『権力者たち』 アーサー・ヘイリー ☆☆☆
ヘイリーの『権力者たち』を古本屋で発見し、これは珍しいと思いすかさず購入した。とっくに絶版になっている本である。
いつも企業を題材にするヘイリー、今回は政治の世界、それも国家首脳の話だ。カナダの総理大臣とそれを取り巻く政治家たちの権力闘争がメインのプロットである。さすがヘイリー作品中特に知名度が低いだけあって、スケールはでかいわりにストーリー . . . 本文を読む
『フロスト日和』 R・D・ウィングフィールド ☆☆☆☆☆
名前だけは前から知っていた「フロスト」ものをようやく読んでみた。ユーモア・ミステリだと思っていたので今ひとつ触手が伸びなかったのだが、実際読んでみると、単にユーモア・ミステリというだけではない魅力に溢れている。非常に満足度が高い、全方位的なエンターテインメントの傑作だった。
まずは、確かに笑える。笑えるが、おかしなキャラ頼みでは . . . 本文を読む
『十三人の刺客』 三池崇史監督 ☆☆☆
レンタルDVDで鑑賞。1963年の工藤栄一監督作品のリメイクである。オリジナルは未見なので比較はできない。
なかなか不思議な印象の映画だった。殺陣や美術はしっかりしていて、丁寧に、キチンと作ってある感じがする。役者も役所広司、市村正親、伊原剛志、松本幸四郎と渋いところで固めてあり、重厚感がある。特に殺陣は本格的で、迫力があり、命のやりとりをして . . . 本文を読む
『妖魔の森の家』 ジョン・ディクスン・カー ☆☆☆
カーの短編集を読了。私はエラリー・クイーン、アガサ・クリスティー、ヴァン・ダインあたりは主なところは大体読んでいるが、カーはあんまり読んでいない。というか、「火刑法廷」とか「三つの棺」とか「皇帝の嗅ぎ煙草入れ」とかそれなりに10代の頃に読んだはずだが、内容を全然覚えていない。ということは面白くなかったのだろうが、人気がある作家さんなのでど . . . 本文を読む
『スリーピング・マーダー』 アガサ・クリスティー ☆☆☆
ミス・マープル最後の事件『スリーピング・マーダー』を初めて読んだ。私はミス・マープルものは大して読んでいない。ポアロの方がキャラが強くて面白いのと、推理の方法に惹かれるからである。過去に読んだミス・マープルものを思い返しても、ミス・マープルがどんな風に事件を解決したかあまり思い出せない。
本書はタイトル通り「眠れる殺人」、つまり . . . 本文を読む
『刺青』 増村保造監督 ☆☆☆☆
主演・若尾文子、監督・増村保造の映画をDVDで鑑賞。『清作の妻』と同じコンビである。これもあれと同じぐらいエグイのかと心配したが、そこまでではなかった。しかし、これもなかなか強烈である。
お艶(若尾文子)は質屋の娘で、店の手代と恋仲になり、ビビる男を強引に炊きつけて駆け落ちをする。とりあえず身を寄せた先がなんとかいう親分の家で、「あとはおれっちに任せて . . . 本文を読む
『終着の浜辺』 J.G. バラード ☆☆☆★
バラードの短編集を再読。再読といっても読んだのは大昔なので、ほとんど忘れていた。
全部1963年前後に書かれた短編だけれども、さほど古さを感じない。さすがである。これはバラードのテーマが人間の内宇宙であること、シュルレアリスティックな幻覚的ヴィジョンを扱っていること、プロットより言語が喚起するイメージそのものに重点が置かれていること、などの . . . 本文を読む
『古都』 中村登監督 ☆☆☆☆☆
日本版DVDで鑑賞。原作は川端康成だが、未読。きっと原作もガラス細工の如く美しい小説に違いないと思わせられる、繊細かつ端麗なフィルムだ。
京都の呉服問屋の娘、千重子(岩下志麻)は優しい両親のもとで大切に育てられたが、実は自分は捨て子なのだとの思いで悩んでいた。彼女には家の前に捨てられていた記憶があった。だが両親はそれぞれ、私たちが祭りの夜に赤ん坊だった . . . 本文を読む
『キス・キス』 ロアルド・ダール ☆☆☆☆☆
再読。久しぶりに読んだが、やっぱりダールは最高に面白い。『あなたに似た人』と本書が双璧だろう。ダールの意地悪さ、シニカルさがこれでもかと発揮された短編集である。
それにしても、ここまで意地悪に徹した作家も珍しい。意地悪な作家でも、短編集の中にいくつかは「ちょっといい話」とか「叙情的な話」とか「泣ける話」を混ぜたりするものだが、ダールはきれい . . . 本文を読む
『遙かなる山の呼び声』 山田洋次監督 ☆☆☆☆☆
DVDで鑑賞。高倉健、倍賞千恵子主演。『幸福の黄色いハンカチ』と同じコンビである。武田鉄也もちょっとだけだが出てくる。
『幸福の黄色いハンカチ』は昔テレビで部分的に観たと思うが、細かいところはよく覚えていない。ただ全体のあらすじはあまりにも有名なのでよく知っている。おつとめを終えて出所してきた男が愛する女のところへ帰る話である。この映画 . . . 本文を読む