アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

マドンナ

2005-12-30 21:07:43 | 
『マドンナ』 奥田 英朗   ☆☆  文庫になっているのを見かけて買ってきた。奥田英朗は『最悪』や『イン・ザ・プール』『空中ブランコ』は好きなのだが、本書は正直言ってあまり面白くなかった。まあ、ニ、三回ちらっと笑える程度である。  40代の会社員の話で、部下の20代の女の子を好きになったり、息子にダンサーになると言い出されて困ったり、会社で女性上司の下になって戸惑ったりする。ありがちではあるが . . . 本文を読む

セルラー

2005-12-29 01:14:11 | 映画
『セルラー』 デヴィッド・エリス監督   ☆☆☆★  単純にハラハラしてスカッとする映画を観たくなり、DVDを買ってきて鑑賞。非常にテンポが良く、あの手この手で観客を楽しませようとする映画である。とにかくこの映画のポイントはセルラー(携帯電話)。この小道具が最大限に活かされている。  いきなりキム・ベイシンガーが誘拐される。理由は分からない。屋根裏部屋に閉じ込められた彼女は、壊れた電話のケーブ . . . 本文を読む

少女の髪どめ

2005-12-26 18:15:40 | 映画
『少女の髪どめ』 マジッド・マジディ監督   ☆☆☆☆  『酔っぱらった馬の時間』に続いてイラン映画を鑑賞。原題は『バラン(Baran)』で、これは少女の名前であると同時に「雨」を意味するそうだ。  まず第一印象は、映像がとてもきれい。イラン映画のドキュメンタリーっぽさはあまり感じられず、ヨーロッパ映画風のとても鮮やかな映像だった。前半の主な舞台は建築現場なのだが、それでも雪が降っていたり雨が . . . 本文を読む

万華鏡

2005-12-24 11:18:10 | 音楽
『万華鏡』 奥村愛子   ☆☆☆  小島麻由美を聴いて最近の「昭和歌謡」風アーティストに興味を持ち、このCDを買ってみた。小島麻由美がジャズや童謡のテイストがあるの対し、この奥村愛子はよりストレートな「昭和歌謡」である。曲によってはビッグバンド風だったりするが、アレンジから曲調までいかにも昭和歌謡だなあ、という曲もある。『冬の光』、『フリージア』なんか特にそうだ。タイトルチューンの『万華鏡』はフ . . . 本文を読む

永遠の仔

2005-12-22 00:07:04 | 
『永遠の仔』 天童 荒太   ☆☆☆★  本日読了。上下巻とも分厚くてかなり読み応えがあった。子供の虐待という重いテーマを持ったある意味やりきれなさの漂う小説だが、ミステリ的な構成と先の読めない展開でリーダビリティは高い。  物語は1997年と1979年、過去と現在の二本立てで進んでいく。子供の頃児童精神科の病院で一緒だった男女三人(女一人男二人)が一七年ぶりに再会してから始まる物語が現在、そ . . . 本文を読む

酔っぱらった馬の時間

2005-12-19 22:58:33 | 映画
『酔っぱらった馬の時間』 バフマン・ゴバディ監督   ☆☆☆☆  日本版DVDにて鑑賞。このゴバディ監督は『友だちのうちはどこ? 』などを作ったキアロスタミの助監督をしていた人らしく、これはその長編第1作。  イラン映画というのはキアロスタミもそうだが、素人を使ってドキュメンタリータッチで描く手法が多い。本作もその例に漏れず、どこから演技でどこまでドキュメンタリーなのか分からないような作りの映 . . . 本文を読む

猫町

2005-12-18 10:04:51 | 
『猫町』 萩原朔太郎   ☆☆☆☆  東京から北陸の温泉に出かけた「私」は、ふとしたことから、「繁華な美しい町」に足を踏みいれる。すると、そこに突如人間の姿をした猫の大集団が……。  という惹句を読んで私が想像したのは、日影丈吉の『猫の泉』のような話だったが、読んでみるとだいぶ違っていた。『猫の泉』、好きなんだよなあ~。  ヨンの町に猫の写真を撮りに行った「私」が不思議な経験をする『猫の泉』 . . . 本文を読む

二つの顔

2005-12-16 22:41:12 | 刑事コロンボ
『二つの顔』 ☆☆  久々にコロンボのDVDを引っ張り出して観た。これはかなり初期のエピソードだが、それにしては大して面白くない話だ。  始まりは悪くない。舞台は富豪の豪邸、主人の結婚前夜。結婚相手は孫といってもいいほどの若い娘、屋敷にいるのは弁護士、いがみあっている双子の甥、そして長年勤めている家政婦。いかにもこれから一波乱ありそうな雰囲気が満ちていて、黄金期の本格ミステリを思わせる。   . . . 本文を読む

Strangers

2005-12-15 23:50:15 | 音楽
『Strangers』 Keane   ☆☆☆☆  Rushの『R30』と同日発売だったらしく、店頭に並んでいたので買ってきた。ライブ映像と、メンバー達のツアー、リハーサル、インタビューなどのドキュメンタリーで構成されている。  ライブ映像は特定のコンサートをまるごと収録したものではなく、あっちこっちの映像を収録してある。一曲ずつこまぎれになっているが、これが意外といい。映像、サウンド、会場の . . . 本文を読む

独逸怪奇小説集成

2005-12-13 23:35:53 | 
『独逸怪奇小説集成』 竹内節編、前川道介訳   ☆☆☆☆  随分と前に買った本だが、分厚くて重いので持ち歩けず、時々思い出したようにちびちび読んでいたせいで時間がかかってしまった。ドイツ、オーストリアあたりの作家の怪奇小説を集めたアンソロジーである。選りすぐりの逸品が二十八篇も入っているすぐれものだが、その分値段も高い。五千円以上した。  フランスの作家の幻想系、怪奇小説系のアンソロジーもいく . . . 本文を読む