アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

家族シアター

2018-10-31 22:37:55 | 
『家族シアター』 辻村深月   ☆☆☆☆  アンソロジー『バタフライ和文タイプ事務所』収録の「仁志野町の泥棒」がえもいわれぬ味わいがあって印象に残ったため、辻村深月の短編集を入手。「家族シアター」というタイトル通り、家族内の人間関係が収録作すべてのテーマとなっている。つまりホームドラマであり、普段私が読まないタイプの小説である。すべて人間関係の緊張と緩和によってストーリーが転がり、ドラマが成立す . . . 本文を読む

日本で一番悪い奴ら

2018-10-28 14:56:06 | 映画
『日本で一番悪い奴ら』 白石和彌監督   ☆☆☆☆  日系レンタルビデオのDVDで鑑賞。主演、綾野剛。『怒り』に続いて綾野剛出演作を観たわけだが、もうまったく正反対といってキャラである。繊細で内気なゲイの青年と、チンピラヤクザまがいの悪徳刑事。この人はイケメン的に騒がれている役者さんのようだが、相当幅が広い演技者であることは間違いない。しかも、この映画ではかなりの汚れ役だ。文字通り体当たり演技だ . . . 本文を読む

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。(その2)

2018-10-25 23:38:54 | 
(前回からの続き)  二番目に、数値目標の陥穽。この章は更に啓発的だった。「数値化」や「見える化」はコンサルの常套句であり、私もよく聞く。数値化できないものは測れない、という言葉も聞くが、数値化できないものだってもちろん測れる、とは著者の弁。確かにそうだ、でなければ上司は部下の適性や意欲をどう判断するのだろうか。そして目標を数値化することの最大の問題は、それによって数値に変換できない目標が犠牲に . . . 本文を読む

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。(その1)

2018-10-22 00:19:02 | 
『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』 カレン・フェラン   ☆☆☆☆☆  これも『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』同様、ニュージャージーの紀伊国屋で平積みされているのが目に入り、つい購入してしまった本。普段ビジネス書はほとんど読まない私だが、これはとても面白かった。いつも会社で仕事をしながら漫然と感じている違和感や疑念が、経験豊富なコンサルタントの知見によって明快に整理され、説明され、解き明かさ . . . 本文を読む

A・SO・BO

2018-10-18 00:35:50 | 音楽
『A・SO・BO』 CASIOPEA 3rd   ☆☆☆☆  カシオペアが最近カシオペア3rdという名前で活動再開していることをしばらく前に知り、iTuneでアルバムをダウンロードして聴いてみると、これが思いのほか良い。リズムセクションが替わって以降、かつての針の穴を通すような繊細なビートが失われた気がしてどうしてもテンションが上がらなかったのだが、カシオペア3rdになってから再び気になり始めた . . . 本文を読む

怒り

2018-10-14 23:51:06 | 映画
『怒り』 李相日監督   ☆☆☆  評判がいい映画のようだったので日系レンタルビデオ屋のDVDで鑑賞。結論から言うと、まあまあレベルだった。駄作ではないが、傑作とまでは言えないだろう。最近分かってきたが、日本で評価が高いある種の邦画は私の感性にあんまりフィットせず、自然、点が辛くなってしまう。それはどんな映画かというと、大体において暗く、深刻で(もしくは深刻ぶっていて)、登場人物が頻繁に泣いたり . . . 本文を読む

日本文学100年の名作第3巻1934-1943 三月の第四日曜

2018-10-11 22:34:40 | 
『日本文学100年の名作第3巻1934-1943 三月の第四日曜』 池内紀/松田哲夫/川本三郎・編集   ☆☆☆☆  「日本文学100年の名作」シリーズの第三巻目。前回レビューした『百万円煎餅』から更に時代を遡り、戦争ど真ん中の時代である。収録作は萩原朔太郎「猫町」、武田麟太郎「一の酉」、菊池寛「仇討禁止令」、尾崎一雄「玄関風呂」、石川淳「マルスの歌」、中山義秀「厚物咲」、幸田露伴「幻談」、岡本 . . . 本文を読む

ハッピーエンド

2018-10-08 23:42:34 | 映画
『ハッピーエンド』 ミヒャエル・ハネケ   ☆☆☆☆☆  ハネケ監督の新作を、日本版ブルーレイで鑑賞。いやー面白かった。大傑作。ひとつひとつのシークエンスがいちいち独創的で、かつ美しい。といってもこれは心温まる映画などではまったくなく、辛辣かつブラックな、小説でいえばイアン・マキューアン・タイプの作品である。いわゆるハートウォーミングの対極にある映画だと思っていれば間違いない。  フランスはカ . . . 本文を読む

犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼

2018-10-05 23:42:43 | 
『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼(上・下)』 雫井脩介   ☆☆☆☆☆  ニュージャージーの紀伊国屋で平積みになっていたのを購入。シリーズ前作である『犯人に告ぐ』は2004年の作品だったが、作品世界の中ではあれから半年後という設定になっている。当然ながら、捜査官・巻島が再び主人公。  前回は連続殺人事件だったが、今回の事件は誘拐。しかし、本書の誘拐事件は警察小説でよくあるような誘拐事件とはかなり肌合 . . . 本文を読む

歓待

2018-10-02 21:53:32 | 映画
『歓待』 深田晃司監督   ☆☆☆☆  『淵に立つ』が面白かった為、深田晃司監督の初期作品『歓待』のDVDをアマゾンで入手。これも面白かった。小さな町工場を経営する家族、そこへある日やってくる昔の知り合い、そこで住み込みで働くことになり、家族と一緒に暮らし始める。という具合に、途中まで『淵に立つ』そっくりである。家族構成は再婚した夫婦と夫の連れ子と出戻りの姉、と異なるが、微妙な均衡をはらむ家族と . . . 本文を読む