『アイデンティティー』 ジェームズ・マンゴールド監督 ☆☆☆★
レンタルビデオで鑑賞。映画館で観たかったとは思わないが、ビデオで観るには結構面白かった。トリッキーなプロットで見せるサスペンス映画で、高尚さは微塵もない、あざとさとケレン味たっぷりの娯楽映画である。
豪雨の夜、モーテルで一夜を過ごす羽目になった人々。女優、運転手、元コールガール、若いカップル、事故にあった家族連れ、警官と護 . . . 本文を読む
『踏みはずし』 ミシェル・リオ ☆☆☆☆
フランスの作家、ミシェル・リオの小説を再読。短いのですぐ読めるが、何度読んでもピンと張った静謐感と瞑想的な雰囲気が心地よい。フランス映画を観ているような気分になる。と言っても、ラブストーリーではない。ハードボイルドの殺し屋小説である。ジャン・パトリック・マンシェットの小説や、北野武の映画に似ている。
しかし、ハードボイルド小説としてはかなり変わ . . . 本文を読む
『コンプリート・ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ』 ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ ☆☆☆☆☆
1968年にリリースされた、ソフト・ロックの大傑作アルバム。ロジャー・ニコルズはカーペンターズなんかにも曲を提供していた有名なソングライターだが、どういうわけかこのアルバムはまったく注目されることもなく、ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ . . . 本文を読む
『白い巨搭(1~5)』 山崎豊子 ☆☆☆☆☆
以前、唐沢寿明主演でやったTVドラマ『白い巨塔』にはハマり、その時に原作から昔の田宮版『白い巨塔』、映画『白い巨塔』まで全部読んだり観たりした。とにかくメチャメチャ面白いのだ。
ストーリーを知らない人はあまりいないと思うが、優秀だが野心的な外科医・財前五郎が権謀術数を尽くしつつ大学病院の中でのし上がっていく、その野望と破滅の壮絶なる人間ドラ . . . 本文を読む
『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』 アラン・パーカー監督 ☆☆☆☆
レンタルビデオで鑑賞。この映画は中嶋博行の『罪と罰、だが償いはどこに?』という本の中で、著者が大推薦している。ちなみにこれは犯罪と刑罰の現状、そして提案について語った本だが、かなり面白い。この映画は死刑廃止論に絡めて紹介してある。
というわけで、死刑廃止論が重要なテーマとなっている。主人公、デビッド・ゲイル(ケビン・ス . . . 本文を読む
『石の葬式』 パノス・カルネジス ☆☆☆☆★
ギリシャの作家の短篇集。1967年生まれの現役バリバリ、というかデビューしたての新人作家さんである。この『石の葬式』が2002年のデビュー作らしいが、すごくいい。
タイトルや装丁の雰囲気から地味で手堅いリアリズムの作家かと思ったら、全然違っていた。ガルシア・マルケスに似ている。前近代的な村という共同体が舞台になっていること、人々の行動がデフ . . . 本文を読む
『さだまさし ベスト デビュー30周年記念リマスター盤』 さだまさし ☆☆☆
さだまさしは昔ラジオで聴いた『線香花火』という曲が好きで、『帰去来』というCDを買ったことがある。あと『セロ弾きのゴーシュ』とか、ああいう曲は結構好きだ。だけど普段はほとんど聴かない。Webで見かけてふとこのベスト盤を衝動買いしたのは、『親父の一番長い日』という曲をちゃんと聴いてみたかったからだ。
この人の音 . . . 本文を読む
『狼花 新宿鮫IX』 大沢在昌 ☆☆☆
『新宿鮫』シリーズ九作目。本屋で見かけて買って来て一日で読了した。ハードボイルド系のミステリはあんまり読まないが、『新宿鮫』シリーズは好きで全部読んでいる。
さて、今回のストーリーは大体こんな感じ。ナイジェリア人がドラッグ絡みで刺された事件を捜査する鮫島は、特定の暴力団に依存しない特殊な盗品取引市場=泥棒市場の存在を嗅ぎつける。その組織の背後に、 . . . 本文を読む
『渚にて』 スタンリー・クレイマー監督 ☆☆☆☆
DVDを購入して鑑賞。英語字幕が付いていないのが痛い。やっぱり細かい会話部分では字幕が欲しくなる。
パッケージは色つきだが映画はモノクロである。原作は有名な名作SFで、読んだことがある。派手じゃないが、じんわり来るようないい小説だった。この映画もそういう原作のテイストを生かしてあって、静かで淡々としながら熱いメッセージがこもった作品だ。 . . . 本文を読む
『わが悲しき娼婦たちの思い出』 ガブリエル・ガルシア=マルケス ☆☆☆☆
いやー、久々のマルケスの新作である。飛びつくように買い、一週間ほど手を触れずにまわりをグルグル回って楽しみ、おもむろに手にとってむさぼるように読了した。もちろん良かった。しかしちょっと期待が大き過ぎたか、満喫したとまではいかず、多少の物足りなさが残った。
『百年の孤独』や『族長の秋』ほど濃密で重厚な小説ではない。 . . . 本文を読む