『斬る』 岡本喜八監督 ☆☆☆☆☆
『侍』『大菩薩峠』と並ぶ岡本監督の傑作時代劇。主演・仲代達矢、高橋悦史。この二人が荒廃した藩のクーデター騒動に巻き込まれるという物語。仲代達矢は『大菩薩峠』のクールな美剣士、机竜之助とは正反対の、小汚くて飄々とした、けれど熱い義侠心を持った男を見事に演じている。
映画はまず、荒れ果てた宿場町に汚い格好の浪人、半次郎(高橋悦史)が入っていくシーンから始 . . . 本文を読む
『灯台守の話』 ジャネット・ウィンターソン ☆☆☆☆
ようやく手に入れたジャネット・ウィンターソンの新刊を読了。装丁はクラフト・エヴィング商会。可愛らしい。
物語が始まると、主人公の少女シルバーはいきなり崖に斜めに突き刺さった家に母親と一緒に住んでいる。相変わらず物理法則無視、徹底したアンリアリズムの世界である。前々から思っていたが、この羽のように軽い文体とアンリアリズムはなんとなくボ . . . 本文を読む
『男はつらいよ 寅次郎恋歌』 山田洋次監督 ☆☆☆☆★
シリーズ第8作、マドンナは池内淳子。これもシリーズ中の傑作である。志村喬が博の父親役で出演していて味のある演技を見せる。
冒頭、寅が帰ってきてケンカしてまた寅屋を出ていくルーチン・シーンはいつになく痛々しい。笑えるというより見ていて辛い。飲みに行った寅がテキヤ仲間を連れて戻ってきて、さくらに酌をさせ、芸者扱いして歌を歌わせるのだ。 . . . 本文を読む
『犯人に告ぐ』 雫井脩介 ☆☆☆★
トヨエツ主演で映画化されたらしい『犯人に告ぐ』を再読。一気読み。前読んだが内容はほとんど忘れていた。という程度のエンタメ。ただ読んでる時は先が気になってどんどん読んでしまう。ゆったり過す週末の一気読みに最適。
ある失態で左遷されていた警視・巻島が、難航する連続殺人事件の捜査に呼び戻される。<バッドマン>と名乗る快楽殺人鬼に対抗するため、テレビを使って . . . 本文を読む
『M』 フリッツ・ラング監督 ☆☆☆
Criterion版DVDで鑑賞。名作という噂のわりにはあんまり面白くなかった。フリッツ・ラングなら『スカーレット・ストリート』の方を百倍推薦する。
連続幼女殺人事件が起きる。警察の必死の捜査も成果が出ない。厳重な捜査でとばっちりを喰った犯罪シンジケートの連中も独自に殺人犯の捜査を始める。やがて警察、シンジケートともに別の線から犯人の手掛かりを掴む . . . 本文を読む
『USA』 キング・クリムゾン ☆☆☆☆☆
キング・クリムゾンのライブ・アルバム。クリムゾンは『クリムゾン・キングの宮殿』で1969年にデビュー、激しくメンバーチェンジを繰り返しながらコンスタントに7枚のスタジオ・アルバムを発表し、1974年『Red』を最後に一旦解散する。そして80年代に入って音楽性をガラリと変えて復活するわけだが、この『USA』は『Red』直後に発表されたライヴ・アルバ . . . 本文を読む
『大日本人』 松本人志監督 ☆☆☆
松本人志の『大日本人』をレンタルDVDで鑑賞。色々と毀誉褒貶が多い映画だったみたいで「どんなんだろう」と結構楽しみだったが、ようやく観ることができた。「コントだと思って見た方がいい」「映画とはいえない」など色々聞いていたせいか、思ったよりまともだなと思った。まあ最後は完全にコントになってしまっていたが。
全篇インタビュー形式になっていて、まじめな顔と . . . 本文を読む
『戦争が終り、世界の終りが始まった』 フィリップ・K・ディック ☆☆☆☆
フィリップ・K・ディックの主流小説。つまりSFじゃない小説。を再読。
ディックのファンには彼の主流小説はつまらないという人が多いようだが、私は好きだ。確かに面白いガジェットや怒涛のような現実崩壊はないが、ディック特有の異様な現実感覚やコミカルな人間模様はやはり見られるし、それがSF作品にはない日常的な光景の中に投 . . . 本文を読む
『事件』 野村芳太郎監督 ☆☆☆☆★
『疑惑』が面白かったので松本清張原作、野村芳太郎監督の映画で評判いい奴をまた観たいと思って購入、したらこれは松本清張じゃなかった。大岡昇平だった。もっとちゃんと確認して買いましょう。でも面白かったから結果オーライ。
法廷もの+青春ものである。法廷ものとしては弁護士・丹波哲郎、検事・芦田伸介、裁判官・佐分利信の強烈な三つ巴を堪能でき、青春ものとしては . . . 本文を読む
『七悪魔の旅』 ムヒカ・ライネス ☆☆☆★
アルゼンチンの作家、ムヒカ・ライネスの長編を購入して読了。7人の悪魔が仕事をサボっているといって大魔王に叱られ、人間界に旅に出て色んな場所で色んな人間に七つの大罪を犯させるべく誘惑するよう命じられる、という話。七人の悪魔がそれぞれ一つの罪を担当している。それから彼らは悪魔なので自由に時空を越えることができ、仕事をする場所だけでなく時代もさまざまだ . . . 本文を読む