『桐島、部活やめるってよ』 吉田大八監督 ☆☆☆
日系レンタルビデオ店のDVDで鑑賞。かなり高評価なヒット映画だと聞いたが、個人的にはまあまあレベルだった。最近はスクールカーストという言葉があるらしく、それがテーマになっている。スクールカーストとは要するに学校生活の中でイケてる奴・イケてない奴という他人の評価によって形成される身分制度のことで、つまり他人から羨まれる人気者グループに所属すれ . . . 本文を読む
『11の物語』 パトリシア・ハイスミス ☆☆☆★
『太陽がいっぱい』の原作で有名なパトリシア・ハイスミスを初めて読んだ。短篇集である。どれも不快な、薄気味悪い物語ばかりだ。グレアム・グリーンが序文を書いていて、その中でハイスミス文学の特徴を語っているが、グリーンによればハイスミスは「不安の詩人」であり、その作品は読者を捕らえて離さず、またその残忍な魅力はきわめて独特だと賞賛している。グリー . . . 本文を読む
『パラダイスの夕暮れ』 アキ・カウリスマキ監督 ☆☆☆☆☆
カウリスマキ・ブルーレイ・ボックスの第二巻を購入した。大好きな『浮き雲』『過去のない男』『街のあかり』を美しい画質で観たかったからだが、これらを堪能した後、初見の『パラダイスの夕暮れ』を鑑賞。これも素晴らしかった。『浮き雲』『過去のない男』と並んで、カウリスマキ作品中私のフェイバリット作品となった。
公開は1986年。カウリス . . . 本文を読む
『つつましい英雄』 マリオ・バルガス=リョサ ☆☆☆☆☆
リョサの新刊を感嘆のため息とともに読了した。素晴らしい。エンタメとして純文学として、ほとんど非の打ち所がない出来だ。純文学にしては軽すぎるという人がいるかも知れないが、そんなことはない。純文学は重くても軽くてもいいのである。純文学にしては面白過ぎるという人もいるだろうが、いいじゃないか。私は全然気にならないぞ。
とにかく、リョサ . . . 本文を読む
『パプーシャの黒い瞳』 クシシュトフ・クラウゼ、ヨアンナ・コス=クラウゼ監督 ☆☆☆☆
日本版ブルーレイを購入して鑑賞。ポーランド映画。書き文字を持たないジプシー(ロマ族)でありながら詩人になった実在の女性ブロニスワヴァ・ヴァイス、通称パプーシャの数奇な生涯を描く。物語はパプーシャが幼い少女だった1910年代から晩年の1980年代までと幅広い時代にわたり、エピソードの時系列はシャッフルされ . . . 本文を読む
『悪霊の島(上・下)』 スティーヴン・キング ☆☆
文庫になっていたのでさっそく購入、読了した。うーむ、『シャイニング』の頃の怖いキングが復活しているとの謳い文句だったが、期待ハズレだった。キングはやはりもうダメなのだろうか。『アンダー・ザ・ドーム』や『11/22/63』はなかなか良かったんだけどなあ。
事故で大怪我をした50代のエドガーは妻と別れ、ある島に移り住んで絵を描き始める。す . . . 本文を読む
『白痴』 黒澤明監督 ☆☆
Criterionのクロサワ・ボックスでもともとのお目当てだった『白痴』を再見。これも前に観たのは確か大学生の頃で、しかも途中で眠ってしまったのであまり覚えていない。ラスト、暗い部屋の中で森雅之と三船敏郎が蒼白な顔で狂気的演技をする場面の陰鬱さが印象に残っているぐらいだ。一般には失敗作と言われているが、中にはこれこそ最高傑作などという黒澤ファンをいたりするので、 . . . 本文を読む
『ある夢想者の肖像』 スティーヴン・ミルハウザー ☆☆☆★
ミルハウザー初期の長編が柴田元幸の翻訳で出た。ということでさっそく取り寄せてみると、ミルハウザーらしからぬ分厚さである。柴田元幸はあとがきで、本書をミルハウザーらしさとミルハウザーらしくなさが混在した小説と書いている。ミルハウザーらしさとは玩具や人形などのミルハウザー的モチーフの原型が散見されることで、らしくなさとは緊密な構成とは . . . 本文を読む
『顔のない眼』 ジョルジュ・フランジュ監督 ☆☆☆★
iTunesのレンタルで鑑賞。こういう古いモノクロの怪奇映画を夜中に観るのはなかなかの快楽である。
手っ取り早く言うと、火傷で顔がただれた娘のために女性をさらってきて移植手術を繰り返す高名な医師と、その協力者である女秘書の物語。秘書もかつて医師に顔面皮膚移植で救われた過去があるらしく、首にある傷を真珠のネックレスで隠している。秘書は . . . 本文を読む
『アメリカ銃の秘密』 エラリー・クイーン ☆☆
国名シリーズ第六作目『アメリカ銃の秘密』を再読。1933年発表。傑作『エジプト十字架の秘密』の次である。ちなみに1932年にクイーンが発表した作品は、『ギリシャ棺の秘密』『エジプト十字架の秘密』『Xの悲劇』『Yの悲劇』の四作品。驚異的としかいいようがない創作力で、『エジプト十字架の秘密』の記事にも書いた通りこの年がクイーンの絶頂期であったこと . . . 本文を読む