『1941年。パリの尋ね人』 パトリック・モディアノ ☆☆☆☆☆
『さびしい宝石』を再読して自分の中でモディアノ評価が更に上がったため、次に代表作と言われる『1941年。パリの尋ね人』を読んでみた。代表作と言われるのは、モディアノがノーベル文学賞を受賞した理由である「最も捉え難い人々の運命を召喚し、占領下の生活世界を明らかにした記憶の芸術に対して」の「記憶の芸術」が、つまり本書を指している . . . 本文を読む
『不信のとき』 今井正監督 ☆☆☆☆★
1968年公開、田宮二郎主演映画『不信のとき』をDVDで鑑賞。またどろどろのB級サスペンスかな、と思って観たらこれはかなり高品質だった。田宮二郎演じる浅井は商事会社宣伝部のサラリーマン。そこそこ出世もし、美人で社会的地位もある妻(書道の先生)にも恵まれ、子供がいないことを除けば取り立てて不満のない生活を送っていたが、ある時バーのホステスと関係を持って . . . 本文を読む
『光の子供』 エリック・フォトリノ ☆☆☆★
『運命と復讐』に続きこれも新潮クレスト・ブックス。フランスはル・モンド紙元編集長による《フェミナ賞受賞作》だが、私としてはフランス映画のエッセンスをたっぷり盛り込んだ小説というところに惹かれて手に取った。語り手「わたし」はパリの弁護士、ジル・エクトールで、父親は映画の撮影技師にしてスタジオ写真家だったジャン、母親は女優というだけで誰かは分からな . . . 本文を読む
『沈黙 -サイレンス-』 マーティン・スコセッシ監督 ☆☆★
Amazon Primeで鑑賞。原作は既読。あの重苦しく息苦しい原作をスコセッシ監督がどう料理したか気になったので、かなりの鬱映画だろうなと覚悟しつつ観た。主演はアンドリュー・ガーフィールドと最近あちこちで見かけるアダム・ドライヴァー。日本人俳優も多数出演している。
上映時間も3時間弱と長く、重厚なドラマなので体力を必要とす . . . 本文を読む
『運命と復讐』 ローレン・グロフ ☆☆☆★
オバマ大統領も愛読したというローレン・グロフの『運命と復讐』を読了。ホントなんでしょうか?
夫婦の物語である。それも二人の出会いから死別までどころじゃなく、歳月を遡って、主人公カップルの両親の出会いからおもむろに書き起こされるという、年代記風の一大大河小説である。もう大長編。本もぶ厚い。構成に特徴があって、前半が夫視点の物語、後半が妻視点の物 . . . 本文を読む
『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』 ジョエル・コーエン / イーサン・コーエン監督 ☆☆☆☆
Amazon Primeで鑑賞。最近遅ればせながらAmazon Primeの会員になると色んな映画がタダ見できることに気づき、さっそく加入して観まくっているが、これもその一つ。コーエン兄弟の映画だけれども、『ノーカントリー』や『ファーゴ』や『バーバー』のテイストを期待すると全然 . . . 本文を読む
『体育館の殺人』 青崎有吾 ☆☆☆☆
平成のエラリー・クイーン、と呼ばれる青崎有吾のデビュー作を読了。クイーンばりの論理的推理という噂を聞いて以前から気になっていたが、文庫が出ているのを知ってAmazonで取り寄せた。まあクイーンばりと言ってもまだ若いしデビュー作だし、ちょっとラノベっぽいという噂もあるし、ということであんまり期待していなかったが、意外にもかなり良かった。少なくとも論理的推 . . . 本文を読む
『サクリファイス』 アンドレイ・タルコフスキー監督 ☆☆☆☆
タルコフスキーの遺作、『サクリファイス』を日本版ブルーレイで鑑賞。タルコフスキーは『ストーカー』を最後に母国ソ連を離れ、『ノスタルジア』と『サクリファイス』はヨーロッパで撮られた。そのせいで『ノスタルジア』以降はテンションが落ちると評するファンもいるようだが、私にはあまり分からない。もっと何度も繰り返し観れば違うのかも知れないが . . . 本文を読む
『謎 キニャール物語集』 パスカル・キニャール ☆☆☆☆
水声社の「キニャール・コレクション」の一冊である物語<コント>集を読了。「物語」をわざわざ<コント>と読ませるからにはもちろん、一般的な意味での物語ではない。本書にはキニャールと物語<コント>の関係について詳しい解説がついていて、大変参考になるが、要するにコントとはもともと民間伝承だった「赤ずきんちゃん」やグリム童話などを指し、いわ . . . 本文を読む
『白夜』 ルキーノ・ヴィスコンティ ☆☆☆
『夏の嵐/白夜』ブルーレイ・セットで『白夜』を鑑賞。先日ドストエフスキーの原作を読んだばかりなので、一体どんな映画かと興味深く鑑賞した。正直、原作がまったく私の好みではなかったので、果たしてヴィスコンティはあの小説をどう料理したのだろうか、という興味がメインとなった。ちなみに本作はヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を獲得している。
『白夜』の方 . . . 本文を読む