『Terminator Salvation』 McG監督 ☆☆☆★
土曜日に『ターミネーター・サルヴェーション』を観てきた。
前作のラストでスカイネットが反乱を起こしてしまったので、本作はついに未来戦争映画となった。タイムマシンで現代にやってきたターミネーターが人間を追い回す、という一作目からの黄金パターンがとうとう崩れたわけである。するとどうしてもジョン・コナー率いる人間たちが武装し . . . 本文を読む
(一昨日の続き)
後半に入ると最終回に向けてキャラクター描写もどんどん深まっていくが、やはり白眉は第23話『取込まれて勝負』である。これはお春の「懐妊」を題材にしたあまりにも感動的なエピソードで、ことさらお涙頂戴の話ではないにもかかわらず、あのラストシーンではどうしても涙腺が緩んでしまう。
冒頭、医者がお春におめでたを告げる。お春はハッピーでにこにこ顔だ。「子供ができたなんて言ったら、あの . . . 本文を読む
『必殺必中仕事屋稼業』 ☆☆☆☆★
久しぶりに必殺シリーズについて書きたい。この『必殺必中仕事屋稼業』はもうずいぶん前にDVDを全巻購入していたが、最近好きなエピソードをまとめて再見した。故人となってしまった名優・緒方拳氏を偲ぶためだ。
知っている人は知っているように、この『仕事屋』は必殺シリーズの中でも名作の誉れ高い作品である。中村主水が出てこないいわゆる「非主水シリーズ」中では最高傑作と . . . 本文を読む
『Op.ローズダスト(上・中・下)』 福井晴敏 ☆☆☆★
福井晴敏の新刊が文庫で出ていたので購入。文庫で全三巻、いつものことながら読み応えあり過ぎである。『亡国のイージス』は東京湾に浮かんだ護衛艦、『終戦のローレライ』は潜水艦が主な舞台と、いわば空間限定の密室劇だったが、本書はついに現代の東京を舞台にテロリストとの戦いが繰り広げられる。ハリウッド映画真っ青の一大スペクタクル、ド派手である。 . . . 本文を読む
『男はつらいよ 寅次郎純情詩集』 山田洋次監督 ☆☆☆☆
シリーズ18作目。これは特色がある作品で、いってみれば寅さん+難病ものといった趣きだ。マドンナが不治の病で死んでしまうのである。私は寅さん博士ではないが、シリーズ中マドンナが死んでしまうのはこれだけではないだろうか。もちろんこれはお涙頂戴恋愛映画の王道、基本フォーマットであり、従って本作もいつにも増して「泣ける」作品に仕上がっている . . . 本文を読む
『武州公秘話』 谷崎潤一郎 ☆☆☆☆
谷崎潤一郎の『乱菊物語』が大好きなので、同じく伝奇ロマンということで本書を購入してみた。『乱菊物語』の荒唐無稽さ、濃厚な幻想性には及ばなかったが、なかなか面白かった。かなり変わった小説だ。
これは武州公の少年期、青年期からその秘められた性癖を語るエピソードを抜き出して並べてみせる、という体裁になっている。秘められた性癖というのははっきり言うと変態性 . . . 本文を読む
『道』 フェデリコ・フェリーニ監督 ☆☆☆☆☆
巨匠、フェデリコ・フェリーニの『道』を再見。これはまだフェリーニが無名の頃に作ったごく初期の作品で、後の『8 1/2』のような絢爛たるシュールレアリスム映画ではなく、普通の写実的な作品である。モノクロ映像でイタリアの貧しい村や大道芸人たちの生活が描かれる。私はフェリーニというとあの毒々しい表現主義的映像の印象が強いので、初めてこの映画を観た時 . . . 本文を読む
『愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える』 ジャン=パトリック・マンシェット ☆☆☆★
なかなか入手困難なマンシェットの未読本が出たので速攻で購入。しかしこの光文社古典新訳文庫、トルストイありドストエフスキーあり、プッツァーティあり、バタイユの『目玉の話』なんてものがあると思ったらフィッツジェラルドあり、ムージルもあり、しまいにはマンシェットまである。ものすごいラインナップだ。頼も . . . 本文を読む
『白い恐怖』 アルフレッド・ヒッチコック監督 ☆☆★
DVDで再見。といってもどんな話だったかほとんど覚えていなかった。美術にダリの意匠が使われているのをかすかに記憶していた程度だ。イングリッド・バーグマンとグレゴリー・ぺックという大スターの共演だが、ヒッチコックにしてはかなり物足りない映画である。サイコ・サスペンスの巨匠ヒッチコックが精神分析をテーマにしたら傑作ができそうなものだが、あま . . . 本文を読む
『大聖堂』 レイモンド・カーヴァー ☆☆☆☆☆
『愛について語る時に私たちが語ること』に続く短編集にして、短篇作家カーヴァーの誰もが認めるマグナム・オプスである。村上春樹が言うように、初期の作風からはっきりした変化が見られる。まずスタイルの点では一つ一つの短篇が長くなり、文章も息が長くなっている。スケッチ的な、あるいは一筆書き的なプロットは減少し、物語は複合的な展開を見せる。奇をてらったよ . . . 本文を読む