『トスカーナの贋作』 アッバス・キアロスタミ監督 ☆☆☆☆
英語版ブルーレイを買って再見。これもフランス語とイタリア語の映画なので日本語字幕付きが欲しかったのだが、日本ではブルーレイが出ていない。
さて、これは非常に奇妙な映画である。あらすじ紹介を読むと、大体こんな風に書かれている。「イタリア、南トスカーナ地方の小さな村で講演を終えたばかりのイギリスの作家(ウィリアム・シメル)が、ギャ . . . 本文を読む
『クリムゾンの迷宮』 貴志祐介 ☆☆☆☆
再読。貴志祐介の、いつ読んでもコワい小説のひとつであり、ほぼ完全に小説版サバイバル・ゲームとなっている。主人公の日本人男性40代・藤木がある日目覚めると、見慣れない異様な風景の中にいる。赤茶けた大地、岩山、サボテン。ここはどこだ? すぐに同じような境遇の男女が7人いることが分かるが、誰も自分がどうやってここに来たか記憶がない。そしてそれぞれが身につ . . . 本文を読む
『コンドル』 シドニー・ポラック監督 ☆☆☆☆
ロバート・レッドフォード主演『コンドル』をiTunesのレンタルで鑑賞。1975年公開。初見だが、これはかなり好きなタイプの映画だった。いわゆる謀略もので、レッドフォード演じる主人公はCIA職員。殺し屋も出てくる。とはいえ、ミッション・インポシブルやボーン・シリーズみたいな感じでは全然なくて、もっとしっとりした、情感溢れるフィルムである。主人 . . . 本文を読む
『流れよ我が涙、と警官は言った』 フィリップ・K・ディック ☆☆☆★
自慢するが、私はサンリオ文庫版の『流れよ我が涙、と警官は言った』を持っている。今となっては新訳が創元から出ているのでありがた味は薄いが、たとえボロボロになっても、この本を処分する気にはなれない。この気持ちはかつてのサンリオ文庫の、あのどこまでも我が道をいく孤高の存在感に魅せられた本読みなら分かると思う。ちなみに自慢は続く . . . 本文を読む
『嗤う伊右衛門』 蜷川幸雄監督 ☆☆★
日本版DVDで鑑賞。大昔に見たことがあって、唐沢寿明と小雪の悲劇的なカップルのたたずまいがそこはかとなく印象に残っていたので、久しぶりに再見した。京極夏彦の原作は偏愛の一冊である。
監督は演劇人である蜷川幸雄だが、私はこの人の舞台はNYでやった藤原竜也主演の『ムサシ』を観ただけで、正直さほどの印象は残っていない。映画が始まるとまずは唐沢寿明と池内 . . . 本文を読む
『ポッターマック氏の失策』 オースチン・フリーマン ☆☆☆☆
『オシリスの眼』に続き、フリーマンのソーンダイクもの長篇を読了。これは倒叙推理であり、つまり犯人側の視点で物語が進む。犯人は最初から分かっている。罪を逃れるために偽装工作を凝らすが、やがてソーンダイクの捜査と推理によって真相が暴かれる。『オシリスの眼』には及ばないものの、これも面白かった。やはり渋い。言葉を変えれば地味である。が . . . 本文を読む
『八つ墓村』 野村芳太郎監督 ☆☆☆★
日本版ブルーレイで鑑賞。私が子供の頃「たたりじゃあ~」が大流行したのはよく覚えているが、この映画は未見だった。今回、初鑑賞である。あの西村賢太が、横溝正史映画化作品の中でこれが一番好き、とエッセーに書いていたので観てみた。ちなみに横溝正史の原作は既読。
アマゾンのカスタマーレビューなんかを読むとやたら怖い怖いと書いてあるが、さすがに今の目で見ると . . . 本文を読む
『秘密の武器』 コルタサル ☆☆☆☆☆
岩波文庫で出ているコルタサルの短篇集を読了。実はこの本、同じ岩波文庫の『悪魔の涎・追い求める男』と内容がかなりかぶっているので購入を見送っていたのだが、もはや未読のコルタサル短篇集が希少となったので、あきらめて購入した。なぜそんなに内容が重複した本が二冊出ているかというと、『悪魔の涎・追い求める男』は日本独自編集の傑作選で、こちらはコルタサルのオリジ . . . 本文を読む
『ムード・インディゴ』 ミシェル・ゴンドリー監督 ☆☆☆☆
ボリス・ヴィアンの名作『うたかたの日々』の映画化作品である。監督は『エターナル・サンシャイン』のミシェル・ゴンドリー監督。
レーモン・クノーが「現代の恋愛小説中もっとも悲痛な作品」と呼んだ、シャンパンの泡の如き奇想と遊びに満ち満ちたあの『うたかたの日々』を、果たしてどのように映像化したのか興味津々だったが、おそらくおふざけは控 . . . 本文を読む
『検察側の罪人(上・下)』 雫井脩介 ☆☆☆☆☆
久しぶりに雫井脩介本を買って、週末で一気読みした。面白い。これまで私が読んだ雫井作品中で最高の出来だろう。『火の粉』より面白かった。
ある意味『火の粉』と共通するテーマで、人を裁くとはどういうことか、を更に突き詰めた小説である。主人公はベテラン検事の最上と、理想に燃える若手検事の沖野。沖野は最上を尊敬している。さて、ある殺人事件の調 . . . 本文を読む