『悪魔の涎・追い求める男』 コルタサル ☆☆☆☆☆
岩波文庫から出ているコルタサルの短編集を読了。これは色んな短編集から代表作をチョイスした独自編集の短編集である。実は私、これを読んでコルタサルのイメージが大きく変わった。これまでの私のコルタサルのイメージは初期の短編集『遊戯の終わり』とアンソロジー『遠い女』によって形成されたところが大きく、一流の作家だとは思いながらものめり込むほどではな . . . 本文を読む
『LATE LATE SUMMER』 ブレッド&バター ☆☆☆☆
ブレッド&バター、通称ブレバタが1979年に発表したアルバム。ブレッド&バターは兄弟のデュオで、どこかの時点で大ブレークしたというわけじゃないが、湘南あたりでカフェをやったりセーリングしたり好きなことしながらマイペースで音楽活動してます、というスタンスは嫌いじゃない。このアルバムはブレバタの活動の中でマイルストンとなった傑作 . . . 本文を読む
『脱走と追跡のサンバ』 筒井康隆 ☆☆☆☆☆
筒井康隆初期の名作を再読。私が最初にこれを読んだのは小学生の時で、はっきり言って意味が分からない部分が多かった(特にセックス絡みの部分)。しかし頭をぶん殴られたような衝撃は今でもはっきり覚えていて、小説とはこんなとんでもないことが出来るのかと驚愕したものだ。これは今読んでも変わらず、稀に見る異形かつ強力な小説だという評価は私の中で揺らがない。
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『ヒミズ』 園子温監督 ☆☆☆
『恋の罪』に続いてレンタルDVDで観賞。『冷たい熱帯魚』や『恋の罪』よりいいという評判を聞いて期待して観たが、それほど良いとは思えなかった。正直いって『恋の罪』の方がまだ面白かったぐらいである。原作の評判も高いみたいだが、原作を読んだことはない。だから「あの原作をどう料理したか」なんていう見方は一切できない。
まず登場人物たちのキャラが異常でわざとらしい . . . 本文を読む
『アフリカの日々』 イサク・ディーネセン ☆☆☆☆☆
イサク・ディーネセンことブリクセン男爵夫人の『アフリカの日々』を再読。これはロバート・レッドフォードとメリル・ストリープ主演の『愛と哀しみの果て』の原作ということで有名だが、私は映画を観た事はないし、観ないで言うのも失礼だけれども原作とはまったく違うテイストになっているのはほぼ間違いないので、あんまり観たいとも思わない。もちろん、映画は . . . 本文を読む
『ドラマ』 イエス ☆☆☆★
イエスが1980年に発表したアルバムだが、イエスの歴史の中では異色作と言っていいだろう。オリジナル・メンバーでありバンドの顔とも言えるヴォーカリストのジョン・アンダーソンと、前にも一度脱退歴のあるキーボードのリック・ウェイクマンが脱退し、かわりに「ラジオスターの悲劇」をヒットさせたバグルスの二人組がそのまますっぽり入るという、驚天動地の合体劇を見せた作品なので . . . 本文を読む
『罪悪』 フェルディナント・フォン・シーラッハ ☆☆☆★
『犯罪』が素晴らしかったシーラッハの第二短編集。やはり水準以上のクオリティはキープしているものの、前作ほどのインパクトはなかった。共通するフォーマットが感じられ、融通無碍の展開を見せてくれた前作と比べるとバラエティの幅は狭まった感じがする。それから、最初の「ふるさと祭り」をはじめとして、痛ましい事件が多いのも本作の特徴である。
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『恋の罪』 園子温監督 ☆☆☆★
DVDで観賞。相変わらずエログロ満開だが、今回はひときわエロである。テーマはセックスといっていいだろう。と同時に、単なるエロ作家ではない園子温監督の文学趣味も前面に出ている。「城」というカフカ絡みのキーワードもそうだし、田村隆一の詩が重要な意味合いで引用されているのもそうだ。ひょっとしたらタイトルもサドを意識しているのかな?
ストーリーは、有名な東電 . . . 本文を読む
『レイチェル』 ダフネ・デュ・モーリア ☆☆☆
『レベッカ』のダフネ・デュ・モーリアが書いた、『レベッカ』と同タイプの小説ということで入手した。女名前一文字のタイトルも同じだが、原題は「私の従姉妹レイチェル」である。読み終えて、まあ予想通りというか、エンタメとしては悪くはないけれども『レベッカ』と比べると遥かに劣る。『レベッカ』にあった輝かしいマジックはここにはなく、まあまあよく出来た、ロ . . . 本文を読む
『Chris Botti In Boston』 Chris Botti ☆☆☆☆
アメリカ人のトランペッター、クリス・ボッティのライブ音源。スティングのバンドでトランペットを吹いていた人である。くぐもった情感のあるペットの音が特徴で、暑苦しくなく、ロマンティックかつクール。革新的な尖った音楽ではないが、心地良くリリカル、サテンのような肌ざわりのスムースジャズだ。スタジオ盤も何枚か持っている . . . 本文を読む