アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

日本探偵小説全集〈9〉横溝正史集

2015-02-28 10:20:34 | 
『日本探偵小説全集〈9〉横溝正史集』 横溝正史   ☆☆☆☆  創元推理文庫から出ている「日本探偵小説全集」の第9巻、「横溝正史集」を再読。実は以前、私はこれを持っていることを忘れて『獄門島』の文庫本を買ったことがある。本書中に『獄門島』がまるまる収録されているというのに。アホである。が、私にとって本書の印象が薄かったということもある。本書には代表作といわれる「本陣殺人事件」「獄門島」が両方収録 . . . 本文を読む

ゴーン・ガール

2015-02-26 20:53:25 | 映画
『ゴーン・ガール』 デヴィッド・フィンチャー監督   ☆☆☆☆☆  昨年公開時に映画館で観て、最近ブルーレイを買って再見した。私がここしばらく映画館で観た映画の中では久々の大ヒットである。面白く、辛辣で、アイロニーに満ち、先が見えず、巧緻で、大胆である。荒唐無稽なアイデアに正攻法で取り組んで、さまざまな相反する要素のバランスをとり、結果ちゃんとモノにしている。これだけ大胆なプロットなので細かい突 . . . 本文を読む

イン・ザ・ペニー・アーケード

2015-02-24 21:32:43 | 
『イン・ザ・ペニー・アーケード』 スティーヴン・ミルハウザー   ☆☆☆☆  ミルハウザー初期の短篇集を再読。『バーナム博物館』『ナイフ投げ師』『三つの小さな王国』などいずれも巧緻きわまりない作品ばかりのハイレベルな短篇集の中で、本書はミルハウザーの魅力をもっとも分かりやすく伝える作品集だと思う。  まず冒頭の中篇「アウグスト・エッシェンブルク」はまさにミルハウザーの王道、結局ミルハウザーはこ . . . 本文を読む

極楽特急

2015-02-21 22:29:00 | 映画
『極楽特急』 エルンスト・ルビッチ監督   ☆☆☆☆  日本版DVDで『極楽特急』を再見。私はルビッチ映画では今のところ『街角 桃色の店』が一番好きで、次点が『生きるべきか死ぬべきか』だけれども、この二つより初期の『極楽特急』(1932年)も『生きるべきか死ぬべきか』と同じくらい好きで、良い出来だと思う。プロットはシンプルで小粒感があるが、ルビッチならではのエレガンスと瀟洒とウィットがたっぷりで . . . 本文を読む

仮面の商人

2015-02-18 19:59:45 | 
『仮面の商人』 アンリ・トロワイヤ   ☆☆☆☆  アンリ・トロワイヤの文庫本を読了。なかなか面白かったし、トロワイヤの文体の魅力はいつも通りだが、全体としては『クレモニエール事件』や『サトラップの息子』ほどのインパクトはなかった。作品の背景や成立過程などについてまったく知識がないけれども、なんとなく気楽に、肩の力を抜いて書かれたもののような印象を受ける。また風刺色が濃く、いささか「からかい」の . . . 本文を読む

災厄の町

2015-02-16 21:49:20 | 
『災厄の町』 エラリイ・クイーン   ☆☆☆☆  クイーン『災厄の町』の新訳板がハヤカワから出たことを知って購入。それにしてもクイーンの傑作の一つであり、国名シリーズ以後の作風を決定づけたという意味でもきわめて重要な本作が、これまで日本で入手困難だったというのが信じられない。しばらく前に購入しようとして昔読んだハヤカワ版が絶版であることを知り、愕然とした記憶がある。日本の出版界は一体何をしている . . . 本文を読む

バットマン

2015-02-14 12:01:32 | 映画
『バットマン』 ティム・バートン監督   ☆☆☆★  「バットマン」といえばすっかりノーラン版がデフォルトになってしまった感があるが、オリジナルはこちら、ティム・バートン版である。1989年公開。いい歳したおっさんである私はよく覚えているが、この映画が公開された時は「スーパーマン」の優等生的ダサさとは違うダークなヒーロー、ゴッサムシティやバットマンカーの造形に横溢する独特の美意識、音楽には当時最 . . . 本文を読む

小説のように

2015-02-12 11:58:19 | 
『小説のように』 アリス・マンロー   ☆☆☆☆  ノーベル賞を受賞したカナダ人女流作家、アリス・マンローの短編集を読了。Amazonのカスタマーレビューが絶賛のコーラス状態となっているので読んでみたのだが、確かにそれももっともと思える作品集だ。品格がある。端正である。エレガントで、かつ感情豊かである。加えて、知性が溢れ出している。読んでいて尊敬の念が湧いてくる。アホなところ、変態的なところはカ . . . 本文を読む

コラテラル

2015-02-10 10:05:32 | 映画
 日曜から休暇でカリブ海のホテルにいるが、インターネットに繋がらなくて困っている。今は海辺のレストランにラップトップを持ってきてようやく繋がったが、パワーケーブルの差込み口がないので長くは使えない。難儀なことだ。部屋のWifiを直すよう頼んでいるが、いつになるやら分からない。結構いいホテルなのに、細かいところがどうもイマイチだなあ。  まあそういうわけで、電源がなくなる前に四日ぶりの記事をアップ . . . 本文を読む

五つの時計

2015-02-06 22:36:52 | 
『五つの時計』 鮎川哲也   ☆☆☆☆  鮎川哲也の短編集を再読。雑誌『宝石』に掲載された短編からの傑作選で、各篇に当時編集長だった江戸川乱歩のルーブリック(紹介文)がついている。私はこの作家の『黒いトランク』が大好きで、この人の緻密なロジック構築力は日本の推理作家では希少だと思っている。ただし、いささかハッタリというか派手さに欠けるなと以前は思っていたが、この短編集を読んで考えが変わった。派手 . . . 本文を読む