アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

青い月の物語

2005-07-31 06:32:43 | 
『青い月の物語』 小浦昇   ☆☆☆☆  しばらく前に買った画集。絵本チックである。表紙の絵がとにかく美しいのでそれに惹かれて買った。  タイトルの通り月がテーマになっている。全部の絵に月が描かれているわけではなく星だけという絵もあるが、大抵月が描かれている。そしてどの絵も青い。風景画的な絵もあれば、月が氷漬けになっているようなメルヘンチックな絵もある。絵に合わせて短い文章も記載されている。絵 . . . 本文を読む

Remain in Light(その2)

2005-07-30 14:35:15 | 音楽
 昨日の続き。  さて、『Remain in Light』リリース直後、音楽評論家の渋谷陽一はロッキンオン誌上でこの作品をこきおろした。どうも純粋な批評というよりは他の思惑があったのではないかと私は思うのだが、とにかくこき下ろした。そして色々と反発をくらった。私がどっかの記事で見かけたのは、大貫妙子が渋谷陽一との対談でこの作品をかばい、「作品がカッコよければいいじゃない」的な発言をし、渋谷陽一は . . . 本文を読む

Remain in Light

2005-07-29 12:38:46 | 音楽
『Remain in Light』 Talking Heads   ☆☆☆☆☆  Talking Headsが1980年に発表した傑作。ブライアン・イーノも参加している。とにかくこのアルバムが発表された時は衝撃だった。こんな音楽それまでなかったのである。  まず、それまでトーキング・ヘッズといえばバリバリにニューヨークの香りがする知性派ニューウェーヴ・バンドで、そのロックはポップ・アートのよう . . . 本文を読む

浄土

2005-07-28 07:40:51 | 
『浄土』 町田康   ☆☆☆★  『屈辱ポンチ』に続いて町田康の短篇集を読んだ。最近出た奴だ。  『屈辱ポンチ』と比べると、饒舌体の濃度が薄まった感じで、普通の小説の語りに近づいている。あくまで比べるとの話だが。会話文も『屈辱ポンチ』では改行してなかったが、本書ではちゃんと改行されている。一人称でない話もある。それにまた、色んな妄想のごった煮状態だった前の作品と比べるとそれぞれの短篇のモチーフ . . . 本文を読む

屈辱ポンチ

2005-07-27 11:50:04 | 
『屈辱ポンチ』 町田康   ☆☆☆★  本日読了。町田康は昔『きれぎれ』を読んで、面白かったけどもういいやと思ってそれ以来読んでいなかったが、本屋で手にとってパラパラめくってみるとどうしても気になってくる。一気に二冊も買ってしまった。買ったのはこれと『浄土』。  『きれぎれ』がどんな話だったか忘れたが、印象は似ている。くだけた語りのような饒舌体で、妄想のような不気味でおかしな話が繰り広げられる . . . 本文を読む

金沢/酒宴

2005-07-26 09:13:00 | 
『金沢/酒宴』 吉田健一   ☆☆☆☆☆  吉田健一という人の小説を初めて読んだ。最近、これまで読まなかった日本の作家の本を読むことが多い。昔は、知らない作家はそもそもどういう作家なのかを知る手段があまりなく、だから本を手に取る機会もなく、すでに知っている作家か、書評かエッセーで紹介されていて興味が湧いた本ばかり読んでいたが、最近は「これってどんな作家だろう?」と思ったらいくらでも情報を入手でき . . . 本文を読む

助け人走る

2005-07-25 04:35:59 | 必殺シリーズ
『助け人走る』   ☆☆☆★  DVDボックスを買ったのだが、先週下巻をすべて観終わった。  これは必殺ファンとしてはなかなか評価しづらいシリーズではないだろうか。まず、基本的には地味である。ケレン味には欠ける。それは『仕置人』放映中に事件が起きたせいで、描写をマイルドにしなければならなかったという外部的な事情があり、仕方がないことなのだが、まず主人公達は殺し屋ではなく、人助けが仕事の助け人で . . . 本文を読む

アルゴールの城にて

2005-07-24 10:27:26 | 
『アルゴールの城にて』 ジュリアン・グラック   ☆☆☆☆☆  先週読了。『シルトの海岸』がなかなか良かったので、これも読んでみた。本作はシュルレアリスムの重要な作品と位置づけられているらしい。  『シルトの海岸』もそうだったが、この人はとにかく文章に特徴がある。息の長い、曲がりくねった、暗喩に満ちた、婉曲で曖昧な文章である。じゃ難解で読みにくいかというとそうでもなく、一種独特のリズムがあり、 . . . 本文を読む

スイミング・プール

2005-07-23 12:28:09 | 映画
『スイミング・プール』 フランソワ・オゾン監督   ☆☆☆  DVDにて鑑賞。ネットの書き込みとか見てなんとなく予備知識があったので、虚心には見れなかったが、それでも最後であっけにとられた。意味が分からないラストである。観客をミステリーの渦に突き落としたまま映画は終わっていく。しかしそれだけでなく、美しい南仏の映像、サニエの美しい裸体、シャーロット・ランブリングの演技など、色々と魅せる要素をこの . . . 本文を読む

Other Directions

2005-07-22 09:34:27 | 音楽
『Other Directions』 Nicola Conte   ☆☆☆★  『Bossa Per Due』が好きなのでこれも買ってみたが、これは完全なジャズだった。クラブ・ジャズとも言えない。ほとんどの曲にヴォーカルが入っている。歌詞つきの場合もあるがスキャットだけの場合もある。スキャットの感じは『Bossa Per Due』に近い。ヴォーカリストは男だったり女だったりする。  お洒落なジ . . . 本文を読む