『すべての火は火』 フリオ・コルタサル ☆☆☆☆
ハリケーン・サンディのせいで月曜から今日の夕方まで家が停電で、ネットにも繋がらなくなっていた。復旧までもうしばらくかかると思っていたので、電気が戻った時はうれしかった。それにしても、蝋燭と懐中電灯だけで生活していると「極限状況」気分が盛り上がってきてかなりきつい。自分たちの生活がいかに電気に依存しているかよく分かった。
というわけで話は . . . 本文を読む
『ライヴ・イン・パリ 1979』 スーパートランプ ☆☆☆☆☆
何と、今頃になってスーパートランプの1979年「ブレックファスト・イン・アメリカ」ツアーの映像が出た。最初Amazonで目にした時は自分の目が信じられなかった。いやー長生きはするものである。アルバム『ブレックファスト・イン・アメリカ』が売れに売れた直後のまさに絶頂期のライヴ、要するにライヴアルバム『Paris』の映像版だ。しか . . . 本文を読む
『少女地獄』 夢野久作 ☆☆☆
夢野久作の短編集を見かけて買ってきた。この作家は有名な『ドグラ・マグラ』と『暗黒のメルヘン』収録の「瓶詰の地獄」しか読んだことがなかったので、今ひとつイメージが掴みきれない作家だったが、本書を読んでなんとなく分かった、というか分かった気になることができた。しかし実のところ、これまで私が抱いていた印象はかなり修正されることとなった。
タイトルになっている「 . . . 本文を読む
『Exit...Stage Left』 Rush ☆☆☆☆☆
ラッシュはこれまで数多くのライヴ・アルバムをリリースしているが、結局のところ1981年発表の『Exit...Stage Left』(邦題『神話大全』)が最高傑作だと思う。時期としては『Moving Pictures』の発表直後で、普通言われるところのバンドの絶頂期である(ラッシュの歴史の中に特別な絶頂期というものがあるとすればだ . . . 本文を読む
『新選組血風録』 司馬遼太郎 ☆☆☆☆☆
『燃えよ剣』に続いて『新選組血風録』を読了。短編集であり、「外伝」的エピソードの集成だけれども非常に面白かった。個人的には『燃えよ剣』より面白かった。が、この面白さを満喫するためには先に『燃えよ剣』を読んでおく必要があるのだ。
こっちの方が面白かった理由は色々あり、色んな隊士が登場してそれぞれにスポットが当たるという趣向もその一つだが、短い話の . . . 本文を読む
『Stuff』 Stuff ☆☆☆☆☆
最近、これまでほとんど聴くことのなかった1970年代80年代のフュージョン(または当時いうところのクロスオーバー)にハマって聴きまくっているが、そのきっかけとなったのがこの『スタッフ』である。スタッフ一枚目のスタジオ・アルバム。スタッフはスティーヴ・ガッドやコーネル・デュプリー、エリック・ゲイルなどによって結成されたグループで、ドラムとギターが二人ず . . . 本文を読む
『愛しのグレンダ』 フリオ・コルタサル ☆☆☆☆☆
後期コルタサルのにわかファンと化した私が入手したのはまずはこれ、『愛しのグレンダ』である。もちろん短編集。むさぼるようにして読了。で、もちろん大傑作。
やはり強力なのは文体のテンションの高さである。小説というより彫琢された散文詩の如き文体で、クリスタルというかほとんどダイアモンドのような硬度を見せる。個々の文章がどうというだけでなく文 . . . 本文を読む
『愛と宿命の泉パート2 ~ 泉のマノン』 クロード・ベリ監督 ☆☆☆☆☆
そして一大ロマンの行末は『フロレット家のジャン』から『泉のマノン』へと引き継がれる。『フロレット家のジャン』はまぎれもない悲劇だったが、『泉のマノン』は幼かったジャンの娘マノンが美しく成長した時に宿命的に始動する、真実の復讐の物語である。
本編の中心人物であるマノンを演じるのは、前編には出演していなかったエマニュ . . . 本文を読む
『愛と宿命の泉パート1 ~ フロレット家のジャン』 クロード・ベリ監督 ☆☆☆☆☆
英語版のDVDを入手して観賞。本当は日本語字幕で観たかったのだが、日本語版は製造中止のようだ。何とももったいないことである。この『フロレット家のジャン』と『泉のマノン』の二つで一つの完結した物語を構成しており、これはその前編である。本国フランスでは三ヶ月後に後編の『泉のマノン』が公開されたらしい。ちなみに両 . . . 本文を読む
『パラドックス13』 東野圭吾 ☆☆☆★
再読。これはミステリというよりSFだが、もちろん東野圭吾らしくミステリ的要素も多分にある。しかしそれは殺人事件などではなく、「一体今世界に何が起きているのか?」というSF的謎である。このシチュエーションはおそらく古典的と言ってもいいパターンで、キングの『ランゴリアーズ』や楳図かずおの『漂流教室』と似ている。世界中から人々が消える。生き延びた少数の人 . . . 本文を読む