アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

SPACE BATTLESHIP ヤマト

2011-07-29 20:18:34 | 映画
『SPACE BATTLESHIP ヤマト』 山崎貴監督   ☆☆☆  レンタルDVDで鑑賞。宇宙戦艦ヤマトの実写版である。すごい企画だ。しかも主演が木村拓哉。最初聞いた時は冗談かと思った。  私ももちろんTVアニメは観たことある世代だが、別にファンというわけでもなく、最後がどうなったのかも知らない。だから思い入れはまったくない。面白ければそれでいい、というスタンスで観た。で、まず思ったのは、 . . . 本文を読む

予告された殺人の記録

2011-07-27 22:55:26 | 
『予告された殺人の記録』 ガブリエル・ガルシア=マルケス   ☆☆☆☆☆  再読。疑問の余地なく、マルケス作品中最良のものの一つである。マルケスはこれを自身の最高傑作と呼んでいるらしいが、そう言われてもまったく違和感はない。不朽の名作である。  『百年の孤独』のあのめくるめく神話的な語り、途方もない幻想的な事件が頻出するマジックリアリズムとは明らかに異質な、ジャーナリスティックで端正な語り口が . . . 本文を読む

ロンドンの傘

2011-07-25 21:52:45 | 刑事コロンボ
『ロンドンの傘』   ☆☆☆  世界中のコロンボ・ファンにとって、ピーター・フォーク氏の訃報はまぎれもなく一つの時代の終焉を告げるものだった。少なくとも私にとってはそうだ。はっきり言って私は、コロンボ好きでは人後に落ちない自信がある。三谷幸喜は有名なコロンボ・ファンで、プロデューサーとコロンボの薀蓄勝負をして勝ち『古畑任三郎』をやらせてもらえることになったそうだが、その勝負にぜひ私も参加したかっ . . . 本文を読む

衣服の発明

2011-07-23 22:50:05 | 創作
          衣服の発明  8月の最後の二週間、私は避暑地のホテルにいた。それは木造のロッジ風ホテルで、風が吹き抜ける楡と白樺の林の中にあり、車回しから細い道が緩やかな曲線を描いて県道まで続いている。林は遠くまで広がっている。空気は冷たい。夕刻になればベランダでビールを飲みながら、山の向こうに沈む夕日と透き通る橙色に染まった空を眺める。私はその滞在が気に入った。サンダルだけ履いてのんびり歩 . . . 本文を読む

春にして君を離れ

2011-07-21 23:15:36 | 
『春にして君を離れ』 アガサ・クリスティー   ☆☆☆☆  再読。アガサ・クリスティーがメアリ・ウェストマコット名義で発表した普通小説の一作目である。つまり、これはいわゆるミステリではなく、殺人事件は起きない。とはいってもそこはミステリの女王クリスティー、きわめてミステリ的な作品である。広義のミステリと言っていいと思う。非常にユニークな小説で、これに似た小説はちょっと他に思いつかない。  主人 . . . 本文を読む

女系家族

2011-07-19 19:30:40 | 映画
『女系家族』 三隅研次監督   ☆☆☆☆☆  再見。面白い。面白いよお、この映画は。  山崎豊子原作である。人間の欲の恐ろしさを描くのはいつもの通りだが、『華麗なる一族』がオヤジたちの地位と権力をめぐる闘争だったのに対し、こっちはもっと直接的に金、財産をめぐる女たちの戦いである。よりえげつなく、生々しい。オヤジくささはほとんどなく、京都の大店が舞台ということで華やかさもある。女たちの争いという . . . 本文を読む

イワン・イリッチの死

2011-07-17 17:36:40 | 
『イワン・イリッチの死』 トルストイ   ☆☆☆☆☆  トルストイの中篇を岩波文庫で読了。これは『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』よりあとの作品だが、大傑作『アンナ・カレーニナ』を書き上げたあと人生の無意味や迫り来る死の不安によって深刻な精神的危機に見舞われたトルストイは、10年近く創作の筆を折ってしまった。そしてさまざまな葛藤や新たな信仰の力でようやくそれを乗り越え、再び筆を取り、書かれた小 . . . 本文を読む

Words

2011-07-15 19:44:51 | 音楽
『Words』 F. R. David   ☆☆☆☆  F. R. David。最近の若い皆様はこの人をご存知だろうか。1980年代に「Words」という世界的なヒットを放ったフランスのシンガー・ソングライターである。その後名前を聞かないので一発屋のイメージがあるが、音楽活動は細々と続けているらしい。残念ながら私はその後の活動をフォローしていないので、知っているのはこの「Words」というアルバ . . . 本文を読む

殺しの挽歌

2011-07-13 21:59:53 | 
『殺しの挽歌』 ジャン=パトリック・マンシェット   ☆☆☆☆  再読。クールなノワールである。マンシェットはいつもそうだが。  今回の主人公は殺し屋ではなく、普通の会社員である。エリート管理職ジョルジュ・ジェルフォーは交通事故らしき状況である男を助け、それによって事情は何も分からないまま二人組の殺し屋から狙われるようになる。ジョルジュは妻と子供のもとを去って放浪し、殺し屋たちと殺し合いを展開 . . . 本文を読む

華麗なる一族(映画)

2011-07-11 19:31:37 | 映画
『華麗なる一族』 山本薩夫監督   ☆☆☆☆  DVDで再見。  いやー、濃い。とにかく濃い。脂ぎっている。華麗なる一族、正しくはどろどろの一族である。とにかく社会的地位と権力がすべてである世界における野望、欲望、騙し、裏切り、猜疑、おためごかし、卑屈、虚栄のすべてが、3時間半という長尺の中にげっぷが出るほど詰め込まれている。そしてつーんとくるほどの昭和の香り。間違いなく面白い。傑作です。 . . . 本文を読む