『天使の囀り』 貴志祐介 ☆☆☆☆
再読。最初読んだ時は二度と読むまいと思ったのだが、つい読み返してしまった。でもさすがに二度目となると心の準備ができているせいか、最初読んだ時ほどおぞましくはなかった。
はっきり言って、メチャメチャ気持ち悪い小説である。美しげな表紙やタイトルに騙されてはいけない。私はこれ以上気持ち悪い小説は読んだことがない。そもそもキモイ系は苦手なのである。クーンツや . . . 本文を読む
『二枚のドガの絵』 ☆☆☆
コロンボ・シリーズの中でも人気の高いエピソード。その理由は何と言ってもあの鮮やかな結末にある。私も子供の頃最初に観た時は、派手な決め手に「おおっ!」と興奮したものだ。しかし何度も見返しているとちょっと雑というか、奥行きが感じられないエピソードのように思えてくる。だから個人的にはさほど高評価ではない。
まあざっと説明すると、美術評論家のデイル・キングストンは恋人の . . . 本文を読む
『ヘンリー八世の六人の妻』 リック・ウェイクマン ☆☆☆☆★
イエスのキーボード奏者、リック・ウェイクマンの初ソロ・アルバム。1973年発表。イエスの方はちょうど『危機』発表直後で、要するに最高最大の音楽的ピークを迎えていた時期だ。同じ頃に発表され、ジョン・アンダーソンを除くすべてのイエスのメンバーも参加したこのリックのソロも悪かろうはずがなく、リックの華麗な才能をこれでもかと見せつける充 . . . 本文を読む
『蜜蜂職人』 マクサンス・フェルミーヌ ☆☆☆☆
再読。本書はフランス人作家の幻想的な小説で、仏のミュラ賞、イタリアのドゥカ賞を受賞したそうだ。
幻想小説といっても奇怪さや悪夢性を志向するバロック的な小説ではなく、フランス人らしい端整で詩的な、抒情的作品である。帯には「太陽と養蜂によって紡がれる、そこはかとなく美しい物語(レシ)」とあるが、このレシという言葉はこの小説の雰囲気をよく伝え . . . 本文を読む
『萌の朱雀』 河瀬直美監督 ☆☆☆☆☆
ビデオでも持っているが、DVDが出たのを知ってあわてて購入。絶対すぐに製造中止になるに決まっている。ああ気がついて良かった。カンヌでカメラドールを最年少で受賞した作品だが、それも納得の素晴らしい映画である。
ストーリーはシンプル。奈良県の山の中、電車も通っていない過疎の村で暮らす一家の静謐な日々。村人達は徐々にどこかへ去っていく。父が死ぬ。青年は . . . 本文を読む
『慟哭』 貫井徳郎 ☆☆☆
貫井徳郎のデビュー作を再読。
これはあっと驚く結末がウリのミステリである。ジャンルでいうと叙述トリックものということになり、つまり作者が読者に対してトリックを仕掛けるタイプのミステリだ。ややこしい謎をあーでもないこーでもないと名探偵が推理し解き明かすというシロモノではない。だからあっと驚けるのは初読の時であって、そんなものを再読してレビューするなというご意見 . . . 本文を読む
『Moving Pictures』 Rush ☆☆☆☆☆
カナダのロック・トリオ、ラッシュ中期の最高傑作、そして一番売れたアルバムがこれ、『Moving Pictures』である。
ラッシュはツェッペリンのコピーから始まり、ギタートリオの癖してプログレ的な大作主義に傾倒し、『2112』や『神々の戦い』をリリースした。これが初期。『神々の戦い』で大作主義に疲れ、『Permanent Wa . . . 本文を読む
『男はつらいよ 望郷篇』 山田洋次監督 ☆☆☆☆
シリーズ5作目。3作目と4作目は監督が違うので、山田洋次監督の『男はつらいよ』としては『男はつらいよ』『続・男はつらいよ』に続く三つ目ということになる。
本作の目玉は、マドンナ(長山藍子)、マドンナの母(杉山とく子)、マドンナの恋人(井川比佐志)が、TV版『男はつらいよ』のさくら、おばちゃん、博の役者達ということである。つまりTV版と映 . . . 本文を読む
『火車』 宮部みゆき ☆☆☆☆☆
再読。何度読んでも面白く、感慨深い。やはり宮部みゆきの最高傑作はこれだろう。
ミステリ好きでこの小説を読んでない人はあんまりいないと思うが、野暮を承知で説明すると、本作のテーマは多重債務者である。クレジットカード破産とか一昔前のマイホーム・ブームがもたらした借金地獄とか、そういう題材をうまく料理してある。かなり取材もしてあるようだが、宮部みゆき本人の弁 . . . 本文を読む
『JOY ~ TATSURO YAMASHITA LIVE』 山下達郎 ☆☆☆☆☆
山下達郎のライブ。達郎のライブはこれと『IT'S A POPPIN' TIME』の二つあるが、どちらも甲乙つけがたい素晴らしいライブ音源である。
『IT'S A POPPIN' TIME』の方は初期で、まだ『RIDE ON TIME』でブレークする前、だから曲目は渋く、いわゆるヒット・チューンは収録され . . . 本文を読む