ . . . 本文を読む