『双頭の悪魔』 有栖川有栖 ☆☆★
初めて読んだ有栖川有栖のミステリ。この人はエラリー・クイーンばりの論理的推理が売り物といわれていて関心がなくもなかったが、読んだことはなかった。この『双頭の悪魔』はそんな有栖川有栖の最高傑作であり、日本の本格ミステリの中でも名作と聞いてそれなりに期待したが、残念ながら物足りなかった。駄作とは言わないが、読まなくても良かったかなレベルである。
趣向は凝 . . . 本文を読む
『ボーン・レガシー』 トニー・ギルロイ監督 ☆☆☆★
手持ちのDVDで再見。世間ではどうやらケチョンケチョンに酷評されているらしい『ボーン・レガシー』だが、私は結構好きである。もちろん、マット・デイモンのボーン三部作と比べると見劣りするが、シリーズの持ち味である硬派なリアリズムと臨場感は一応維持されているし、個々のアクション場面のテンションは決して低くない。
要するに、この映画の大き . . . 本文を読む
『対岸』 フリオ・コルタサル ☆☆☆
「フィクションのエル・ドラード」シリーズでコルタサルが出た、と喜び勇んで買ったら、ごく初期の習作的な短編集だった。アマゾンから届いた本の帯には「幻の処女短編集」とちゃんと書いてある。通信販売だけに頼っているとこういうことがある。まあ、買って後悔したというほどでもないが、本屋で手にしていたら買わなかったかも知れない。解説を読むと、コルタサルの地方教員時代 . . . 本文を読む
『白鳥の歌』 ☆☆☆★
刑事コロンボ第24作目のエピソード。今回はカントリー歌手が自分の奥さんとコーラス隊の娘を殺害する。犯人役はカントリー界の大御所、ジョニー・キャッシュ。当然ながら、今回のエピソードは彼の歌声で全篇彩られている。ジョニー・キャッシュ・ファンは必見である。
『刑事コロンボ完全捜査記録』によれば、このエピソードは『別れのワイン』の発展型として構想されたという。つまり、コ . . . 本文を読む
『気狂いピエロ』 ジャン・リュック・ゴダール ☆☆☆☆
ゴダール映画は以前『10ミニッツ・オールダー』の中の「時間の闇の中で」を観て、他の映画監督と全然違うその映像センスと発想に度肝を抜かれた記憶があるが、長編映画をちゃんと観たことがなかった。というわけで今回、名作と言われる『気狂いピエロ』をブルーレイで観たわけだが、一回目の鑑賞では「何だこりゃ?」と思い、二回目の鑑賞でううむと唸った。や . . . 本文を読む
『新宿鮫』 大沢在昌 ☆☆☆☆
新宿鮫シリーズ第一作目を再読。やはり面白い。その後のシリーズ作品を色々読んでまたこの原点を読み直してみると、当然のことながら主人公・鮫島刑事の特異なキャラクターが物語の中心になっていて、それが逆に新鮮だ。二作目以降は鮫島以外の誰か(あるいは何か)がメインで、鮫島は狂言回しの位置付けにあるものも多い。
では鮫島の特異なキャラとは何か。これが本シリーズ大成功 . . . 本文を読む
『シングルス』 フリッパーズ・ギター ☆☆☆☆★
フリッパーズ・ギターのシングル集。コアなファンの中には、これはアーティストの意向で出されたものではない、B面が完全収録されていない、などの理由で批判する人もいるようだけれども、特にコアでもない私のようなレスナーにとっては非常に魅力あるアルバムである。フリッパーズ・ギターをとりあえず聴いてみたいという人への入門篇としても絶好だ。三枚のオリジナ . . . 本文を読む
『いつも手遅れ』 アントニオ・タブッキ ☆☆☆☆☆
去年の秋に買ったアントニオ・タブッキの『いつも手遅れ』を、間を空けながらこれまでに三回読んだが、読むたびに少しずつ印象が変化してきた。最初読んだ時は、これまでのタブッキとはずいぶん違うなと思ったが、三度目に読んだ後には、これまでと何も変わっていないな、と思うようになった。最初にずいぶん違うと思った理由は、以前のようなバロック的着想が陰をひ . . . 本文を読む
『座頭市千両首』 池広一夫監督 ☆★
シリーズ6作目。まだ初期の作品なので期待したが、これは結構な駄作である。脚本があまりにもテキトーだ。座頭市の居合い斬りを連続で見せるタイトルバックから嫌な予感がする。あれがウリなのは分かるが、だからこそ安売りしちゃいかんだろう。
物語が始まり、自分が斬った男の墓参りをする市。死者にさかんに詫びている。回想シーンで、男を斬った時の映像が流れる。どんな . . . 本文を読む
『刑事コロンボ カリブ海殺人事件』 W・リンク/R・レビンソン ☆☆☆★
前にも書いた通り私はコロンボのノヴェライズ本を多数所有しているが、活字のコロンボには映像化されていない幻のエピソードというものがいくつかあり、私はその中の『死のクリスマス』と『カリブ海殺人事件』を所有している。『死のクリスマス』はまあボツになったのも無理はないと思われるイマイチなエピソードだが、『カリブ海殺人事件』は . . . 本文を読む