アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

オスカーとルシンダ

2010-02-25 16:17:52 | 
『オスカーとルシンダ』 ピーター・ケアリー   ☆☆☆  ピーター・ケアリーの長編を読了。知っている人は知っているようにこの作家の短篇は柴田元幸のアンソロジーなどによく収録されていて、そのシュールレアリスティックで軽やかで洒落た感じがとても良く、以前から気になっていた。たとえば『どこにもない国』の「Do you love me?」、『燃える天使』の「影製造産業に関する報告」、『紙の空から』の「ア . . . 本文を読む

リレイヤー

2010-02-23 21:45:10 | 音楽
『リレイヤー』 イエス   ☆☆☆☆★  『海洋地形学の物語』に続くイエス7枚目のスタジオ・アルバム。キーボードのリック・ウェイクマンが脱退し、かわりにスイス人のパトリック・モラーツが参加している。前作『海洋地形学の物語』は2枚組にして収録曲は4曲、つまり片面全部1曲ずつという大作主義ここにきわまれリというアルバムで、さすがのイエスも緊張感が維持できなかったか、散漫なアルバムになってしまった。が . . . 本文を読む

中央流砂

2010-02-21 21:44:55 | テレビ番組
『中央流砂』 ☆☆☆  松本清張原作の古いTVドラマ。1975年のNHKドラマで、プラハ国際テレビ祭金賞を受賞したらしい。松本清張の映像化作品を周期的に観たくなる私としては、「これはいけるかも知らん」と触手が動いたわけだが、どうも今一つだった。硬派で手堅い作りだし、役者たちの演技もなかなか見ごたえがあるけれども、ストーリーが尻切れトンボというか、竜頭蛇尾である。  話の舞台は役所で、上層部は政 . . . 本文を読む

ザ・ロード

2010-02-19 22:54:09 | 
『ザ・ロード』 コーマック・マッカーシー   ☆☆☆☆☆  『血と暴力の国』があまりにも良かったために、ただちに購入したもう一冊のマッカーシー本。『血と暴力の国』の次の作品で、ピュリッツァー賞を受賞している。  廃墟となった世界をさまよう父と子の物語である。おそらく核戦争か何かで滅んだ世界だと思われるが、なぜ滅びたかという説明は全然ない。『血と暴力の国』でもそうだったが、この作家は辻褄あわせと . . . 本文を読む

容疑者Xの献身(映画)

2010-02-17 19:04:38 | 映画
『容疑者Xの献身』 西谷弘監督   ☆☆☆☆  日系のレンタルビデオ屋でDVDを入手し、鑑賞。原作は既読。なかなか良かった。かなり原作に忠実である。ただし、原作では禿げかかっていて目が細くて人相が悪いはずの石神を演じるのは、二枚目の堤真一である。原作通りならば、石神を演じるのは温水洋一でなければならないはずだ。これはやはり、主要キャラクターにはイケメンを持ってこないとヒットが危ぶまれるということ . . . 本文を読む

NEXT―ネクスト

2010-02-15 09:58:58 | 
『NEXT―ネクスト(上・下)』 マイクル・クライトン   ☆☆☆☆  全然知らなかったが、マイクル・クライトンが2008年に亡くなっていたらしい。今年になってようやく知り、びっくりした。享年66歳。あのクライトンもそんな歳になっていたんだなあ。とはいえ、まだまだ死ぬには早い歳だ。結局、『ジュラシック・パーク』がこの人の最大のヒット作ということになってしまった。クライトンにはぜひともあれを上回る . . . 本文を読む

幼女と煙草

2010-02-13 12:15:11 | 
『幼女と煙草』 ブノワ・デュトゥールトゥル   ☆☆☆★  ミラン・クンデラが絶賛、の売り文句に釣られて買った本。幼女と煙草。かなり不思議なタイトルだが、その通り幼女とタバコを題材にした小説である。冒頭いきなり、死刑囚が死ぬ前の一服を要求したら刑務所の規則で煙草を吸える場所がない(しかし一服の権利は憲法で認められている)、と揉めている場面から始まる。洒落ている。ここに幼女まで絡んでくるのか、こり . . . 本文を読む

笑う警官

2010-02-11 20:21:03 | 
『笑う警官』 佐々木譲   ☆☆  直木賞作家である。日本からニューヨークに戻る飛行機の中で読もうと思い、福岡空港の本屋で買った。『警官の血』というのもあったが長そうだったし、映画化もされているということでこっちにした。失敗だったかも知れない。  もともとは『うたう警官』だったのを『笑う警官』に改題したらしい。それについて最後に作者の簡単な説明もついているが、結局理由は良く分からない。映画化に . . . 本文を読む

ガメラ2 レギオン襲来

2010-02-09 21:25:01 | 映画
『ガメラ2 レギオン襲来』 金子修介監督   ☆☆☆★  DVDで再見。『ガメラ 大怪獣空中決戦』に続く平成ガメラ2作目である。敵役として昭和シリーズのギャオスを登場させた『大怪獣空中決戦』に対し、今回はオリジナルの新怪獣を登場させている。そういうところからも凝りに凝ったストーリーからも、前作をしのぐ怪獣映画を作ろうという制作サイドの意気込みが伝わってくる。実際、平成ガメラシリーズの中でこれが最 . . . 本文を読む

血と暴力の国

2010-02-07 21:28:54 | 
『血と暴力の国』 コーマック・マッカーシー   ☆☆☆☆☆  非常に良かった映画『ノーカントリー』の原作ということで軽い気持ちで読んでみたのだが、あまりの素晴らしさに腰が抜けた。久々の衝撃である。映画ではクールでスタイリッシュな映像が鮮烈だったが、小説であの感じは難しいだろうと思っていたら、映画に勝るとも劣らないクオリティだった。ビジュアルなしの言葉だけでこの世界観を表現できてしまうとは、やっぱ . . . 本文を読む