『霧の旗』 山田洋次監督 ☆☆☆
またしても松本清張もの。監督が山田洋次、主演が倍賞千恵子という珍しいパターンだ。倍賞千恵子演じる桐子は、殺人事件の被告となった無実の兄を救おうと高名な弁護士に頼みに行くが、費用も払えないし忙しいというので断られる。兄は有罪となり、獄死する。一年後、桐子は東京のバーで働いているが、ある事件に巻き込まれる。そして事件の容疑者はあの弁護士の愛人だった。桐子の復讐 . . . 本文を読む
『La Femme Nikita』 Luc Besson監督 ☆☆☆☆
DVDで再見。確かこれは私がニューヨークに来て最初に映画館で観た映画だった。友だちに連れて行かれたのだが、『ラ・ファム・ニキータ』というフランス映画だと言われて恋愛ものかと思ったら全然違い、スタイリッシュなスパイ・アクションだったのでびっくりした覚えがある。とても面白かった。最近でこそボーン・シリーズみたいにヨーロッパ . . . 本文を読む
『灯台へ』 ヴァージニア・ウルフ ☆☆☆☆☆
私は昔、確か高校生ぐらいの時にこの小説を読もうとして挫折したことがある。別荘に集まった人々のなんてことない日常の会話ややりとりが延々続くだけで、何もドラマティックなことが起きないので音を上げたのである。それ以来、ヴァージニア・ウルフは面白くない小説を書く作家だという先入観が植えつけられた。それからこの作家の名前と必ずセットになって出てくるあの「 . . . 本文を読む
メリークリスマス。皆様方、聖なる夜をいかがお過ごしでしょうか。
しばらく前にお題を決めてお薦めリストを書いたらとのコメントをいただき、それから考えてはいたのだけれど、いいお題を思いつかないまま今に至ってしまった。で、まあクリスマスでもあることだし、月並みではあるけれども今日はお薦めのクリスマス映画をリストアップしてみたいと思う。とはいえ、クリスマス映画を見尽くしたわけでもないので、私がこれま . . . 本文を読む
『ブルーリア』 ダヴッド・シャハル ☆☆☆☆
再読。ダビッド・シャハルはエルサレム生まれの作家で、1997年にパリで客死した。彼の小説の多くは古都エルサレムを舞台にしている。などとえらそうなことを書いているが、私はシャハルの小説はこの短篇集しか読んだことはない。しかし本書の表題作『ブルーリア』は一読すると忘れがたい印象を残す、非常に静謐で、ミステリアスで、抒情的で、透明感のある、とても美し . . . 本文を読む
『ブレードランナー』 リドリー・スコット監督 ☆☆☆☆★
名作『ブレードランナー』の「ファイナル・カット」というものを入手し、久々に鑑賞した。この映画は劇場公開版の他にディレクターズ・カット、未公開シーンを入れた完全版など色んなバージョンがあってややこしいことになっているのだが、このファイナル・カットというのはそれらをいいとこ取りし、映像をリストアしたり音声のずれを修整したりと細かく改善さ . . . 本文を読む
『極大射程』 スティーヴン・ハンター ☆☆☆☆
表紙を見れば分かる通り、スナイパー小説である。「このミス」過去20年の総決算ランキングで、海外部門の4位に入っていたので買ってみた。ちなみに1位は『薔薇の名前』、2位『羊たちの沈黙』、3位『ボーン・コレクター』である。
主人公の名前はボブ。超一流のスナイパー。クールでとにかく渋い。物事に動じず、恐れを知らず、腹が据わっていて、頭もいい。は . . . 本文を読む
『Frequency』 Gregory Hoblit監督 ☆☆☆
英語版DVDで再見。『Frequency』というタイトルやDVDのパッケージは味もそっけもなくて、二流どころのアクションものかSFかといった感じだが、実はかなり抒情的でファンタジックな味わいの映画だ。『ある日どこかで』『リメンバー・ミー』『イルマーレ』のような「時を越える」系である。邦題は『オーロラの彼方へ』とロマンティック . . . 本文を読む
『火山に恋して - ロマンス』 スーザン・ソンタグ ☆☆☆★
批評家・評論家として有名なスーザン・ソンタグの歴史小説を読了。帯に「フランス革命を背景に展開する華麗なる三角関係」なんて書いてあるので、たとえば『薔薇の名前』が記号論だけでなく古典的なミステリの愉しさがどっさり盛り込まれていたように、これも(ソンタグ氏の文芸理論に則りつつも)古典的な物語文学のテイスト満載かと思ったら、そうでもな . . . 本文を読む
『5時30分の目撃者』 ☆☆☆★
刑事コロンボ31個目のエピソード。これはなかなかいい出来だ。犯人のコリアー医師はイイ男だが悪辣きわまりなく、とても憎たらしい。精神科医でありながら自分の患者であり、恋人でもあるナディアを保身のために殺害してしまう。それも彼女の自分への信頼を利用して。医者の風上にもおけない奴だ。おまけに女たらし。最後のコロンボに呼び出される場面でも異様に高飛車、かつ嘲笑的で . . . 本文を読む