アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

ロートレック荘事件

2012-11-29 21:23:18 | 
『ロートレック荘事件』 筒井康隆   ☆☆☆★  再読。本書の雰囲気は『フェミニズム殺人事件』ととても良く似ている。舞台は避暑地の別荘、セレブな人々が集まって優雅で享楽的な会話を交わすサロン的雰囲気。意図的に似せたと思われる。またあちこちにロートレックの美しい絵が挿入されていて、これが更に豪奢かつ瀟洒にサロン的ムードを盛り上げる。しかし本書には『フェミニズム殺人事件』にはなかった大掛かりな言語ト . . . 本文を読む

けものみち

2012-11-27 21:03:52 | 映画
『けものみち』 須川栄三監督   ☆☆☆☆  松本清張原作映画がまた観たくなり、手持ちのDVDで『けものみち』を再見。これも見ごたえたっぷりの傑作だ。DVDパッケージはカラーだが中身はモノクロ映画。  松本清張は『あるサラリーマンの証言』や『寒流』みたいに一般のサラリーマンや会社員を題材にした傑作が多いが、これはそういう身近な世界ではなく、政界や財界を裏で操る魑魅魍魎たちの世界、真正のワルの世 . . . 本文を読む

夜毎に石の橋の下で

2012-11-25 17:29:22 | 
『夜毎に石の橋の下で』 レオ・ペルッツ   ☆☆☆  オーストリアのユダヤ人作家が20世紀初めに発表した小説。美しい装丁と幻想歴史小説という謳い文句、そして16世紀のプラハが舞台ということに惹かれて入手したのだが、予想とは違っていた。私が想像したのは重厚でメランコリックな、絢爛たる幻想小説だったのだが、全体の印象はむしろ「ほら話」的だった。  幽玄なところもなくはなく、たとえば冒頭の章ではプラ . . . 本文を読む

Jungle Fever

2012-11-23 22:08:52 | 音楽
『Jungle Fever』 Neil Larsen   ☆☆☆☆☆  最近80年代あたりのフュージョンにはまっていると前に書いたが、その中で特に気にいったアーティストを紹介したい。まずはこの人、ニール・ラーセン。私は最近まで名前も知らなかったのだけれども、この人は良い。キーボーディストである。しかも主楽器はハモンド・オルガン。ロックに比べて爽やか、洗練、都会的というイメージのフュージョンにハモ . . . 本文を読む

ホーンズ

2012-11-21 22:26:39 | 
『ホーンズ』 ジョー・ヒル   ☆☆☆  スティーヴン・キングの息子、ジョー・ヒルの長編を読了。あえてカテゴライズするならダーク・ファンタジーだろうか。ある朝目が覚めると角が生えている。そして会う人みんなが自動的に催眠状態に陥り内心の暗い欲望を告白する。ついでに、身体に触れるとその人の秘密や記憶を覗き見ることができる。要するに「悪魔」になったわけだ。デビルマンだ。  というファンタジー要素に加 . . . 本文を読む

ルパン三世 First TV Series (その2)

2012-11-19 22:16:18 | アニメ
(前回からの続き)  そしてどうしてもこれに触れないわけにはいかない、初期数話における峰不二子の妖艶さ。もう鼻血もんである。子供の頃、第一話で不二子がスコーピオンに捕まり、台の上に縛りつけられて胸元をはだけさせられる場面で大興奮したのは私だけではあるまい。そしてもちろん、主人公を手ひどく裏切る酷薄なヒロイン、ファム・ファタル的ヒロインというのは当時のアニメとしては斬新だったに違いないし、またそう . . . 本文を読む

ルパン三世 First TV Series (その1)

2012-11-17 18:12:51 | アニメ
『ルパン三世 First TV Series』 ☆☆☆☆  何を隠そう、私はルパン三世のファースト・シリーズのファンなのだが、日本版ブルーレイは高いし評判悪いしDVDはもう入手できないしで、ずっと購入を見送っていた。が、なんと、最近アメリカのAmazonでファースト・シリーズが発売されているのを発見した。しかも40ドルである。日本版のDVDなんて4万円以上の値段がついているというのに。というわけ . . . 本文を読む

第七階層からの眺め

2012-11-15 19:24:30 | 
『第七階層からの眺め』 ケヴィン・ブロックマイヤー   ☆☆☆☆★  以前『終わりの街の終わり』を読んで、なかなか良かったものの今ひとつ食い足りなかったケヴィン・ブロックマイヤーの短編集を読んだ。これは非常に良かった。あとがきではニューウェーブ・ファビュリストという呼称やジャンルの枠からはみ出す越境性を強調してあったが、確かに色んなタイプの作品を書ける作家さんである。純文学からパルプSFまで幅広 . . . 本文を読む

マンハッタン

2012-11-12 18:19:18 | 映画
『マンハッタン』 ウディ・アレン   ☆☆☆☆☆  ウディ・アレンの名作を再見。私が持っているのは米国で買ったDVDだけれど、クローズト・キャプションがついていないので、最初観た時は何喋っているのかさっぱり分からなかった。特にあの冒頭のモノローグや、クライマックスシーンの有名な「人生が生きるに値する理由」のところ。アレンの喋りを字幕なしはきつい。が、何度か観返しているうちに大体分かるようになった . . . 本文を読む

アブナー伯父の事件簿

2012-11-10 20:42:30 | 
『アブナー伯父の事件簿』 M.D.ポースト   ☆☆☆★  『世界短編傑作集 2』を読んで物足りなかったので、つい『アブナー伯父の事件簿』を読み返してしまった。本書はどうやら現在絶版になっているらしい。確かに現代のミステリと比べると時代を感じてしまう部分が多いけれども、これはこれで味があるんだけどなあ。子供の頃結構好きだったので、絶版はいささか悲しい。  アブナー譚はクラシックな探偵小説の中で . . . 本文を読む