『Mr. Hands』 ハービー・ハンコック ☆☆☆☆☆
ハービー・ハンコックを聴き始めたのはわりと最近である。パット・メセニーが好きなアルバムを聞かれて「ハービー・ハンコックがプレイしているものすべて」と答えたと聞いて手を出したのだが、すっかりはまってしまった。お薦めアルバムは多々あるが、まずは今一番お気に入りの『Mr.Hands』をご紹介したい。
ハービー・ハンコックはもともとマイ . . . 本文を読む
『こころ』 夏目漱石 ☆☆☆☆☆
夏目漱石の『こころ』を再読。岩波文庫である。
子供の頃、日本文学と言えば夏目漱石と芥川龍之介だった。あれはなぜだろう。『坊っちゃん』のせいだろうか。私もごく幼い頃に『坊っちゃん』を読んだが、いわゆる文学と呼ばれるものを最初に読んだのはあれだったかも知れない。直情径行型の青年が教師になって俗物の上役たちを懲らしめるという他愛もない話なのに、文学的高尚さが . . . 本文を読む
『マレーナ』 ジュゼッペ・トルナトーレ監督 ☆☆☆★
DVDで再見。語り手はモニカ・ベルッチ演じるところのマレーナに憧れる少年で、彼の目を通して観客はマレーナの物語を眺める。当然ながら「性の目覚め」の時期にある少年の妄想があちこちに顔を出す。これはつまり『髪結いの亭主』の前半部分にも似た雰囲気の、甘酸っぱい妄想系映画なのである。主演のモニカ・ベルッチはまったく適役で、全篇彼女の色香でムンム . . . 本文を読む
『ミステリウム』 エリック・マコーマック ☆☆☆
エリック・マコーマックの長編である。マコーマックは短篇集『隠し部屋を査察して』がとにかく強烈で、ぜひ長編を読みたいと思ったが既刊の『パラダイス・モーテル』は絶版、欲求不満に陥っていたところへこの『ミステリウム』が出たので飛びつくようにして買った。さあていかなる奇怪な言語マジックが飛び出すことか、と期待と不安が半々で読み始めたが、読み終えてみ . . . 本文を読む
『男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋』 山田洋次監督 ☆☆☆☆
シリーズ29作目。マドンナはいしだあゆみ。
本作は暗い。それはもう異様なまでの暗さで、シリーズ中異色作と言ってもいいと思う。といっても笑いが少ないわけじゃなく、むしろ秀逸なコメディ場面は多いし、京都を舞台に展開する前半はゲストも多くて華やかだ。暗さの原因のは後半の展開、そして寅の情けなさがむきだしになる恋の顛末である。痛まし . . . 本文を読む
『鳴門秘帖(一、二、三)』 吉川英治 ☆☆☆★
全三巻を読了。連載誌の発売を待ちかねて買いにいったのは『鳴門秘帖』と『あしたのジョー』だけ、と寺山修司が梶原一騎に言ったと聞き、究極の徹夜本かと思い読んでみたのだが、それほどでもなかった。まあ確かに面白い。主人公は美剣士でクールでかっこよく、その名も法月弦之丞。夕雲流の遣い手である。とにかくモテモテで、純情可憐なヒロイン・お千絵が一途に慕う一 . . . 本文を読む
『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』 スティーヴン・スピルバーグ監督 ☆☆☆★
ご存知、インディアナ・ジョーンズ・シリーズの三作目をDVDで再見。私はこのシリーズのトリロジー・パッケージを持っているのである。なつかしい。
この三部作は典型的なアミューズメント・パーク型娯楽映画である。老若男女愉しめる。家族で愉しめる。エロなし。残酷場面なし。適度にハラハラさせ、適度に笑わせ、適度にこわが . . . 本文を読む
『短篇コレクション I』 池澤夏樹・編 ☆☆☆☆
『短編コレクション II』が良かったので『I』も購入した。全体の印象は『II』と似ていて、非常にバラエティ豊かな作品を集めてある。ただ個人的には、キーとなる短篇に既読のものが多かったのでそれが物足りなかった。パス、ルルフォ、ブローティガン、カーヴァーなどである。収録作品は以下の通り。
コルタサル「南部高速道路」
パス「波との生活」
マラ . . . 本文を読む
『男はつらいよ 柴又慕情』 山田洋次監督 ☆☆☆
シリーズ第9作目。ちゃんと観るのは初めてだった。マドンナは吉永小百合。なんでも「理想のマドンナ」を公募して一位になったのが吉永小百合で、本作はその彼女をマドンナに迎えて制作された作品らしい。
確かに吉永小百合はお美しく、大変にキュートである。さゆりファンはそれだけでも満足かも知れない。が、そこまでさゆりに思い入れがない私にとっては、どう . . . 本文を読む
『素粒子』 ミシェル・ウエルベック ☆☆★
『短篇コレクション II』で強烈な印象を受けたウエルベックの『素粒子』を入手、読了したわけだが、残念ながら期待はずれだった。個人的には、「ランサローテ」よりかなり落ちる。
まず、「ランサローテ」で強烈だったあの文体がない。普通である。それから物語はブリュノとミシェルという異父兄弟を軸に進むが、ノーベル賞クラスの生物学者というミシェルが登場する . . . 本文を読む