78(ナナハチ) 吉田篤弘 ☆☆☆★
クラフト・エヴィング商會のかたわれ、吉田篤弘の小説。ちょっと見ないうちに『空ばかり見ていた』『十字路のあるところ』そしてこの『78』と矢継ぎ早に新作が出ており、つい三冊まとめて買ってしまった。
クラフト・エヴィング商會は『すぐそこの遠い場所』と『クラウド・コレクター―雲をつかむような話』がすごく好きで、特に『クラウド・コレクター―雲をつかむような話 . . . 本文を読む
『Music for Egon Schiele』 Rachel's ☆☆☆☆★
「美しい音楽」と言った時にどういうものを連想するかはもちろん十人十色であって、バッハやモーツアルトという人もいるだろうし、アントニオ・カルロス・ジョビンだという人もいれば、いやブライアン・ウィルソンだという人もいるだろうし、中にはヘビメタやパンクこそ一番美しいって人だっているに違いない。美しいというのはそれほど . . . 本文を読む
『ロンドンの二人の女』 エマ・テナント ☆☆☆
エマ・テナントはイギリスの女流作家で、本書の紹介文によればアンジェラ・カーターと並んで英国のマジック・リアリズムを代表する作家、らしい。本書には「ミズ・ジキルとミセス・ハイドの不思議な事件」という副題がついている。この副題の通り、これはスティーヴンスンの『ジキル博士とハイド氏』を下敷きにした小説だ。ジキルとハイドは女性になっている。
小説 . . . 本文を読む
『Futures』 Jimmy Eat World ☆☆☆☆
Copelandが良かったので、他のエモ・バンドも聴いてみようと思って買ってきた。冒頭一曲目からいきなりガガッガガッ、ガガッとハードなギターリフ炸裂。元気溌剌って感じである。曲調も明るく、キャッチー。ヴォーカルも若々しいハイトーンでいかにもアメリカン・ロック。軽い声質でほど良くワイルド。いかにも売れそうな感じだ。全体の印象はスト . . . 本文を読む
『禁じられた恋の島』 エルサ・モランテ ☆☆☆☆
ハーレクイン・ロマンスみたいなすごい邦題だが、原題は『アルトゥロの島』というれっきとしたイタリア文学本だ。作者はアルベルト・モラヴィアの奥さんだった人で、本書はイタリアの文学賞であるストレガ賞を受賞している。1957年発表で、訳者の解説によれば当時は国際的な反響を呼んだらしい。ちょっと引用すると、ニューヨーク・タイムズ紙「崇高なという言葉で . . . 本文を読む
『Beneath Medicine Tree』 Copeland ☆☆☆★
Copelandの1stアルバム。『In Motion』の前作である。
実はこれも『In Motion』と同時に買ったのだが、ぱっと聞いて気に入ったのは2ndの『In Motion』の方だった。メロディはよりキャッチー、明るい印象、躍動感があり、楽曲もバラエティに富んでいてメリハリがきいている。それに比べると、 . . . 本文を読む
『怖るべき子供たち』 ジャン・コクトー ☆☆☆☆
フランスの天才詩人ジャン・コクトーの小説。短いのであっと言う間に読める。なかなか濃度が濃い小説なので、文庫版のこの薄っぺらさがなんだか軽やかで気持ちいい。
帯には「未だ善悪の区別を知らぬ無邪気で柔らかな子供たち。彼らの無秩序な世界を鋭く切り裂く官能的な小説詩」とある。確かに全体の感じは小説詩といってもおかしくないと思うが、『ポトマック』 . . . 本文を読む
『ALWAYS 三丁目の夕日』 山崎貴監督 ☆☆☆☆★
レンタルビデオで鑑賞。評判に違わず、とてもいい映画だった。泣ける、とか、人情味豊かな、とか聞いていたので、人情ものにあまり惹かれない私は微妙に引いていたが、観てみるとこの映画はそんなものじゃなかった。懐古映画のように見えて懐古映画でもない。これはユートピア映画である。ほとんどファンタジーと言ってもいい。
時は昭和33年、東京タワー . . . 本文を読む
『どんがらがん』 アヴラム・デイヴィッドスン ☆☆☆
奇想作家の短篇集ということで興味をひかれて読んでみたが、微妙。確かにユニークであることは間違いないが、短篇によって出来や印象にかなりばらつきがあり、面白い部分もあるがB級感もある。発表の年代が1950年代から60年代と古いので、まあアイデアの古さはある程度仕方ないかも知れない。
色んな賞をもらっているらしい。ヒューゴー賞、世界幻想文 . . . 本文を読む
『The Lake House』 Alejandro Agresti監督 ☆☆★
韓国映画『イルマーレ』のリメイク『The Lake House』を観てきた。かなり印象薄かった。
『イルマーレ』はDVDを持っていて、結構好きだ。こういう「時を越える」系の話に私は弱い。同じく韓国の『リメンバー・ミー』も好きだし、『オーロラの彼方へ』もハリウッド的ながらわりと良かった。ちょっと前に書いた『 . . . 本文を読む