アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

人形つくり

2015-11-29 21:47:10 | 創作
          人形つくり  当時、京の都のはずれに城山又右衛門という裕福な商人が屋敷を構えていた。又右衛門には係累がなく、若くして妻をなくして以来ずっと独り身を通していたため、孤独には慣れ親しんでいたが、とはいえ気難しい性分でもなく、人前では物柔らかな物腰で気をそらさない男だった。私生活では風流を愛し、余暇は趣味に打ち込んで過した。趣味とは人形の蒐集で、古今東西の人形、それも一級品ばかり . . . 本文を読む

Enduring Love

2015-11-27 20:30:21 | 映画
『Enduring Love』 Roger Michell監督   ☆☆☆  イアン・マキューアンの『愛の続き』がダニエル・クレイグ主演で映画化されていると聞いてなんとなく気になっていたのだが、ふとitunesで見かけたのでレンタルで鑑賞した。おそらく単なる小粒なストーカーものになっているんだろうな、と思って観たがそうでもなく、スタイリッシュな映像と音楽でわりと高級感漂う映画になっている。監督は . . . 本文を読む

Deja Vu

2015-11-25 23:47:00 | 音楽
『Deja Vu』 CSN&Y   ☆☆☆☆☆  クロスビー・スティルス・ナッシュ & ヤングの『Deja Vu』は1970年のリリース。今更言うまでもなく、ウッドストックの時代を象徴する名盤である。四人組としてのデビュー・アルバムはこれになるが、ヤング抜きのクロスビー・スティルス & ナッシュでは前年に『クロスビー・スティルス & ナッシュ』を発表しており、当然ながら本作はこのアルバムの発展形 . . . 本文を読む

宇宙のランデヴー

2015-11-23 23:44:58 | 
『宇宙のランデヴー』 アーサー・C・クラーク   ☆☆☆☆  子供の頃に読んだ『宇宙のランデヴー』、改訳決定版を入手して久々に再読。とても面白かった。やはりこれは名作である。  名作であるけれども、同時にこれはとても奇妙な物語である。地球に接近してくる隕石らしき物体を観測すると、実は巨大な人工物であることが分かる。ラーマと名づけられたこの物体の飛来コースを調べた結果、長い年月宇宙を漂流しており . . . 本文を読む

告訴せず

2015-11-21 23:28:08 | 映画
『告訴せず』 堀川弘通監督   ☆☆★  前に原作を読んで映画も観たくなったがDVDが入手不可であるため諦めていた『告訴せず』、アマゾンでDVDが「在庫あり」になっていたので取り寄せた。まあ大した作品ではないだろうなと思いつつも、こんなマイナー作は今入手しないと手に入らなくなるだろうし、松本清張ものはマイナー作に意外と捨てがたい味があったりもするのでダメモトの投資である。  ストーリーは大体原 . . . 本文を読む

売女の人殺し

2015-11-18 19:39:32 | 
『売女の人殺し』 ロベルト・ボラーニョ   ☆☆☆☆  チリの小説家、ボラーニョの短篇集を読了。初ボラーニョである。  初めて読んだのでまだ印象をまとめきれていないが、やはりラテンアメリカ文学に特有の「ノスタルジーや悼みや悔恨が入り混じった主観的な回想」の感覚があって、それが心地よい。マルケスやコルタサルほどではないにしろ文体に詩的な情緒のうねりがあり、またそれ以上に、上質の回想記が持つ一種の . . . 本文を読む

Fahrenheit

2015-11-16 22:14:48 | 音楽
『Fahrenheit』 Toto   ☆☆☆★  TOTO、6枚目のアルバム。前作でリード・ヴォーカリストが替わったと思ったらまた替わり、三代目ヴォーカリストのジョセフ・ウィリアムズとなった。が、前作『Isolation』が従来のTOTOサウンドを踏襲していたのに対し、この『Fahrenheit』ではかなり変化している。端的に言うとハードロック色が薄れてポップになり、サウンドも従来以上にバラエ . . . 本文を読む

小津ごのみ

2015-11-14 11:51:42 | 
『小津ごのみ』 中野翠   ☆☆☆☆  中野翠の、小津映画に関するエッセー集。この人はかなりの小津ファンらしく、細かいところまでマニアックな視点が行き届いていて、同じ小津映画のファンにとってはこたえられない内容になっている。評論というほど肩肘はったものではなく、小津映画の好きなところ面白いと思うところを愉しんで語るというスタンスで、タイトルの「小津ごのみ」はそういう意味でも本書によく似合っていて . . . 本文を読む

ヨコハマBJブルース

2015-11-11 20:10:58 | 映画
『ヨコハマBJブルース』 工藤栄一監督   ☆★  日本版DVDを購入して鑑賞。松田優作の未見の映画でなるべく評判がいいものをと思って入手したのだが、ダメだった。優作好きで「コレが一番好き」という人が結構いるようだけれども、これいいかなあ? 公開は『野獣死すべし』の翌年で、松田優作はストレートの長髪で真ん中分けのヘアスタイル、黒いコート姿など、ルックス的に『野獣死すべし』とちょっとかぶっている。 . . . 本文を読む

The Inevitable End

2015-11-09 22:22:06 | 音楽
『The Ievitable End』 Royksopp   ☆☆☆☆  北欧のエレクトロニカ・ユニット、ロイクソップの新作だが、どうやらこれを最後に解散するらしい。だからタイトルも「The Ievitable End」。最近ほとんどエレクトロニカを聴かなくなり、未だに好きで聴いている数少ないユニットだったので残念だ。  ロイクソップはエレクトロニカといってもハウスではないしアンビエントっぽく . . . 本文を読む