『世界怪奇実話』 牧逸馬 ☆☆☆☆☆
牧逸馬とは長谷川海太郎のペンネームの一つで、この人は他に林不忘、谷譲次というペンネームも持っていた。林不忘は名高い「丹下左膳」シリーズの作家であり、活躍した時代は1920年代から30年代と古い。
そういうわけで、本書も文体やボキャブラリーはかなり古めかしいが、内容は文句なく面白い。タイトル通り世界中の毛色の変わった事件や歴史的事実を取り上げて読み物 . . . 本文を読む
『男はつらいよ 幸福の青い鳥』 山田洋次監督 ☆☆★
DVDで再見。シリーズ第37作。
マドンナ役の志穂美悦子は、これが最後の映画出演作品となった。恋人役で長渕剛が出演していて、この二人が実生活でもゴールインしたのは皆さんご存知の通り。ところでこのエピソードが他の「男はつらいよ」シリーズ作とちょっと変わっているのは、志穂美悦子が演じるキャラクター・島崎美保は本作が初登場ではなく、以前の . . . 本文を読む
『呪われた腕: ハーディ傑作選』 トマス・ハーディ ☆☆☆★
これは「村上柴田翻訳堂」シリーズの一冊だけれども、以前出ていた「ハーディ短編集」を復刊・改題したもので、翻訳は村上春樹でも柴田元幸でもない。単に、この二人が対談する形式の「特別解説」が巻末に収録されているだけである。ちょっとずるいと思う。買おうと思っている人は注意して下さい。実際の翻訳者は、河野一郎という方です。
ハーディと . . . 本文を読む
『夜の蝶』 吉村公三郎監督 ☆☆☆☆
日本版DVDを購入して鑑賞。面白い。夜の銀座の世界を描く映画と言えば成瀬監督の『女が階段を上る時』を思い出すが、これもまた違うテイストで愉しめる。
物語は、銀座の有名店フランソワのマダム、マリ(京マチ子)と、新たに京都から進出してきた店OKIKUのママ、おきく(山本富士子)との、女の意地と人生をかけた熾烈な争いがメインとなる。なぜ人生がかかっている . . . 本文を読む
『田園交響楽』 ジッド ☆☆☆☆
ジッドの清澄なる世界に浸りたくなって、久しぶりに再読。確か前に読んだのは中学か高校の頃である。薄っぺらな新潮文庫の本を買ったのだが、とても薄くてあっという間に読み終えてしまった。ほとんど長めの短篇といってもいいぐらいのボリュームだが、物語は数年にわたって人間関係の変化を描いていくもので、やはり物語としての厚みがあり、次第に盛り上がっていくドラマの緩急を味わ . . . 本文を読む
『満月の夜』 エリック・ロメール監督 ☆☆☆☆
英語版ブルーレイで鑑賞。「喜劇と格言劇集」の第四作にあたる本作、冒頭に「二人の妻をもつ者はこころをなくし、二つの家を持つ者は分別をなくす」という格言らしきものが表示される(これはロメール自身がでっち上げた創作という噂があるが、確かなことは知らない)。
パーティー好きの娘ルイーズと社交嫌いの建築家レミは、レミの仕事の都合により郊外の家で同棲 . . . 本文を読む
(前回からの続き)
ところで、なぜ私はこうまでエンロン事件に興味を掻き立てられるのだろうか? それは結局のところ、これほどまでに頭がいい人間たちが集まって、なぜこれほどまでに愚かなことをしでかしてしまうのか、という点に尽きるように思う。ケネス・レイやジェフ・スキリング、アンディ・ファストウ、その他エンロンのビジネスを担当していた役員たち、更にはアーサー・アンダーセンや粉飾に関与した銀行の人々な . . . 本文を読む
『エンロン 内部告発者』 ミミ・シュワルツ、 シェロン・ワトキンス ☆☆☆
私は昔からなぜかエンロン事件に強い興味を抱いていて、エンロンに関するものはDVDの『Enron: The Smartest Guys in the Room』と本二冊を持っている。本はこれと『青い蜃気楼―小説エンロン』で、『青い蜃気楼』が小説仕立てになっているのに対し、本書は当時のエンロン社員にして内部告発者である . . . 本文を読む
『男はつらいよ 寅次郎真実一路』 山田洋次監督 ☆☆★
DVDで再見。マドンナは大原麗子、二度目の登場である。大原麗子の夫である証券会社のサラリーマン(米倉斉加年)が失踪し、悲しむマドンナを寅が慰める話だ。夫探しの旅に一緒に出かけたりする。寅は当然大原麗子に惚れている。
正直、出来は今一つだ。冒頭、寅が柴又に帰ってくるお約束シーンからノレない。寅とタコ社長の喧嘩はドタバタが過ぎ、空々し . . . 本文を読む
『World Live '88』 カシオペア ☆☆☆☆☆
最近買ったカシオペアのCD。88年のライヴ音源だが、神保・櫻井のリズム隊脱退が89年なので、いわゆるカシオペア第一期終焉直前のライヴということになる。カシオペアはメンバーを変えながら今も存続している(現在は第三期)わけだが、やはり神保・櫻井込みのカシオペアこそが真正カシオペアだったと考えるファンは多いだろうし、私もそう思う。そういう . . . 本文を読む