『Astro Boy』 David Bowers監督 ☆☆
英語版DVDを購入して鑑賞。『鉄腕アトム』のハリウッド版となれば、やはり日本人としては観ないわけにはいかないと思ったのだが、観終わってみるとこれはもうあの『鉄腕アトム』ではない。見事にステレオタイプな、ハリウッド製アニメの一つになってしまっている。
天馬博士が死んだ息子に似せてロボットを作り、最初は可愛がるが、やがてうとましく . . . 本文を読む
『時間のなかの子供』 イアン・マキューアン ☆☆☆☆★
マキューアン1987年の作品を再読。これは『異邦人たちの慰め』の次の作品で、それまで倒錯的、タブー破りがトレードマークだったマキューアンの、社会的広がりがある最初の小説と言われている。つまり『愛の続き』『アムステルダム』『土曜日』あたりに連なる最初のマキューアン流「社会的コンテキスト」小説ということであり、実際実にマキューアンらしい、 . . . 本文を読む
『Live at Ronnie Scott's』 Irakere ☆☆☆☆☆
私の大好きなキューバン・ジャズのバンド、イラケレのライブ盤。最近購入した。イラケレのライブはもともと『!Afrocubanismo Live!』と『Legendary/Exuberancia』の二つを持っていて、ずっと『!Afrocubanismo Live!』がフェイバリットだった。とにかく強力でごきげんな演奏 . . . 本文を読む
『ザ・スタンド(上・下)』 スティーヴン・キング ☆☆☆★
再読。長い。とにかく長い。
これは人によってはキングの最高傑作とも言う超大作で、書かれたのは『シャイニング』『デッド・ゾーン』の頃。飛ぶ鳥を落とす勢いでベストセラーを連発していた時期で、その勢いみたいなものは確かに伝わってくる。話のスケールもでかく、登場人物も多く、とにかく細かく書き込むというキングの力技が行き着くところまで行 . . . 本文を読む
『攻撃命令』 ☆☆
旧シリーズ44作目にして、最後から二番目のエピソードである。そして『美食の報酬』に続き、またしても最後に犯人がコロンボを殺そうとするエピソードでもある。
犯人が刑事であるコロンボを最初の犯行と同じ手口で殺そうとすることのばかばかしさは『美食の報酬』のところで散々書いたので、繰り返さない。当然本作もまた駄作ということになるが、『美食の報酬』よりはまだいい。なよなよして . . . 本文を読む
『望楼館追想』 エドワード・ケアリー ☆☆☆☆
イギリス人作家のデビュー作を再読。前読んだ時は斜め読みでほとんどどんな話か覚えていなかった。私はどうもそういうのが多くていけない。なんだか肌が合わない、と思うとすぐに斜め読みモードに入ってしまう。そして後で読み直して目からウロコになったりする。
本書も再読してなかなかいいと思ったクチだが、目からウロコとまではいかなかった。かなり作りこまれ . . . 本文を読む
『ディア・ドクター』 西川美和監督 ☆☆☆☆
DVDで鑑賞。この映画は去年日本に帰った時に新宿の映画館で観たが、時差ボケのせいで途中から爆睡してしまったので、今回やっと全体像が分かった。
一言で言うと、多義性と謎に満ち満ちた映画である。『ゆれる』もそうだったが、この監督はやはりこういう持ち味らしい。主人公は鶴瓶演じる医者、というかニセ医者で、彼の患者とのかかわりや葛藤が描かれるが、たと . . . 本文を読む
『パタゴニア』 ブルース・チャトウィン ☆☆☆☆☆
再読。この作品は池澤夏樹編集の「世界文学全集」にも収められているが、それも納得の名品である。紀行文学の名作と紹介されることが多いようだが、そんな肩書きとかカテゴリーとかはまったく関係なく、純粋に小説として素晴らしい。だから紀行文学に興味がない人にもどんどん読んでいただきたい。
書き出しから惹きつけられる。「私」が子供の頃祖母の家に毛皮 . . . 本文を読む
『シャンドライの恋』 ベルナルド・ベルトルッチ監督 ☆☆☆☆
日本版DVDで鑑賞。ベルトリッチ監督の映画は『ラスト・エンペラー』ぐらいしかちゃんと観たことがないが、ああいう歴史大作に比べてこの作品はシンプルなラブ・ストーリーで、小品という印象である。それから東洋に関心を持つ作家というイメージもあるが、本作においてそのまなざしはアフリカに注がれている。この映画の最重要テーマは欧州とアフリカの . . . 本文を読む
『シティーズ・オブ・ザ・レッド・ナイト』 ウィリアム・S. バロウズ ☆☆☆★
再読。これはバロウズが80年代になって出した本で、カットアップやフォールドインといった実験的手法が後退し、ストーリー性を重視し始めたことになっている時期の作品である。『デッド・ロード』『ウェスタン・ランド』と一緒に80年代三部作とも言われている。
解説でも訳者はさかんに「読みやすい」を連発している。本気でそ . . . 本文を読む