『ゴースト・ストーリー』 コールドプレイ ☆☆☆☆☆
コールドプレイ6枚目のスタジオ・アルバム。前作『Mylo Xyloto』(マイロ・ザイロトと読むことを今回ネットで調べて初めて知った)が、華やかな色彩感とキャッチ―なメロディが溢れ出す無敵のポップ・ロック・アルバムだったとすれば、本作はうって変わって内省的な、静謐感の漂うアルバムである。昼に対する夜、太陽に対する月、のようなイメージだ。 . . . 本文を読む
『湖底の光芒』 松本清張 ☆☆☆★
『ミステリーの系譜』と一緒に買った松本清張本を読了。こちらは長編小説である。清張作品の中では一級品の部類には入らないだろうが、それなりに読ませる。題材はカメラのレンズ磨き工場で、死んだ夫の跡を継いでこの工場を経営している加須子(かずこ)がヒロイン。かなり美貌の未亡人、という設定である。
物語は発注元の会社の倒産から始まる。最初の場面は債権者会議で、苦 . . . 本文を読む
『雁』 池広一夫監督 ☆☆☆★
以前、豊田四郎監督『雁』のレビューを書いたが、今日は池広一夫監督の『雁』である。私は両方とも日本版DVDを所有しているので、これを観終わった後また豊田版『雁』のDVDを引っ張り出して見比べてみたが、こんな風に見比べができるのも今の時代の映画ファンならではの贅沢だ。
豊田版『雁』は1953年、池広版『雁』は1966年公開で、13年しか違わない。両方ともモノ . . . 本文を読む
『福家警部補の報告』 大倉崇裕 ☆☆☆
「刑事コロンボ」の影響を強く受けて「刑事コロンボ」そっくりの倒叙推理小説を書いている作家がいると聞き、これは要チェックと思って一冊入手した。短篇集である。といってもそれぞれ中編程度の長さで、本書には「禁断の筋書」「少女の沈黙」「女神の微笑」の三篇が収録されている。また、これは最初の短編集ではなくシリーズ三つ目の短編集である。なぜ三つ目を選んだかという . . . 本文を読む
『ボヘミアン・ラプソディ』 ブライアン・シンガー監督 ☆☆☆☆★
2018年最後に映画館で観た映画はこれ、『ボヘミアン・ラプソディ』だった。ご存知、フレディ・マーキュリーの伝記映画である。まあクイーンの物語なのだけれども、映画の中心人物は明らかにフレディ・マーキュリーだ。大体は事実に即しているが、多少は虚構がまじっているらしい。私はクイーンの音楽は大好きだしかなり聴いているが、伝記的事実は . . . 本文を読む
『ミステリーの系譜』 松本清張 ☆☆☆★
久しぶりに松本清張の本を購入。これは小説ではなく、犯罪実録もの、つまりルポルタージュである。日本の犯罪史(大正・昭和)の中から特異な事件三つを選び、松本清張が独特の簡潔な筆致でルポする。三篇のタイトルは「闇に駆ける猟銃」「肉鍋を食う女」「二人の真犯人」。
じっくりと調書その他の資料を読み込み、時には丁寧に引用しつつ事件を論じる松本清張のアプロ― . . . 本文を読む
『Rush In Rio』 Rush ☆☆☆☆★
久しぶりに大好きなラッシュについて書きたい。これはラッシュが『Vapor Trails』の発表後に行ったツアーから、ブラジルのリオで行われたライヴを収録したものである。ちなみに同じタイトルで映像版も出ているが、これはCD版のレビューと思っていただきたい。もちろん映像版も所有しているけれども、iPodに取り込んで聴き倒せるので私はCDの方を重 . . . 本文を読む
『カメラを止めるな!』 上田慎一郎監督 ☆☆☆☆
日本で随分とヒットしたらしい『カメラを止めるな!』を、Amazonでブルーレイを購入してようやく鑑賞。「映画好きにはたまらない」「最後は号泣」「幸福感溢れる映画鑑賞体験」などなど絶賛の嵐が吹き荒れていたので、一体どんな映画なんだろうと興味津々だったが、なるほど、こんな映画だったか。
ところで、この映画については「何を言ってもネタバレにな . . . 本文を読む
『信長の原理』 垣根涼介 ☆☆☆☆☆
『ワイルド・ソウル』に続いて二冊目の垣根涼介を読了。今度は時代小説というか、歴史小説である。タイトル通り織田信長の話だが、普通の歴史小説とはちょっと毛色が違う。子供時代の信長が「たわけ殿」と白眼視されつつ成長し、父の後を継ぎ、次第に領地を拡大し、日本統一に向かって邁進し、野望達成を目前に本能寺で倒れる、というストーリー展開はまさに信長を描く歴史小説とし . . . 本文を読む