アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

バン、バン! はい死んだ

2014-03-29 20:40:03 | 
『バン、バン! はい死んだ: ミュリエル・スパーク傑作短篇集』 ミュリエル・スパーク   ☆☆☆☆★  以前、『短篇小説日和: 英国異色傑作選』収録の「あとに残してきた少女」で強烈な印象を受けたミュリエル・スパークの短編集が出たということで、さっそく入手した。一通りで読んでみて、やはり、かなり独特な小説を書く作家だと感じた。特徴としては無造作と思えるほどに短くきっぱりしたセンテンス、歯切れの良さ . . . 本文を読む

秋のソナタ

2014-03-27 20:56:47 | 映画
『秋のソナタ』 イングマール・ベルイマン監督   ☆☆☆☆  名作と名高いベルイマンの『秋のソナタ』を初鑑賞。ベルイマンとイングリッド・バーグマンの初顔合わせであり、またバーグマンの遺作としても有名な作品である。アマゾンの紹介文では「映画史上に輝く奇跡の映画」と書かれている。確かに強烈であり、圧巻であり、独特の美しさを持ち、憂愁と戦慄に彩られた、ベルイマンでなければ撮れない映画であることは間違い . . . 本文を読む

春の嵐

2014-03-25 21:52:47 | 
『春の嵐(ゲルトルート)』 ヘルマン・ヘッセ   ☆☆☆☆★  ヘッセの『春の嵐』を再読。うつくしい。限りなくうつくしい。文学史的にどうかは知らないが、これぞドイツ浪漫主義のきわみと私は勝手に思っている。この柔らかな抒情性、透明な風が吹き抜け、森がざわめき、木漏れ日がきらめく甘美な世界。私はいわゆるバルビゾン派の絵画特にコローが大好きで、「モルトフォンテーヌの追想」などを見るともう本当に陶然とな . . . 本文を読む

リアリズムの宿

2014-03-23 19:16:27 | 映画
『リアリズムの宿』 山下敦弘監督   ☆☆☆  日本版DVDを入手して鑑賞。しかしこのDVDは画質が悪いなあ。細部が潰れているし、画面全体が暗い。4000円もするのに、もうちょっとましな画質で出してもらえないだろうか。  つげ義春原作の「リアリズムの宿」と「会津の釣り宿」をくっつけてアレンジしたもので、さほど名が売れていない映画監督と脚本家がたまたま二人連れになって鳥取をブラブラ旅する、という . . . 本文を読む

はだかの太陽

2014-03-20 21:25:43 | 
『はだかの太陽』 アイザック・アシモフ   ☆☆☆☆  『鋼鉄都市』に続く、ロボット・シリーズの長編第二弾。この後のロボット・シリーズは作品と作品の間に物語の上でかなり年月の隔たりが出てくるが、これは前作の数ヶ月後という設定だ。もちろん主人公は地球人の私服刑事イライジャ・ベイリで、前作同様ロボットのダニールとコンビを組んで殺人事件を捜査する。今回、イライジャは宇宙国家ソラリアに出かけていく。 . . . 本文を読む

ローマ

2014-03-18 20:45:42 | 映画
『ローマ』 フェデリコ・フェリーニ   ☆☆☆☆★  フェリーニの『ローマ』を再見。これはローマをめぐるフェリーニの記憶や思いやイメージを自由に羅列した、お得意のエッセー映画である。物語ではない。『道化師』や『アマルコルド』に似たスタイルだが、『道化師』ほどドキュメンタリー風ではなく、『アマルコルド』ほどフィクショナルではない。まあ、両者の中間ぐらいだろうか。『道化師』同様、フェリーニ自身も登場 . . . 本文を読む

清兵衛と瓢箪・網走まで

2014-03-16 23:12:19 | 
『清兵衛と瓢箪・網走まで』 志賀直哉   ☆☆☆★  『小僧の神様/城の崎にて』がなかなか良かったので、初期の短編集である『清兵衛と瓢箪・網走まで』を入手、読了した。悪くないが、やはり後期の『小僧の神様/城の崎にて』の方が面白かった。  自伝的、日常描写的な短編が多いのは『小僧の神様/城の崎にて』と同じ。一方、虚構作品のこなれ方がまだそれほどでもない。『小僧の神様/城の崎にて』では達人の域だっ . . . 本文を読む

男はつらいよ 寅次郎物語

2014-03-14 23:00:48 | 映画
『男はつらいよ 寅次郎物語』 山田洋次監督   ☆☆☆★  シリーズ第39作、『寅次郎サラダ記念日』の一つ前の作品である。マドンナは秋吉久美子。  なかなか特色のある一作だと思う。ストーリー展開はいつものパターンを崩していて、かつ、妙にあっさりした印象を残す。目先が変わって面白い反面、どこか物足りない。「男はつらいよ」シリーズ中の傑作といわれる作品が与えてくれる満腹感には欠ける。が、決して駄作 . . . 本文を読む

CMソング・グラフィティ

2014-03-12 21:45:04 | 音楽
『CMソング・グラフィティ』 ゴダイゴ   ☆☆☆☆  最近の若者は知らないかも知れないが、ゴダイゴとは70年代後半にヒット曲を連発して盛り上がった日本のバンドである。代表曲は「モンキー・マジック」「ガンダーラ」「ビューティフル・ネーム」「銀河鉄道999」など。私ももちろん、子供の頃、ゴダイゴがTVの音楽番組に出演しているのを見ていた。とにかく明るくて親しみやすい曲調と、「ビューティフル・ネーム . . . 本文を読む

鋼鉄都市

2014-03-10 19:14:49 | 
『鋼鉄都市』 アイザック・アシモフ   ☆☆☆★  アシモフのロボット・シリーズ長編第一作。もちろんロボットものとしては『われはロボット』の方が前だが、あれは短編集なので、長編としてはこれがすべての発端ということになる。が、その後あの壮大な宇宙叙事詩へと展開していくような気配はまだ全然なく、軽いエンタメという雰囲気である。人々がドームに住む未来の地球を舞台にしたSFミステリであり、一種のバディ・ . . . 本文を読む