『クリーピー 偽りの隣人』 黒沢清監督 ☆★
私は『不法侵入』や『The Gift』みたいにアブナイ奴が出てくるサイコサスペンスものが大好きなので、日系ビデオレンタル屋さんでDVDを入手して観たのだが、これはもうサイテーだった。香川照之がアブナイ隣人役を演じているというのも期待した理由の一つだったが、完全に役者のムダ使いである。
もう率直に言わせてもらうが、脚本、演出がありえないレベル . . . 本文を読む
『イルカの日』 ロベール・メルル ☆☆☆☆
昨年日本に一時帰国した時古本で入手した絶版本の一冊。フランス人作家ロベール・メルルの代表作で、SFとポリティカル・スリラーを混ぜ合わせたような小説である。絶版になって久しいので、読んだことがある人は少ないんじゃないだろうか。1973年に映画化されてDVDも出ているので、そっちを観た人はいるだろうが、正直映画はぱっとしない出来だったし、映画と小説で . . . 本文を読む
『Deep Song』 カート・ローゼンウィンケル ☆☆☆☆★
フィラデルフィア出身のジャズ・ギタリスト、カート・ローゼンウィンケル。てっきりニューヨークがホームグラウンドだとばかり思っていたが、現在ドイツのベルリンに住んでいるらしい。以前、現代ジャズシーンの注目アーティストとしてネットで名前を見かけたので、E.S.T.と同時期に聞いてみた。E.S.T.はすぐに気に入ったが、こちらはあまり . . . 本文を読む
『証拠は眠る』 オースチン・フリーマン ☆☆☆★
ソーンダイクものの長篇を読了。科学捜査の探偵ということで、ミステリの中でもどうやらファン層が限られている様子のソーンダイクものだが、私は結構好きである。コロンボ好きの私は当然倒叙ものが大好きなので、倒叙ミステリの傑作が多数収められている短篇集『ソーンダイク博士の事件簿』はかなり気に入っている。
本書は倒叙ものではなく、犯人が最後まで分か . . . 本文を読む
『裁かれるは善人のみ』 アンドレイ・ズビャギンツェフ監督 ☆☆☆★
『エレナの惑い』に感銘を受けたため、ズビャギンツェフ監督の映画をもうひとつ鑑賞。映像が素晴らしいという評判だったので是非日本語字幕付きのブルーレイで観たいと思ったのだが、日本ではブルーレイが出ていないようだったのでやむなく英語版ブルーレイを購入した。邦題の「裁かれるは善人のみ」はストーリーの端的な要約になっているが、原題は . . . 本文を読む
『蝶々殺人事件』 横溝正史 ☆☆☆★
古本を入手して読了。「蝶々殺人事件」「蜘蛛と百合」「薔薇と鬱金香」の三篇が収録されている。いずれも金田一耕助ではなく由利先生が登場するミステリである。表題作が傑作という噂をきいて入手したが、個人的にはまあまあだった。クロフツの『樽』を意識した作品ということで、東京と大阪でトランクやコントラバスのケースが行き来するあたりよく似ているが、この趣向なら私は『 . . . 本文を読む
『ブルージャスミン』 ウディ・アレン監督 ☆☆☆☆☆
iTunesのレンタルで鑑賞。ひっじょーに面白かった。例によってドタバタ・コメディかと思ったら、ものすごくブラックかつ辛辣かつ残酷、しかも洒脱で機知溢れる物語だった。笑ったりニヤニヤできる部分は数多いけれども癒しやほのぼのとは無縁の、痛烈なアイロニーがギュッと凝縮された映画である。
主人公のジャスミン(ケイト・ブランシェット)はニュ . . . 本文を読む
『屋根裏の仏さま』 ジュリー・オオツカ ☆☆☆☆
これも日本で買ってきた本。新潮クレスト・ブックスの一冊で、著者は日系アメリカ人女性である。自分の祖先のことを調べる中で、かつて日本からアメリカに集団で渡ってきた「写真花嫁」に関心を抱き、取材をし、それを題材に本書を書いたという。
「写真花嫁」とは、当時アメリカに移住し孤独な生活を送っていた日本人の男たちの伴侶となるため、ただ「夫」たちの . . . 本文を読む
『処女が見た』 三隅研次監督 ☆☆☆
日本版DVDで鑑賞。パッケージはこんなだけど、モノクロ映画である。これはもう、尼僧姿の若尾文子の美貌を鑑賞する映画、といっていいでしょう。美しき若尾文子おネエサマが生臭坊主の慰みものになる、というシチュエーションはちょっと『雁の寺』に似ている。しかしこちらは完全なエンタメ映画で、思いっきり通俗的であり、ぽんぽん話が進み、勧善懲悪的なオチがつく。
も . . . 本文を読む
『リスボンへの夜行列車』 パスカル・メルシエ ☆☆☆☆★
あけましておめでとうございます。皆様、2017年の元旦をどのようにお過ごしでしょうか(日本はもう2日の午前2時を回っていますが、こちらはまだ元旦の正午過ぎなのです)。私はこれからソファーに寝っ転がって読書したり音楽を聴いたりして、のんびりと疲れた体を癒す予定ですが、一年の計は元旦にありともいいます。果たして今年一年、自分は何をしたい . . . 本文を読む