アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

火星のタイム・スリップ

2009-03-31 21:20:54 | 
『火星のタイム・スリップ』 フィリップ・K・ディック   ☆☆☆★  大昔、多分中学生か高校生の頃読んだことのあるディック本を再読。ディックの傑作には必ず名前が挙がる本書で、川又千秋は解説で「SFのベスト5であれベスト3であれ自分は必ず本書を挙げてきた、ベスト1と言われれば悩んだあげくにやはり本書を挙げるだろう」とまで絶賛しているが、個人的にはそこまで好きではない。あまりに悪夢的で重苦しく、私が . . . 本文を読む

座頭市鉄火旅

2009-03-29 11:18:04 | 映画
『座頭市鉄火旅』 安田公義監督   ☆☆☆☆  座頭市シリーズ15作目。英語版DVDで再見。  これはシリーズの中でもかなりの傑作だと思う。個人的には一作目の『座頭市物語』の次に好きである。始まってすぐ市が旅芸人達と出会い、水前寺清子が「ぼろはきーててーもこーころーはにしきィ~」という例の歌を歌うので、これもまたゲスト頼りの企画モノかと一瞬不安になるが、その後の展開は全然問題ない。  旅の途 . . . 本文を読む

さむけ

2009-03-27 19:53:03 | 
『さむけ』 ロス・マクドナルド   ☆☆☆☆  ハードボイルド・ミステリの名作『さむけ』を読了。ロス・マクドナルドの小説を読んだのはこれが初めてだ。チャンドラーの後継者と言われているようだが、語りが私立探偵リュウ・アーチャーの一人称「私」であることや気の利いたセリフが飛び交うところなど、確かにそんな感じがある。全体に漂う哀感も似ているが、こっちの方がもっと暗いかも知れない。アクションが少なく静謐 . . . 本文を読む

黒のエチュード

2009-03-25 20:30:25 | 刑事コロンボ
『黒のエチュード』   ☆☆☆  刑事コロンボ10個目のエピソード。オーケストラの指揮者が犯人である。不倫の関係にあるピアニストに関係を公表すると言われて殺す。ひどい奴だ。  犯人役のジョン・カサヴェテスは『ローズマリーの赤ちゃん』に出ていた役者さんで、あの映画でもやっぱりひどい夫の役だった。しかしルックス的にはダンディでとてもかっこいい。  全体の出来はまあまあ。アレックスは犯行時にカーネ . . . 本文を読む

ルビコン・ビーチ

2009-03-23 20:03:42 | 
『ルビコン・ビーチ』 スティーヴ・エリクソン   ☆☆☆☆  再読。それにしてもかっこいいタイトルである。ルビコン・ビーチ。訳は柴田元幸でなく作家の島田雅彦。再読とはいえどんな話だったかまったく覚えておらず、なんとなく満々と水をたたえて広がる川のイメージだけがおぼろげに残っていたが、今回再読してみて、やはり『黒い時計の旅』や『Xのアーチ』などと比べると物語のインパクトは落ちることが分かった。面白 . . . 本文を読む

流れる

2009-03-21 19:46:36 | 映画
『流れる』 成瀬巳喜男監督   ☆☆☆☆☆  以前観た時はあまりピンと来なかった『流れる』を再見し、大幅に評価上がる。『浮雲』を久しぶりに観たら最初観た時より感動したので、ひょっとしてこれもと思って観直したら案の定である。やはり名作と言われるものはDVDで購入する意味がある。レンタルビデオだったらもう一度観ることはなかっただろう。  傾きかけた芸者屋が舞台ということで溝口監督の『祇園の姉妹』や . . . 本文を読む

あなたをつくります

2009-03-19 19:42:09 | 
『あなたをつくります』 フィリップ・K・ディック   ☆☆  昔サンリオ文庫で『あなたを合成します』のタイトルで出ていた小説の創元文庫版。再読。  電子オルガンの会社が売行き不振を挽回するためにシミュラクラを作りはじめる、という破天荒なアイデアはディックらしくて面白いが、出来上がった小説は求心力を欠き、よれよれである。はっきり言って失敗作だ。プロットはいつにも増して行き当たりばったりで、どうや . . . 本文を読む

Evening Star

2009-03-17 19:25:37 | 音楽
『Evening Star』 FRIPP & ENO   ☆☆☆☆☆  ロバート・フリップとブライアン・イーノのコラボレーション二作目。ジャンルとしてはアンビエント・ミュージックということになるだろう。非常に平和的、かつ美しい世界が広がる。収録曲目は以下の通り。 1.Wind On Water 2.Evening Star 3.Evensong 4.Wind On Wind 5.An Inde . . . 本文を読む

死者の書

2009-03-15 11:23:46 | 
『死者の書』 ジョナサン・キャロル   ☆☆☆  『パニックの手』のあとがきで作家の津原泰水が本書のことを「物凄い」と書いていたので、再読してみた。ネットで検索してみてもやはり本書の評判は高いようだ。私は以前読んだにもかかわらず全然何の感銘もなく、内容もほとんど忘れている。が、一度読んで面白くなかったものを再読したら良さが分かり、ああなぜ最初からこれが分からなかったのかこの馬鹿、と自分に愛想が尽 . . . 本文を読む

断たれた音

2009-03-14 12:44:21 | 刑事コロンボ
『断たれた音』   ☆☆☆  刑事コロンボ16番目のエピソード。今回の犯人はチェスの世界チャンピオン。  犯人が対戦相手を滞在しているホテルで殺すという状況なので、今回は犯人の自宅やオフィスの訪問はなく、ずっとホテルが舞台になっている。犯人のクレイトンはチェス名人ということで頭が切れ、抜群の記憶力の持ち主だが、一方で神経質で線が細く、耳が聞こえないというハンディキャップを背負っている。コロンボ . . . 本文を読む