アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

女神の見えざる手

2018-05-29 21:42:39 | 映画
『女神の見えざる手』 ジョン・マッデン監督   ☆☆☆☆☆  Amzon Primeで一回観たが英語字幕付きでも話が良く分からず、しかし映画は面白かったので気になり、日本版ブルーレイを買ってもう一回観た。それでやっとストーリーが分かった。題材はロビイストという、一般人にはちょっとなじみのない職業で、ワシントンの政治の世界が舞台。要するに権謀術数の世界だ。世の中の動きの先を読み、大衆心理を読み、敵 . . . 本文を読む

最終便に間に合えば

2018-05-26 21:51:22 | 
『最終便に間に合えば』 林真理子   ☆☆☆☆  これまで林真理子にはまったく関心なかったが、見城徹との対談を収めた『過剰な二人』がなかなか面白かったため、この人の書いた小説ってどんなかなと思って読んでみた。初・林真理子である。ちなみに本書は直木賞受賞作。なんでもエッセイ本でデビューしたばかりでまだ小説を書いたことがなかった林真理子に、「君は小説が書けるはずだ」と言って見城徹が小説を書かせ、その . . . 本文を読む

沈黙の戦艦

2018-05-23 09:33:40 | 映画
『沈黙の戦艦』 アンドリュー・デイヴィス監督   ☆☆★  なぜか時々無性に観たくなるセガールの映画を手元に置いておきたいと思って、セガール映画が三本入ったお得なブルーレイ・パックを購入した。しかもその三つは『Above the Law』『Under Siege』『Under Siege 2: Dark Territory』と、セガールはこの三つあればオーケーという王道セレクション。これでもう安 . . . 本文を読む

吉野葛・蘆刈

2018-05-20 10:46:51 | 
『吉野葛・蘆刈』 谷崎潤一郎     ☆☆☆☆☆  岩波文庫で読了。すごく薄っぺらい本である。名作と言われている「吉野葛」だが、発表当時はあまり評判が良くなかったらしい。あとがきに書いてあるが、淡泊な紀行文である、谷崎も衰えたか、みたいな言われた方をしたそうだ。確かに何気なく読むとそう思えるけれども、あっさりした紀行文風の装いの下に、実は香り高いロマンの豊饒な世界が広がっている。  語り手は谷 . . . 本文を読む

パッセンジャー

2018-05-16 23:44:01 | 映画
『パッセンジャー』 モルテン・ティルドゥム監督   ☆☆☆★  日本版ブルーレイで鑑賞。SF映画である。『インターステラー』や『ブレードランナー2049』みたいなSFと比べると小粒感があって地味だけれども、個人的にはわりと好きなタイプの映画だった。これも前に紹介した『ガタカ』と同じように、昔の手塚治虫のマンガみたいな雰囲気のSFである。『ザ・クレーター』あたりに入っていても違和感がないストーリー . . . 本文を読む

ラテンアメリカ傑作短篇集

2018-05-13 11:49:49 | 
『ラテンアメリカ傑作短篇集』 野々山真輝帆・編   ☆☆☆★  久しぶりにラテンアメリカ文学のアンソロジーを入手した。これは「中南米スペイン語圏文学史を辿る」の副題の通り、1838年から1964年までの重要作品を時系列に並べたもの。従ってこのブログで以前紹介したアンソロジー(『アルゼンチン短篇集』『ラテンアメリカ怪談集』『遠い女』『ラテンアメリカ五人集』など)のようにマジックリアリズムや幻想文学 . . . 本文を読む

狼の怨歌

2018-05-10 20:17:09 | 
『狼の怨歌』 平井和正   ☆☆☆★  『狼の紋章』に続いて『狼の怨歌』を読了。ちなみにこのタイトル、正しくは狼のレクイエムと読む。が、ルビが外れてしまったということで作者は別に『狼のレクイエム』という小説も書いており、ややこしいことになっている(この新版ではルビが復活している)。  さて、前作が学園アクションものだったのに対し、今回は国家的なスパイ謀略ものだ。一気にスケールアップし、CIAや . . . 本文を読む

マイレージ、マイライフ

2018-05-07 22:06:30 | 映画
『マイレージ、マイライフ』 ジェイソン・ライトマン監督   ☆☆☆☆  Netflixで鑑賞。何の予備知識も期待値もなく、ただなんとなく観たのだが、これが思いのほか良かった。主演は最近私の中で好感度急上昇中のジョージ・クルーニー。なぜ急上昇中かというと、アンチエンジングはしない、だって人間死ぬか歳とるかどっちかしかないんだから、といって白髪染めもしないという態度に感服したからである。男らしいっス . . . 本文を読む

失われた時のカフェで

2018-05-03 21:19:51 | 
『失われた時のカフェで』 パトリック・モディアノ   ☆☆☆☆  モディアノは私の中ですっかりタブッキやガイイやノーテボームと並ぶ(つまりもっとも芸術的に高度と私が考えるランクの)存在になったが、そのモディアノ体験の三冊目『失われた時のカフェで』を読了。本書はルキという女性の肖像を描く試みで、五つの章で構成されている。章によって語り手が変わり、学生、探偵、ルキ自身、ルキの恋人ロラン、という四人の . . . 本文を読む