アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

Synchronicity

2014-08-30 21:35:33 | 音楽
『Synchronicity』 The Police   ☆☆☆☆★  ポリス5枚目にして最後のスタジオ・アルバム。その後の活動がまったくないわけじゃないけれども、ポリスがアルバムの形で音楽を創造し続けた歴史はこれで幕を閉じる。その幕引きにふさわしい、見事なアルバムである。  前作『Ghost In The Machine』で顕著だったデカダンな空気は薄れ、その代わりアルバム全体に横溢するのは . . . 本文を読む

遁走状態

2014-08-28 21:07:30 | 
『遁走状態』 ブライアン・エヴンソン   ☆☆☆☆☆  不思議な表紙とタイトル、そして奇想の作家らしい紹介文に惹かれて買ったが、予想だにしなかった強烈な読書体験となった。正直、かなりの衝撃を受けた。決して好みとはいえないし、美しい小説というわけでもない。が、否応なしに呪縛される。  最初の一、二篇は、ありがちなアンリアリズム系の奇想短篇を予想していたこともあって、なんだか抽象的で分かりづらいな . . . 本文を読む

カイロの紫のバラ

2014-08-25 23:45:13 | 映画
『カイロの紫のバラ』 ウディ・アレン監督   ☆☆☆☆  所有するDVDで再見。映画の中のキャラクターが現実世界に出て来て(文字通り映画館のスクリーンから抜け出してくる)、映画好きの主婦と恋をするというファンタジー映画。ウディ・アレンらしい荒唐無稽さと、映画への屈折した愛情に満ち満ちた作品である。主演はミア・ファローとジェフ・ダニエルズ。アレン本人は出演していない。  とてもロマンティックだけ . . . 本文を読む

満潮に乗って

2014-08-23 09:47:19 | 
『満潮に乗って』 アガサ・クリスティー   ☆☆☆★  再読。この『満潮に乗って』はポアロもので、ファン以外にはあまり知られていない作品だと思うが、クリスティーのストーリーテリングの冴えを堪能できるなかなかの佳作である。  序盤の展開はもうクリスティー王道、ファンにはおなじみの状況設定だ。身元の怪しい若い妻と再婚してすぐに死んでしまった大金持ち、タナボタで遺産を全部相続した若い未亡人、当てにし . . . 本文を読む

Eye In The Sky

2014-08-21 20:56:18 | 音楽
『Eye In The Sky』 The Alan Parsons Project   ☆☆☆☆  私がアラン・パーソンズ・プロジェクトを聴き始めたのはわりと最近で、過去一年以内である。アラン・パーソンズという人はピンク・フロイドの名作『狂気』のレコーディング・エンジニアで、後に自分がアーティストとしてデビューしたという珍しいパターンだ。名作のレコーディングをやったから似たような名作を作れるとは . . . 本文を読む

雨月物語

2014-08-19 21:57:49 | 映画
『雨月物語』 溝口健二監督   ☆☆☆☆☆  『雨月物語』を再見。1953年作品、ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞受賞、仏『カイエ・デュ・シネマ』誌「史上最高の映画100本」第16位。言わずと知れた、日本が世界に誇る名画の一つである。  上田秋成の『雨月物語』9篇の中から「浅茅が宿」と「蛇性の婬」の2篇をベースとし、モーパッサンの短編小説「勲章」の翻案を加えてある。近江の国の百姓である源十郎と宮 . . . 本文を読む

数えずの井戸

2014-08-17 12:08:17 | 
『数えずの井戸』 京極夏彦   ☆☆☆  有名怪談の翻案シリーズその3、『数えずの井戸』を読了。おなじみ、番町皿屋敷である。が、解説にもあるように「いちまーい、にまーい」と女の幽霊が足りない皿を数えるのは知っていても、なぜそうなってその後どうなるのかは、あまり良く知られていないんじゃないだろうか。私もそうだった。女の幽霊の名前が菊ということすら知らなかった。  というわけで、本書のテーマは「数 . . . 本文を読む

清須会議

2014-08-15 21:06:34 | 映画
『清須会議』 三谷幸喜監督   ☆☆☆☆  三谷幸喜の『清須会議』を観た。前作が期待外れだったので今回も期待していなかったが、結果的にはかなり満足した。まあ、ちょっと前に『妖説太閤伝』を読み『関ヶ原』を読み、私の中で秀吉関連の興味が高まっていたせいもあるかも知れない。「清須会議」の重要性もちゃんと分かっている。もしその知識なしに観ていたら、ここまで愉しめたかどうか分からない。  歴史ものといっ . . . 本文を読む

私が殺した少女

2014-08-13 22:11:13 | 
『私が殺した少女』 原寮   ☆☆☆☆  日本のハードボイルド・ミステリ。ネットのどこかで見かけた日本の名作ミステリ・ランキングにランクインしていたので読んでみた。作者はもともとジャズ・ピアニストらしい。レイモンド・チャンドラー風の、正統派ハードボイルドである。はっきりいって渋い。主人公は沢崎という中年の探偵で、物語は「私」という沢崎の一人称で記述される。警察には目の仇にされているが、同時に捜査 . . . 本文を読む

Grace Under Pressure

2014-08-11 22:08:16 | 音楽
『Grace Under Pressure』 Rush   ☆☆☆☆★  ラッシュ10枚目のスタジオ・アルバム。このアルバムを最初に聴いた時の戸惑いは今でもよく憶えている。戸惑いというか、それはラッシュの変貌の容赦ないスピードについていけないという不安感だったかも知れない。それぐらい当時のラッシュの進化ぶりは凄かった。ラッシュのシグニチャー・サウンドを打ち出した『Moving Pictures』 . . . 本文を読む