『まっぷたつの子爵』 イタロ・カルヴィーノ ☆☆☆☆☆
久しぶりに再読。最近は岩波文庫から出ているようだが、私が持っているのは大昔に買った晶文社の「文学のおくりもの」シリーズの一冊である。このシリーズにはブラッドベリの「たんぽぽのお酒」なども入っていて、昔は書店の一角でよく見かけたものだが、今も日本の書店には並んでいるのだろうか。とてもなつかしい。
本書は子供でも読めそうなおとぎ話風の . . . 本文を読む
『眠れる美女』 マルコ・ベロッキオ監督 ☆☆☆☆★
日本版DVDで鑑賞。マルコ・ベロッキオはイタリアの映画監督で、数々の映画祭で受賞歴を持つベテランのようだけれども、この人の映画を観るのは今回初めてだった。本作はイタリア・フランス合作映画で、フランスの女優イザベル・ユペールが出演している。
物語の舞台は、17年間昏睡状態にある女性の安楽死問題で揺れているローマ。かの女性の安楽死を許可す . . . 本文を読む
『Revival』 稲垣潤一 ☆☆☆★
稲垣潤一をよく聴いていたのは大学生の頃である。「雨のリグレット」でデビューし「ドラマティック・レイン」が流行った後ぐらいだったと思うが、当時この人の声には聴いた人をハッとさせるようなあか抜けた魅力があって、私も初期のアルバムをCDレンタルで借りて、テープを何本も持っていた。その後似たような曲の連発でなんとなく聴かなくなったが、最近この『Reviva . . . 本文を読む
『白夜/おかしな人間の夢』 ドストエフスキー ☆☆
古典新訳文庫から出ている『白夜/おかしな人間の夢』を読了。「らしくない」作品を集めたということで、表題作の「白夜」も「感傷的ロマン」とサブタイトルがついた、ドストエフスキーらしくない可憐な恋愛譚と聞いたので読んでみた。が、あかん。もう全然ダメ。途中で放り出したくなったが、我慢して最後まで読んだ。
「白夜」はヴィスコンティも映画化した、 . . . 本文を読む
『クローズ・アップ』 アッバス・キアロスタミ監督 ☆☆☆★
所有する日本版DVDで再見。キアロスタミはご存知の通り『ライク・サムワン・イン・ラブ』や『トスカーナの贋作』を撮った監督で、通常の映画作りから逸脱するような、きわめて特異な方法論を持つ映像作家である。この『クローズ・アップ』もそんなキアロスタミの定石破りが炸裂した、実に挑戦的なフィルムであり、ドキュメンタリーとフィクションが融合し . . . 本文を読む
『忘れられた巨人』 カズオ・イシグロ ☆☆☆★
カズオ・イシグロの新作が文庫になっていたのでさっそく購入、読了した。イシグロは作品ごとにジャンルや手法を自在に変えてくる作家なので、今回はどういう趣向かと思ったら、なるほどこう来たか。ファンタジーである。騎士やドラゴンや修道僧が登場する、堂々たるファンタジーだ。しかしこんな気持ち悪いファンタジー小説が一体どこにあるだろうか。もしファンタジー小 . . . 本文を読む
『砂時計』 ヴォイチェフ・イエジー・ハス監督 ☆☆
カルト的な人気を誇るポーランドの映画監督ヴォイチェフ・イエジー・ハスの『砂時計』を観た。原作はブルーノ・シュルツの『砂時計サナトリウム』で、前にこのブログでご紹介したがきわめてシュールレアリスティックな小説である。これを映画化してまともな映画になるはずもなく、果たして、尋常な映画ではなかった。言うまでもなく奇怪な映像の続出、登場人物たちは . . . 本文を読む
『さびしい宝石』 パトリック・モディアノ ☆☆☆☆☆
フランス人作家、パトリック・モディアノの長篇『さびしい宝石』を再読。これはパリに住む、身寄りのない19歳の少女テレーズについての物語である。テレーズはかつて母親(ママン)に「かわいい宝石(ラ・プティット・ビジュー)」と呼ばれていたため、原題はそのまま「ラ・プティット・ビジュー」だが、邦題は小説のニュアンスを考慮して「さびしい宝石」とした . . . 本文を読む
『夏の嵐』 ルキノ・ヴィスコンティ監督 ☆☆☆☆☆
ヴィスコンティの日本版ブルーレイ『夏の嵐/白夜』が発売されたので購入。まずは『夏の嵐』を鑑賞した。
絢爛豪華なメロドラマ、とあったので心から愛し合う二人が引き裂かれる悲劇、みたいな甘いラブストーリーを想像したら全然違った。そういうロマンティックなものではなく、これは残酷なイロニーたっぷりの、意地が悪い、辛辣きわまりない人間観察ドラマだ . . . 本文を読む
『犯罪者(上・下)』 太田愛 ☆☆☆☆
テレビ番組『相棒』の脚本家さんが書いたという小説を読了。アマゾンのカスタマーレビューでみんな面白い面白いと絶賛しているので読んでみたのだが、確かにこれはイッキ読み必至のジェットコースター・ノヴェルである。ページターナーとしては非常に優秀。本を置けなくなる。しかも上・下巻とボリュームたっぷりなので、時間がある時に読んだ方がいい。
話はかなり込み入っ . . . 本文を読む