『空気人形』 是枝裕和監督 ☆☆☆
日本版DVDを購入して鑑賞。まあまあだった。購入することはなかったかも知れない。
ダッチワイフ、というか最近はラブドールというらしいが、ファミレスの店員である独身男(板尾創路)が所有するラブドール「のぞみ」が、ある日心を持って動き出す。そしてレンタルビデオ店で働く純一(ARATA)に恋をしてそこでアルバイトを始め、ラブドールである自分に引け目を感じな . . . 本文を読む
パリにて
パリとフランス語の関係を女と香水の関係にたとえたのは、かつてぼくが懇意にしていた映画監督だった。彼は場違いなほど静謐で、悔恨と郷愁に満ちた忘れがたい恋愛映画を一つ撮ったが、その後どういうわけか二流の恐怖映画ばかり撮るようになり、やがて人々から忘れ去られてしまった。そうして過去の著名人という、生きながら亡者として語られる人々の仲間入りを果たしたわけだが、その時の彼の . . . 本文を読む
『雪国』 川端康成 ☆☆☆☆
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった、で有名な『雪国』を読了。恥ずかしながら初読である。それにしてもこの書き出しはなぜこうも有名なのだろう。読んだことない私でさえ子供の頃から知っているが、別に大したことない文章である。覚えやすいからだろうか。ひょっとするとこの次の「夜の底が白くなった」がポイントなのかも知れない。大胆な比喩で、どこか絵画的、それも抽象と具象 . . . 本文を読む
『ろくでなし啄木』 三谷幸喜脚本・演出 ☆☆
三谷幸喜がこんな芝居をやったということを全然知らなかったが、日系のレンタルDVDでふと見かけて鑑賞。WOWOWでも放映したらしい。
しかし、これはあかんでしょう。今まで観た三谷芝居の中で一番つまらなかったですぞ。ものすごく長く感じる。最後まで観通すのがしんどかった。役者三人、藤原竜也、中村勘太郎、吹石一恵はみんな熱演で、よく頑張ったと思う。 . . . 本文を読む
『アンダー・ザ・ドーム(上・下)』 スティーヴン・キング ☆☆☆☆
キングの分厚い最新長編がマンハッタンの紀伊国屋書店にでーんと飾ってあったので、つい我慢できずに買ってしまった。最近のキングはかつての輝きを失っているので不安もあったが、この本はなかなか評判がいいようだったし。キングとしては『ザ・スタンド』『IT』に続く三番目に長い長編らしい。分厚い。上下二巻で100ドル以上した。
ある . . . 本文を読む
『インセプション』 クリストファー・ノーラン監督 ☆☆☆★
以前映画館で観た時はディテールがよく分からなかった『インセプション』。面白さをちゃんと理解できていないのではないかと心配で、日本語字幕付きDVDを借りてきて再見した。さすがに今度はよく分かった。とはいえ、やはりややこしい。よくこんなややこしい映画を撮ったものだ。その熱意にはつくづく感心する。が、だから大傑作になるとは限らないところ . . . 本文を読む
(前回の続き)
さて、第一部「大地」は王龍が死の床について、息子たちに「決して土地を売らないでくれ、土地を売ってしまったら終わりだ」と頼んでいる象徴的な場面で終わる。そして第二部「息子たち」は、王龍の死から始まる。第一部では「長男」「次男」などと書かれ、名前がなかった息子たちだが、第二部から王一、王ニ、王三と名前が与えられる(といっても番号が振られただけだが…)。
長男はぐうたらな貴族にな . . . 本文を読む
『大地(一、二、三、四)』 パール・バック ☆☆☆☆☆
岩波文庫の全四巻を再読。
一大叙事詩、という言葉がある。言うまでもなく叙事詩とはもともと神話とか英雄譚を韻文形式で綴った詩のことで、厳密には小説を意味しない。だから大河ドラマ的な長編を一大叙事詩、と呼ぶのはいい加減な使い方なのかも知れないが、ある種の小説、長大で、読み終えた時に他では得られない深い感慨を与えてくれる大長編の中には、 . . . 本文を読む
『悪人』 李相日監督 ☆☆☆
レンタルDVDで鑑賞。
なかなか評判が良さそうだし、モントリオール世界映画祭で賞も獲ったということで観てみた。観る前は、主人公は本当に悪い奴で、にもかかわらずそんな悪人に惹かれてしまった女を絡めて人間心理の不思議と不条理を描いた、みたいな映画かと勝手に思い込んでいた。「悪人」なんてタイトルを正面きってつけるからには本物の「悪人」の話だろうと思ったのだが、観 . . . 本文を読む
『谷間の百合』 バルザック ☆☆☆★
バルザックは極端に神秘主義的な『セラフィタ』しか読んだことがなかったが、やはりバルザックの本領はあれじゃないんだろうな、とずっと思い続け、ようやく最近『谷間の百合』を読んだ。なぜこれを選んだかというと、タイトルが印象的だったからだ。クイーンにも同名の曲があるな。
恋愛ものだが、主人公である青年のフェリックスが女友達のナタリーに送る書簡、という形式を . . . 本文を読む