『モレルの発明』 アドルフォ・ビオイ=カサーレス ☆☆☆★
再読。大昔に一度読んだがもう本を持っておらず、また買った。そこまでして読みたかったのかどうか自分でも良く分からない。
これはアルゼンチンの作家ビオイ=カサーレスの代表作と見なされている小説であり、あのボルヘスが序文の中で「完璧な小説」と賞賛している。実のところそこまでの傑作だとは前読んだ時も今回も思えなかったのだが、まあボルヘ . . . 本文を読む
『死者のメッセージ』 ☆☆☆
刑事コロンボ41個目のエピソード。これは旧シリーズ最終の第7シーズン開幕作で、最後から5番目ということになる。
話としてはずばりダイイング・メッセージもので、金庫に閉じ込められて死んだ男が奇妙な痕跡を残している、さてそのココロは。という謎が最初から呈示され、その解決がそのまま最後の決め手となる。しかしこのダイイング・メッセージはあまり気がきいたものではなく、物 . . . 本文を読む
『エル・スール』 アデライダ・ガルシア=モラレス ☆☆☆☆★
ビクトル・エリセ監督の映画『エル・スール』の原作本である。知らなかったが、このアデライダ・ガルシア=モラレスはエリセ監督の奥さんらしい。そうか、妻の小説を映画にしたのか。
名前を聞かない作家だしあんまり期待しないで買ったが、冒頭の数行を読んだだけでぐっと引き込まれた。大当たり。好きなタイプの文章である。「わたし」という女性の . . . 本文を読む
『あなただけ今晩は』 ビリー・ワイルダー監督 ☆☆☆☆
英語版DVDを買ってきて鑑賞。主演はジャック・レモンとシャーリー・マクレーン。ビリー・ワイルダー監督と主演二人は『アパートの鍵貸します』と同じメンツである。このことと『あなただけ今晩は』という邦題(ちなみに原題は『Irma La Douce』、つまり「かわいいイルマ」というヒロインの通称)から、『アパートの鍵貸します』のような洒落たロ . . . 本文を読む
『最初の愛はいつも最後の愛』 ターハル・ベン=ジェルーン ☆☆☆☆☆
モロッコ人作家ベン=ジェルーンの短編集を再読。この人は『聖なる夜』でゴンクール賞を受賞した作家さんだ。
帯に「アラブの愛と官能」という言葉があるが、まさにその通り、千夜一夜物語の濃厚な香りが立ち込めた世界である。時代は基本的に現代社会だが、すべて愛の物語であり、残酷であり、イスラム教世界であり、魔術的である。従って基 . . . 本文を読む
『ホリスター将軍のコレクション』 ☆☆★
刑事コロンボ五つ目のエピソード。人気が低い作品らしいし、確かに初期コロンボ・シリーズにしては物足りないが、個人的には必ずしも嫌いでもない。派手なトリックや推理はほとんどないが、独特の雰囲気がある。これはミステリというより心理ドラマである。しかも目撃者がほぼ主役という珍しいエピソードである。非常に変則的で、こういうパターンはシリーズ中これだけだと思う . . . 本文を読む
『猫のゆりかご』 カート・ヴォネガット・ジュニア ☆☆☆☆☆
『スローターハウス5』で他のヴォネガット作品が読みたくなりこれを入手。一応再読である。昔読んだ時はそれほど印象に残らなかったが、今回大幅に評価が上がった。本書は一般にヴォネガットの出世作ということになっていて、それまで熱狂的ファンはいるもののマイナーだったヴォネガットは、この『猫のゆりかご』で一気にメインストリームに躍り出た。そ . . . 本文を読む
『スカイ・クロラ』 押井守監督 ☆☆☆★
久しぶりにフォート・リーにあるブロックバスターに行ったら押井監督の『スカイ・クロラ』が一本だけあったので借りてきた。ついでに言うと松本人志の『Big Man Japan』も一本だけあって、貸し出し中だった。
この『スカイ・クロラ』、賛否両論だったのであまり期待していなかったが、思ったより良かった。退屈だという評価が多かったので、『イノセンス』み . . . 本文を読む
『おかま』 ウィリアム・S・バロウズ ☆☆☆☆
再読。これは『ジャンキー』の姉妹編みたいな初期の小説で、『ジャンキー』と同じく主人公はビル・リー、語りもカットアップが使われない伝統的なものだ。基本的にビル・リーと友人たちがぶらぶらしているだけという話の構成も同じ。ただし雰囲気はかなり違う。非常にクールだった『ジャンキー』と比べぐっと哀切である。あのリーが泣くシーンまである。
その理由を . . . 本文を読む
『キッズ・リターン』 北野武監督 ☆☆☆☆☆
日本版DVDを購入して再見。これはたけしがバイク事故の後に撮った最初の映画である。映画のラストで主人公が死なない最初のたけし映画でもある(『3-4×10月』は微妙だが)。たけし本人は出演していない。
いってみれば自分の生き方を模索しながら彷徨する若者たちを描いた青春群像映画であり、そういう青春映画につきものの瑞々しさや甘酸っぱさも確かに感じ . . . 本文を読む