『偶然世界』 フィリップ・K・ディック ☆☆★
ものすごく久しぶりに再読。写真は今のハヤカワ文庫版の装丁だけれども、私が持っているのは昔の版。結構ぼろぼろになっている。
本書は記念すべきディックの長編デビュー作である。子供の頃読んだ時はかなり面白いと思ったが、今読んだらやっぱり物足りない。ディックの十八番である凄まじい現実崩壊や、実存的問いを抱えて彷徨する人物像などはまだ出て来ない。基 . . . 本文を読む
『リトル・ロマンス』 ジョージ・ロイ・ヒル監督 ☆☆☆★
日本版DVDで再見。大昔観た映画なので、ずいぶんとなつかしかった。ダイアン・レインのデビュー作である。まだ子供だけれども、可愛いというより知的なルックスで、ハイデガーを読んだりする天才少女という設定に似合っている。
ストーリーは少年と少女が出会って早熟な恋に落ちる、まわりの大人は振り回されるというもので、『小さな恋のメロディ』系 . . . 本文を読む
『Time And A Word』 Yes ☆☆☆
イエスのセカンド・アルバム。ここまでがファーストと同じメンバーで、ヴォーカル:ジョン・アンダーソン、ベース:クリス・スクワイア、ドラム:ビル・ブラッフォード、ギター:ピーター・バンクス、キーボード:トニー・ケイというラインナップだ。
さすがに後のイエスから考えるとまだまだ荒く、未熟さを感じる作品集である。オリジナル曲はポップだけれども . . . 本文を読む
『黒い画集 ある遭難』 杉江敏男監督 ☆☆
松本清張で「黒い画集」シリーズとして映画化されているのは『あるサラリーマンの証言』『寒流』とこの『ある遭難』の三つだが、『ある遭難』は原作から推して内容が見劣りするような気がしたのと、評判もあまり良くないのでこれまで手を出さなかった。今回やっぱり気になるのでDVDを買ってしまったが、予想通り三作の中では一番話に膨らみがなく、物足りない。
ただ . . . 本文を読む
『澁澤龍彦訳 幻想怪奇短篇集』 澁澤龍彦・訳 ☆☆☆★
こういうのが出るとどうしてもつい買ってしまう。これは前半は『怪奇小説傑作集4』と完全にかぶっていて、澁澤訳の短篇だけ抜き出してある(しかも全部ではない)。というわけで私のお目当ては後半の、アンリ・トロワイヤ「共同墓地」である。これも以前『ふらんす怪談』として出ていたらしいが、今は絶版となっている。「殺人妄想」「自転車の怪」「幽霊の死」 . . . 本文を読む
『飛べ! フェニックス』 ロバート・アルドリッチ監督 ☆☆☆☆
アルドリッチ監督の映画を観たのは多分初めてだと思う。あまり有名じゃないがスルメのように味わい深い映画を各界の第一人者が紹介する、という趣向の『スルメ映画館』という本で紹介されていたのだが、確かにタイトルをこれまで聞いたことがなく、しかもかなり面白かった。
女は一人も出てこない、非常に男くさいというかおっさんくさい映画で、し . . . 本文を読む
『短篇小説日和: 英国異色傑作選』 西崎憲・編 ☆☆☆★
これはもともと「英国短篇小説の愉しみ」として出ていた三冊の中から、選りすぐりを集めて一冊にまとめた本らしい。柴田元幸のアンソロジーなどで現代アメリカの短篇はそれなりに読んでいると思うが、英国のアンソロジーはあまり読んだことがないので新鮮だった。選者が違うとテイストが違うのでそれも興味深い。本書はどうやら有名な短篇より「掘り出しもの」 . . . 本文を読む
『ファニーとアレクサンデル』 イングマール・ベルイマン監督 ☆☆☆☆☆
私はベルイマン監督の映画はあまり観ていないが、遺作である『ファニーとアレクサンデル』は大傑作であるという評判を聞き、以前から観たいとは思っていた。ただオリジナル版は5時間超という長さに恐れをなし、今に至るまで未見だったのだが、ここらで観ておかないと一生観ないで終わってしまいそうだという不安にかられ、一念発起してオリジナ . . . 本文を読む
『それから』 夏目漱石 ☆☆☆☆☆
大昔、森田芳光監督・松田優作主演の映画は観たが、夏目漱石の原作は初めて読んだ。映画の印象から、古い時代の倫理観に押し潰される不倫愛、みたいな窮屈でキマジメな印象を持っていたが、読んでみると『こころ』に匹敵するぐらい面白い。その面白さにまずびっくりした。本書は色々な読み方ができる小説であり、深読みしようと思えばいくらでも深読みできる多義性を持っていて、ちょ . . . 本文を読む
『Public Pressure - 公的抑圧 -』 Yellow Magic Orchestra ☆☆☆☆
YMO初期のライヴ盤。世界デビューとなったロンドン、ニューヨークのギグの模様が収められている。といってもこの演奏からは渡辺香津美のギターがそっくり削除され、ギター・ソロは坂本龍一のシンセサイザー・ソロに置き換えられていて、他にも色々と修正されているらしい。つまり、ニセライヴである。 . . . 本文を読む