アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

わるいやつら

2008-08-30 23:33:58 | 
『わるいやつら(上・下)』 松本清張   ☆☆☆☆  久し振りに松本清張を読んだ。Amazonのカスタマー・レビューでイマイチの評価だったので期待していなかったが、思ったより面白かった。こんなこと言うと馬鹿にされるかも知れないが、正直言って名作の誉れ高い『砂の器』より愉しめた。私は『砂の器』のレビューで、清張ミステリでは謎解きよりドツボにはまっていく犯人の心理を描いたものに魅力を感じるみたいなこ . . . 本文を読む

親密すぎるうちあけ話

2008-08-28 13:47:01 | 映画
『親密すぎるうちあけ話』 パトリス・ルコント監督   ☆☆☆★  日本版DVDで鑑賞。久し振りにルコント監督の映画を観たが、なかなか良かった。『髪結いの亭主』や『タンゴ』ほどの鮮烈さはないが、ゆったりと円熟したタッチで、不安と官能をかき混ぜたような独特のムードを愉しむことができた。  女が精神分析医の部屋と間違えて税理士の部屋に入り、プライヴェートな問題を打ち明ける。この発想が面白い。冒頭の薄 . . . 本文を読む

無実

2008-08-26 22:22:57 | 
『無実(上・下)』   ジョン・グリシャム   ☆☆☆☆★  一気読み読了。面白い。読んでいる間先が気になってしかたがなかった。冤罪ものである。しかも実話。  エイダというアメリカの田舎町で若い女性が殺される。警察はなかなか容疑者を絞り込めない。やがて彼らは元プロ野球選手、被害者のアパートの近所で酒のんだり麻薬やったりして奇行で知られるロン・ウィリアムスンとその友人、デニス・フリッツに目をつけ . . . 本文を読む

The Dark Knight

2008-08-24 17:29:00 | 映画
『The Dark Knight』 Christopher Nolan監督   ☆☆☆☆☆  ただいま絶賛上映中のバットマン最新作、『ダークナイト』を観てきた。例によってニュージャージーの映画館でど真ん中の特等席だ。  前作の『バットマン・ビギンズ』はあんまり面白いと思えず、これだったらティム・バートンの『バットマン』の方が好きだなと思ったものだが、この『ダークナイト』も前作のリアリズム路線を . . . 本文を読む

四畳半神話大系

2008-08-22 22:55:59 | 
『四畳半神話大系』 森見登美彦   ☆☆★  ニュージャージーの旭屋書店で見かけ、面白そうだなと思ってふと買ってしまった。予想よりつまらなかった。  大学生が主人公の青春小説である。「である」を多用した擬古調のふざけた文体が特徴的である。要するに「ばら色のキャンパスライフ」に憧れつつもわびしい四畳半生活から抜け出せない若者の物語だ。小津という、不気味なルックスで人を嵌めるのに生きがいを感じてい . . . 本文を読む

Meet the Parents

2008-08-20 20:48:00 | 映画
『Meet the Parents』 Jay Roach監督   ☆☆☆★  DVDで再見。いかにもなハリウッド式コメディだが結構好きだ。ベン・スティーラーの嫌味のなさがいい。適当にいい男で、適当にアホである。くどくない。しかも好青年だ。  その好青年がどんどんドツボにはまって行く。最初は笑って見ていられるが、プールのバレーボールで花嫁に怪我をさせるあたりからかわいそうで見ていられなくなってく . . . 本文を読む

震度0

2008-08-18 23:50:36 | 
『震度0』 横山秀夫   ☆☆☆  横山秀夫の文庫が出ていたので購入。面白さとしてはまあまあレベルかな。飽かずに読めるがさほどの感銘はなく、ミステリとしてはシャープさに欠ける。本書の読みどころはひたすらN県警内部のパワーゲーム、これに尽きる。が、パワーゲームといってもスケールは小さい。  震災は単なる背景でしかない。震災の朝、真面目で信望篤かった警務課長・不破が失踪する。こりゃえらいことになっ . . . 本文を読む

東京ゴッドファーザーズ

2008-08-16 20:29:25 | アニメ
『東京ゴッドファーザーズ』 今敏監督   ☆☆☆☆  英語版DVDを買ってきて鑑賞。今敏監督のアニメーションを観たのは初めて。『パプリカ』の監督さんで、『パプリカ』を観ようかと思ったのだがより評判が良さそうだったのでこっちにした。  ホームレスの三人(おじさん、オカマ、家出少女)の三人がクリスマス・イヴに捨てられた赤ちゃんを拾い、母親を探して東京中をさまようという話。いわゆるハートウォーミング . . . 本文を読む

冷血

2008-08-14 22:33:42 | 
『冷血』 トルーマン・カポーティ   ☆☆☆☆☆  名作の誉れ高いカポーティの『冷血』を読了。『ティファニーで朝食を』を読んで感動したのでこっちにも手を伸ばしてみた。  実際に起きた殺人事件を緻密に取材して書かれたノンフィクション・ノヴェルなわけだが、まずはこのリーダビリティの高さに驚いた。先が気になって本を置けなくなってしまう。そこいらの娯楽小説よりよっぽど面白い。面白いなんていうと不謹慎だ . . . 本文を読む

恐怖の報酬

2008-08-12 20:50:59 | 映画
『恐怖の報酬』 アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督   ☆☆☆★  日本版DVDで鑑賞。モノクロ映画。いかにも暑苦しい肉体労働者系のジャケット写真が全然らしくないが、これはフランス映画である。  ニトログリセリンをトラックに載せて運ぶ。要はこれだけの話である。事情があって特殊装備はない、従って衝撃を与えれば即爆発する。文字通り命がけだ。石油会社の火災を消すためニトロを運ぶことになり、南米の町で . . . 本文を読む