『リップヴァンウィンクルの花嫁』 岩井俊二監督 ☆☆★
岩井俊二監督のこれまでの集大成、大傑作、という高評価を見て日本版ブルーレイを取り寄せワクワクしながら鑑賞した。が、鑑賞の途中から「これは失敗作なんじゃ?」と思い始め、観終えた感想もかなり微妙である。岩井監督らしさがよくも悪くもはっきり出ているので、岩井監督のスタイルが好きなファンと黒木華ファン、そして綾野剛ファンは満足できるだろう。黒 . . . 本文を読む
『すべての終わりの始まり』 キャロル・エムシュウィラー ☆☆☆★
国書刊行会「短篇小説の快楽」シリーズの一冊、キャロル・エムシュウィラーの『すべての終わりの始まり』を読了。知る人ぞ知る作家ということだが、確かにこれまでは名前すら知らなかった。アメリカの女流作家で、ネヴュラ賞を受賞していることからもSF畑の人といっていいと思うが、内容的にはカルヴィーノやボルヘスやグレイス・ペイリーと比較され . . . 本文を読む
『ナイトクローラー』 ダン・ギルロイ監督 ☆☆☆☆
Netflixで鑑賞。Netflixといえば箸にも棒にかかからないような駄作凡作か、有名作は昔のものしかないという印象があるが、これは割と新しく、しかも見ごたえ十分の傑作である。ただし後味は悪い。ダークでブラックな、現代社会を辛辣に批判する映画である。
主人公ルー(ジェイク・ギレンホール)はもともとチンピラの泥棒だが、ふとしたきっかけ . . . 本文を読む
『詩人と狂人たち』 G. K. チェスタトン ☆☆★
再読。チェスタトンといえばブラウン神父だが、これはガブリエル・ゲイルという詩人兼画家が探偵役の短篇集。
しかしこれが果たしてミステリと呼べるのかどうかは、議論の余地がある。訳者あとがきによれば、ある批評家はこれはとても推理小説とは呼べないと言ったらしい。訳者は異論を唱えているし、まあ広義の推理小説には含められると思うが、少なくとも通 . . . 本文を読む
『影武者』 黒澤明監督 ☆☆☆★
Netflixで鑑賞。私は黒澤明ファンを公言しているが、実は『乱』『八月の狂詩曲』など最後期の作品、正確には『どですかでん』以降の作品はほとんど観ていない。特に黒澤のカラー作品は観る気がしない。以前『夢』を観て激しく落胆したのと、三船を使わなくなった後の黒澤作品は評判が芳しくないのとで敬遠しているのである。だからこの『影武者』も観ていなかったが、ようやく一 . . . 本文を読む
『王朝』 海音寺潮五郎 ☆☆☆☆☆
今日から久しぶりの長い休暇で、日本に帰国することになっている。実家がある九州と東京に行く予定だが、色々と忙しくなりそうなのでこのブログ更新が普段より間延びするかも知れません。あらかじめご了承下さい。
さて、以前古本で入手していた海音寺潮五郎の王朝もの短篇集を再読した。何度読んでも味があるとても良い作品集なのだが、絶版になっている。著者のあとがきを読む . . . 本文を読む
『バニー・レークは行方不明』 オットー・プレミンジャー監督 ☆☆☆☆☆
1965年のモノクロ映画をiTunesのレンタルで鑑賞。これは面白い。ミステリであり、サスペンスものであるが、全篇不思議な不条理感と怖さに満ち溢れている。似たような感触の映画を、ちょっと他に思いつかない。
舞台はロンドン。アメリカから引っ越してきたばかりの母親が子供を学校に預け、買い物をし、新居のアパートで引っ越し . . . 本文を読む
『神津恭介、密室に挑む』 高木彬光 ☆☆☆★
高木彬光のミステリ短篇集を再読。名探偵・神津恭介ものが六篇収録されている。タイトル通りどれも密室を扱っていて、不可能興味が横溢する短篇集となっている。色んなアイデアが盛り込まれていて悪くない。
短篇それぞれの趣向にざっと触れると、「白雪姫」が殺人現場のまわりの雪に足跡がないといういわゆる「雪の密室」もの、「月世界の女」は「月の世界に戻る」と . . . 本文を読む
『見えない恐怖』 リチャード・フライシャー監督 ☆☆☆★
ミア・ファロー主演のスリラーをiTunesのレンタルで鑑賞。1971年公開、イギリス映画である。『ローズマリーの赤ちゃん』が1968年なのでその数年後だが、ショートヘアのミア・ファローはほぼ同じ雰囲気だ。ガラス細工の妖精を思わせる彼女独特の繊細さとよるべない少女のような風情が、こうしたクラシックな恐怖映画に不思議とよく似合う。今回の . . . 本文を読む
『死との約束』 アガサ・クリスティー ☆☆★
クリスティーのポアロものを再読。いわゆる中近東ものの一つで、エルサレムが舞台となっている。設定は『ナイルに死す』と似たパターンで、エルサレムの観光客たちのさまざまな人間模様が描写された後、殺人が起きる。そこに居合わせたポアロが責任者から依頼され、捜査を引き受ける。
設定は似ているが、事件は『ナイルに死す』とは逆にかなり地味である。派手なトリ . . . 本文を読む