アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

コネチカットから来た夫婦

2018-03-29 21:47:38 | 創作
          コネチカットから来た夫婦  199x年の夏、ぼくは休暇をとってバーモントの湖畔にある小さなベッド・アンド・ブレックファストに投宿した。それはひとり者の気ままな旅で、休暇の最初の頃は愉しさで夢見心地だったけれども、一週間を過ぎる頃には人恋しさで気分が滅入ってきた。バベル夫妻に出会ったのはそんな時だ。朝食のエッグ・ベネディクトを食べている時、社交好きの宿の主人が食堂に入ってきて、 . . . 本文を読む

チャイナ・シンドローム

2018-03-26 21:57:01 | 映画
『チャイナ・シンドローム』 ジェームス・ブリッジス監督   ☆☆☆☆★  1979年のアメリカ映画を、日本版DVDで鑑賞。出演はジェーン・フォンダ、マイケル・ダグラス、ジャック・レモン。初見だったが、こんな面白くてスリリングで力のこもった映画を見逃していたかと驚いた。原子力発電所の事故とそれを隠蔽しようとする大企業という硬派な題材だが、題材の硬さに負けることなく実に優秀な娯楽スリラーになり得てい . . . 本文を読む

神祭

2018-03-23 22:42:44 | 
『神祭』 坂東眞砂子   ☆☆☆☆  これもホラー・アンソロジー『かなわぬ想い―惨劇で祝う五つの記念日』つながりで、坂東眞砂子氏の作品をまとめて読んでみようと思って入手した本。アンソロジーというのは、当たるとこうやって広がっていくのが楽しい。  アンソロジーに入っていた「正月女」は、日本の田舎ならではの土着性と閉鎖的ムラ社会の雰囲気で塗りつぶされた、なんとなく横溝正史を思わせる世界だったが、本 . . . 本文を読む

未来よこんにちは

2018-03-20 23:17:10 | 映画
『未来よ こんにちは』 ミア・ハンセン・ラヴ監督   ☆☆☆☆☆  Netflixで観て気に入り、日本語字幕でもう一度観たいと思って日本版ブルーレイを購入した。二度観てもやっぱり傑作だと思う。ただ、非常に淡々とした映画なのでピンと来ない人は来ないかも知れない。緊密なプロットや劇的なストーリーで観客を惹きつける映画と淡々としてつかみどころがない映画があるとしたら、この映画は後者である。  主人公 . . . 本文を読む

女系家族(小説)

2018-03-17 13:31:27 | 
『女系家族』 山崎豊子   ☆☆☆☆☆  にょけいかぞく、と読む。三隅研次監督の映画がのたうち回るほど面白いのだが、そういえば山崎豊子の原作はまだ読んでなかったな、と気づいてAmazonで購入。『白い巨塔』『華麗なる一族』と男の権力闘争を描かせたらページをめくる手が止まらなくなる山崎豊子、きっとこの小説も面白いだろうという予想はたがわず、堪能した。  基本的には映画と同じだが、筋の展開がもっと . . . 本文を読む

クライング・ゲーム

2018-03-14 21:58:48 | 映画
『クライング・ゲーム』 ニール・ジョーダン監督   ☆☆☆☆  Netflixで鑑賞。1992年公開のイギリス映画である。公開当時私はもう渡米していたが、日本ではこの映画はある「驚愕の秘密」を売り物として宣伝されたらしい(アメリカでどうだったかは知らない、公開当時にはこの映画の存在を知らなかったからである)。私も日本人の友人からそれを聞いて、あとでレンタルビデオで鑑賞した記憶がある。そして宣伝通 . . . 本文を読む

悪女について

2018-03-11 13:53:58 | 
『悪女について』 有吉佐和子   ☆☆☆☆☆  映画『不信のとき』が大変面白かったので、原作者・有吉佐和子の本を何か読んでみようと思って入手した。これは1978年「週刊朝日」の連載小説とかなり古いが、小説内の当時の世相や会話の口調が時代を感じさせる程度で、内容的には今読んでもまったく問題なし。むしろ面白過ぎる。  タイトル通り、ある女性についての物語である。「悪女」となっているのはもちろん多義 . . . 本文を読む

Big Sick

2018-03-08 21:09:55 | 映画
『Big Sick』 マイケル・ショウォルター監督   ☆☆☆☆★  Amazon Primeで鑑賞。聞いたことない名前のパキスタン人が主演の、なんだか地味そうな映画だったのだが、やたら評価が高いので観てみた。無料だし。そしたら非常に良くてびっくりした。世間の評価というのも侮れないものである。ウィキペディアによれば、映画批評サイトRotten Tomatoesでも異様に評価が高く、批評家支持率は . . . 本文を読む

会いたかった人

2018-03-04 17:38:06 | 
『会いたかった人』 小池真理子   ☆☆☆☆  アンソロジー『かなわぬ想い―惨劇で祝う五つの記念日』の「命日」が面白かったので、小池真理子の短篇集を購入した。「短篇セレクション サイコ・サスペンス篇〈1〉」と銘打たれている。血みどろホラーは好みじゃないが、サイコ・サスペンスは大好物である。短篇集といっても、収録されているのは「会いたかった人」「倒錯の庭」「災厄の犬」の三篇のみ。ということは、一篇 . . . 本文を読む

美しい星

2018-03-01 23:47:10 | 映画
『美しい星』 吉田大八監督   ☆☆  日系ビデオ屋のレンタルDVDで鑑賞。三島由紀夫の原作は未読。出演はリリー・フランキー、中嶋朋子、亀梨和也、橋本愛、佐々木蔵之介、その他。気象予報士一家のメンバーがそれぞれ自分が異星人(火星人、金星人、水星人)だと「覚醒」する話。気象予報士(リリー・フランキー)は地球を救おうとし、長男(亀梨和也)は議員の事務所で働き、長女(橋本愛)は金星人の子供を妊娠する。 . . . 本文を読む