アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

ひかりのまち

2014-02-26 20:37:48 | 映画
『ひかりのまち』 マイケル・ウィンターボトム監督   ☆☆☆  マイケル・ナイマンの切なく甘美な音楽に全編を彩られたイギリス映画。ナイマンの音楽を鑑賞するための映画という評すらあるようだが、ナイマンの音楽は私も大好きなので、英語版DVDを買って鑑賞した。  ブルーレイがなかったのでDVDを買ったが、観てみるとわざと粒子が粗い手ブレ映像で撮られている。これならDVDで充分だ。ホームビデオで撮った . . . 本文を読む

忍法剣士伝

2014-02-24 21:42:20 | 
『忍法剣士伝』 山田風太郎   ☆☆☆☆  山田風太郎の忍法帖シリーズの一つ、『忍法剣士伝』を再読。これは忍法帖の中でも18作目とかなり後期、しかも作者本人の評価はイマイチということで比較的マイナーな一篇だと思う。内容的にも王道というより奇をてらったキワモノ感が強く、従って忍法帖の初心者にはあまりお薦めできないが、忍法帖をあれこれ読んでから読むとなかなか味が深い一作だ。私は結構好きである。忍法帖 . . . 本文を読む

Let The Right One In

2014-02-22 11:18:59 | 映画
『Let The Right One In』 Tomas Alfredson監督   ☆☆☆☆  スウェーデン製の抒情的なヴァンパイア映画、『Let The Right One In』を観た。邦題は『ぼくのエリ 200歳の少女』という、まるでTVのワイドショーか週刊誌の煽情記事並みに悪趣味なもので、これを付けたあまりにもセンスが悪い配給会社の担当者はただちに職を変えた方が良いと思われるが、この邦 . . . 本文を読む

小僧の神様/城の崎にて

2014-02-19 23:59:11 | 
『小僧の神様/城の崎にて』 志賀直哉   ☆☆☆☆  「小説の神様」とも言われる志賀直哉を、実はこれまでちゃんと読んだことがなかった。というわけで短編集を買ったのだが、『暗夜行路』という代表的長編のタイトルからしていかにも暗いイメージを持っていたけれども、読んでみると別に暗くなく、むしろ飄々と、のほほんとしている。文章もどれほどスタイリッシュかと思ったら、逆に素朴である。飾り気がない。とにかく感 . . . 本文を読む

フェアウェイ

2014-02-17 14:05:32 | 音楽
『フェアウェイ』 オフコース   ☆☆☆★  オフコース6枚目のアルバム。小田と鈴木二人時代最後のアルバムで、この次の『Three and Two』から正式に5人編成、サウンドもガラッと変わって西海岸ロックバンド風になる。このアルバムまでは二人の職人的ミュージシャンが密室にこもって多重録音を駆使し、コツコツと室内工芸的に作り上げたという感じが強くするが、同時に、前作『Junktion』までのフォ . . . 本文を読む

勝者に報酬はない・キリマンジャロの雪

2014-02-15 00:17:20 | 
『勝者に報酬はない・キリマンジャロの雪 - ヘミングウェイ全短編(2)』 アーネスト・ヘミングウェイ   ☆☆☆☆  ヘミングウェイの新訳短編集が出ているということで、ちょっと気になって入手した。「キリマンジャロの雪」と「フランシス・マコーマーの短い幸福な生涯」をまた読みたかったこともあり、この二篇が一緒に収録されていてお得感のあるこの二巻目にしたのだが、これはヘミングウェイのキーウェスト時代の . . . 本文を読む

ブルジョワジーの秘かな愉しみ

2014-02-12 20:53:11 | 映画
『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』 ルイス・ブニュエル   ☆☆☆☆  ブニュエル後期、『哀しみのトリスターナ』と『自由の幻想』の間に撮られた映画である。久しぶりに観た。  またしても堂々のアホ映画である。『自由の幻想』と同じくコントっぽい感じもあるが、あれほどストレートなコントではなく、もう少しややこしく屈折したストラクチャを持っている。主要登場人物は外交官など裕福で社会的地位も高いブルジョワ . . . 本文を読む

覘き小平次

2014-02-10 21:52:41 | 
『覘き小平次』 京極夏彦   ☆☆☆★  これまで読んだ京極夏彦の小説の中では『嗤う伊右衛門』が特に好きである。というわけで、本書は『嗤う伊右衛門』に続く有名な怪談を再構成するシリーズ第二弾ということで手に取った。が、私は浅学にして本書の下敷きである山東京伝の「復讐奇談安積沼」という怪談を知らない。だからどこをどうひねってあるのか分からない。哀号。  小平次という役者が主人公だが、この小平次、 . . . 本文を読む

波の塔(映画)

2014-02-07 22:29:59 | 映画
『波の塔』 中村登監督   ☆☆  松本清張原作映画。これも『悪の奔流』と一緒にDVDを購入した。先に原作を読んでいたので、映画はどんな感じになってるんだろうと興味を惹かれたのである。キャストはヒロインの人妻に有馬稲子、若き検事に津川雅彦と、なかなか(私にとっては)意外性のあるキャスティング。後には色悪的イメージが強くなる津川雅彦だが、まだ若いこの頃は清潔感のある検事もなかなか似合っている。 . . . 本文を読む

スーパーマンII リチャード・ドナーCUT

2014-02-05 21:00:45 | 映画
『スーパーマンII リチャード・ドナーCUT』 リチャード・ドナー監督   ☆☆★  これはクリストファー・リーヴの『スーパーマンII 冒険篇』の劇場公開バージョンではなく、リチャード・ドナー・カットと呼ばれる別バージョンである。もともと『スーパーマンII』は一作目と同じくリチャード・ドナー監督のもと制作が進められていたが、予算の都合など色んな事情によって監督が中途降板し、結果的に劇場公開版はリ . . . 本文を読む