アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

座頭市の歌が聞える

2010-12-31 17:58:14 | 映画
『座頭市の歌が聞える』 田中徳三監督   ☆☆☆☆  ついに2010年も最後の日になりました。今年もはやかったなあ。  座頭市シリーズ第13作目。今回初めて観たが、これはかなり好きである。ありがちなパターンだけれども、話がシンプルで、登場人物も整理されているし、物語に情感が広がる隙間がある。役者たちの演技もいい。  主要登場人物は市、お蝶(小川真由美)、浪人の黒部(天知茂)、ヤクザの親分・権 . . . 本文を読む

結晶世界

2010-12-29 20:38:16 | 
『結晶世界』 J・G・バラード   ☆☆☆☆  バラード初期の代表作を読んだ。初読である。バラードという作家は昔わりと気になって『ハイ=ライズ』とか『終着の浜辺』とかヴァーミリオン・サンズ短編群とか読んだが、どうもピンとこず、そのまま離れてしまった。一時期は『残虐行為展覧会』とかいうマニアックな本も持っていたのだが、どんな内容だったか全然覚えていない。コンセプトや雰囲気は悪くないが、実際読むとな . . . 本文を読む

Live In Germany

2010-12-27 17:27:25 | 音楽
『Live In Germany』 Supertramp   ☆☆☆☆  いつの間にか発売されていたスーパートランプのライヴ映像を入手した。古いマテリアルとしては画質はまあまあで、音質も悪くない。ファンなら買いだろう。ただし、メニュー画面がドイツ語だ。  『Story So Far』の中に野外スタジアムで演奏している映像があるが、あれのフル・バージョンである。『Give A Little Bi . . . 本文を読む

暗闇のスキャナー

2010-12-25 23:26:05 | 
『暗闇のスキャナー』 フィリップ・K・ディック   ☆☆☆☆☆  再読。これはディックの傑作の一つで、内容的には文句なく五つ星なのだが、サンリオSF文庫版は翻訳がひどい。今はこれ以外にも二種類翻訳が出ているので、これから読もうという人はそっちを読んだ方がいい。私も次に読む時は別のを買おうと思う。サンリオ文庫版は貴重なんだけれどもなあ。  本書は映画化もされたので観ている人もいると思うが、麻薬捜 . . . 本文を読む

ホロー荘の殺人

2010-12-23 19:56:49 | 
『ホロー荘の殺人』 アガサ・クリスティー   ☆☆☆☆  何度目かの再読。ポアロもの。これはクリスティーがトリックより心理描写に重きを置くようになった頃の作品で、派手なトリックこそないものの、登場人物たちの心の襞を丁寧に描いて文学的な香りを漂わせる、読み応えのある一篇である。かなり普通小説寄りのミステリになっている。クリスティーの中でも好きな作品だ。  メインとなるのは登場人物たちの恋愛感情で . . . 本文を読む

座頭市兇状旅

2010-12-21 19:46:16 | 映画
『座頭市兇状旅』 田中徳三監督   ☆☆☆★  座頭市シリーズ四作目。まだまだ初期だ。この頃の座頭市はやっぱりエエね。  ただし難を言えば、ちょっと詰め込み過ぎのきらいがあるかな。前作の『新・座頭市物語』はこじんまりした話だったが、どっちかというとああいうタイプの話の方が好みだ。登場人物やサブプロットは少なめの方が掘り下げられるし、情感が広がる空間が感じられて心地いいのである。が、まあ本作も、 . . . 本文を読む

いちばんここに似合う人

2010-12-19 11:58:48 | 
『いちばんここに似合う人』 ミランダ・ジュライ   ☆☆☆  これも日本で買ってきた本。装丁がとてもおしゃれで、つい手にとってみたくなる。最近は電子書籍が話題だが、こういう「書物」の魅力は何物にも替えがたいものがあるなあ。作者は女性で、映画作家でもあるらしい。  エイミー・ベンダーみたいなシュール系、というか妄想系である。洗面器で老人たちに水泳を教える女の子とか、姿の見えない影みたいな恋人とつ . . . 本文を読む

浪華悲歌

2010-12-17 00:13:38 | 映画
『浪華悲歌』 溝口健二監督   ☆☆☆★  溝口監督の映画四つをパッケージした『Kenji Mizoguchi's Fallen Women』というDVDボックスがCritelionから出ているのを発見、さっそく入手した。入っているのは『祇園の姉妹』『浪華悲歌』『赤線地帯』『夜の女たち』の四つ。『祇園の姉妹』はすでに日本版を持っているが、あと三つは未見なので50ドルは安い。日本版だと一つで5千円 . . . 本文を読む

羊たちの沈黙

2010-12-15 19:59:59 | 
『羊たちの沈黙』 トマス・ハリス   ☆☆☆★  ジョディ・フォスター主演映画で有名な『羊たちの沈黙』。日本から帰ってくる飛行機の中で読むために買った。  本書は「このミス」ベスト・オブ・ベスト、つまり過去20年間ランキングの第二位に選ばれている。第一位は『薔薇の名前』である。映画は観たので話は大体知っているが、そんなに面白い小説なのか、というわけで初めて読んでみた。まあ確かに面白いっちゃ面白 . . . 本文を読む

Minute By Minute

2010-12-13 19:59:20 | 音楽
『Minute By Minute』 The Doobie Brothers   ☆☆☆☆☆  ドゥービー・ブラザーズの名盤『ミニット・バイ・ミニット』をご紹介します。私がドゥービーズにハマったのは本作がきっかけだけれども、これもまた私の中ではスティーリー・ダンつながりだ。お前は全部スティーリー・ダンつながりじゃないかと言われそうだが、実際そうなんだから仕方がない。楽曲のセンスの良さ、室内工芸品 . . . 本文を読む