アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

二重葉脈

2014-05-30 21:52:50 | 
『二重葉脈』 松本清張   ☆☆☆★  また松本清張が読みたくなって買った。聞いたことないタイトルだったが、倒産企業の説明会から始まる冒頭の場面が面白そうだったのでチョイスしたのである。しかし、この人は一体何冊本を書いているんだろう。  やはり冒頭から面白い。企業が倒産して債権者への説明会が開かれるが、社長は雲隠れしていて、かつ会社の金を着服していた疑いがある。つまり、私腹を肥やしてわざと会社 . . . 本文を読む

美女と野獣

2014-05-28 21:52:03 | アニメ
『美女と野獣』 ゲイリー・トゥルースデイル/カーク・ワイズ監督   ☆☆☆☆  ディズニーの『美女と野獣』をDVDで再見。これは日本でもアメリカでもかなりヒットして話題になり、普段はディズニー映画を映画館に観に行ったりしない私も行った記憶がある。そして予想以上に面白かった。私はディズニー映画で一番好きなのは昔も今も『不思議の国のアリス』なのだけれども、それに次いで好きなのは多分この『美女と野獣』 . . . 本文を読む

妖説太閤記

2014-05-25 22:11:10 | 
『妖説太閤記(上・下)』 山田風太郎   ☆☆☆☆☆  大傑作。さすが山田風太郎である。これぞ本物の作家が書いた本物の小説、というオーラが凄絶なまでに迸りまくっている。私は歴史小説をあまり読まないので、たとえば司馬遼太郎みたいな他の作家の歴史小説と比較して論じることはできないけれども、この強烈な毒とめまいを封じ込めたような極彩色の世界は山田風太郎特有のものであるからして、これは他のどんな歴史小説 . . . 本文を読む

ジャンゴ 繋がれざる者

2014-05-23 08:19:14 | 映画
『ジャンゴ 繋がれざる者』 クエンティン・タランティーノ監督   ☆☆☆☆  DVDで再見。面白い。タランティーノ作品としては傑作『パルプ・フィクション』にこそ及ばないものの、かなり上位に来ると思う。個人的には『イングロリアス・バスターズ』より好きだ。  今回はウェスタンである。それも、奴隷制度が題材。奴隷だった黒人ジャンゴがドイツ人賞金稼ぎの相棒となり、売られていった奴隷妻ブルムヒルダを白人 . . . 本文を読む

三つの棺

2014-05-20 08:11:15 | 
『三つの棺』 ジョン・ディクスン・カー   ☆☆☆  名作と言われるカーの『三つの棺』を再読。私は昔からカーはどうも苦手で、あまり面白いと思ったことがない。カーといえば不可能犯罪、特に密室だけれども、個人的にはトリックのためのトリックのような、無理やり感のある謎解きが多い気がする。私はトリックよりロジック派、つまり派手なトリックはなくてもいいから美しいロジックで謎を解いて欲しい、という派なので、 . . . 本文を読む

勝手にしやがれ

2014-05-18 09:58:23 | 映画
『勝手にしやがれ』 ジャン=リュック・ゴダール監督   ☆☆☆★  ゴダールの『勝手にしやがれ』を日本版ブルーレイで鑑賞。  主演はジャン・ポール・ベルモンドとジーン・セバーグ。モノクロ映画。犯罪ものという話も似ているし、『気狂いピエロ』を先に観ているのでどうしても比較になってしまうが、こっちの方が古い作品ということもあってか『気狂いピエロ』までのとんがりっぷり、アナーキーさはまだ見られない。 . . . 本文を読む

十角館の殺人

2014-05-16 22:22:23 | 
『十角館の殺人』 綾辻行人   ☆☆  日本の名作ミステリを読もうと思って、ネットで評価が高い『十角館の殺人』を入手した。綾辻行人のデビュー作である。結末近くの一行で世界が変わる、と聞いて面白そうだと思ったのだが、読み始めてしばらくして、どうも前に読んだことがあるような気がしてきた。でもトリックも犯人も何も記憶にないので、気のせいかと思って読み続け、最後の謎解きまで読んでようやく思い出した。しま . . . 本文を読む

ハイドラ

2014-05-14 18:39:06 | 音楽
『ハイドラ』 TOTO   ☆☆☆☆  TOTOのセカンド・アルバム。他のアルバムと比べると全体に地味だが、私はこのセカンドに一番TOTOらしさを感じる。「99」が入っているせいかも知れないし、最初に聴いたTOTOのアルバムがこれだったせいかも知れない。ちょっと暗い感じがするのも個人的にはツボだ。  TOTOというバンドを最初に意識したのは、まだ若かりし頃「99」のビデオクリップを観た時だった . . . 本文を読む

甘い生活

2014-05-12 19:36:27 | 映画
『甘い生活』 フェデリコ・フェリーニ監督   ☆☆☆☆☆  フェリーニの『甘い生活』を再見。これは『カリビアの夜』の次で、『8 1/2』の前々作。マルチェロ・マストロヤンニが初めて出演したフェリーニ映画である。私は『カリビアの夜』を観たことがないので断言はできないが、一貫したストーリーを語らず緩いエピソードを連ねて映画を作るというフェリーニ・スタイルを打ち出した最初の作品なのではないだろうか。こ . . . 本文を読む

マリーについての本当の話

2014-05-10 14:15:05 | 
『マリーについての本当の話』 ジャン=フィリップ・トゥーサン   ☆☆☆☆  トゥーサンの新作を読了。『愛しあう』『逃げる』に続く「ぼく」と「マリー」の物語三作目ということで、トーンはよく似ている。やはり、世界のあちこちの都市を舞台に「ぼく」と「マリー」の微妙な関係性が描かれる。前二作を読んでいなくても問題ないが、読んでいた方が味わいは深くなるだろう。エピソードも微妙にリンクしている。『愛しあう . . . 本文を読む