アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

大晦日のご挨拶

2018-12-31 23:11:04 | Weblog
 今日は2018年最後の日ですので、いつものレビューをお休みして一言ご挨拶をしたいと思います。日本はもう年が明けていると思いますが、アメリカ東海岸は、まだ12月31日なのです。  ちなみに上の写真は、12月21日に撮ったブライアント・パークのクリスマス・ツリーです。  さて、今年もあっという間に過ぎてしまいました。個人的には会社の中で異動になって業務内容が大幅に変わったり、日本に帰国転職す . . . 本文を読む

孤狼の血

2018-12-28 23:22:52 | 映画
『孤狼の血』 白石和彌監督   ☆☆☆☆  日本版ブルーレイを入手して鑑賞。いやー濃い映画だ。昭和っぽい猥雑さがムンムン立ち込めている。でも面白かった。『日本で一番悪い奴ら』と雰囲気も内容もよく似てると思ったら、同じ監督だった。この猥雑さ、ギラギラした感じ、昭和の匂いなどが共通している。  要するに二つの暴力団と警察が三つ巴になって仁義なき戦いを繰り広げる、一大抗争のお話である。昔のヤクザ映画 . . . 本文を読む

毒入りチョコレート事件

2018-12-25 19:38:38 | 
『毒入りチョコレート事件』 アントニイ・バークリー   ☆☆☆☆  アントニイ・バークリーの古典的ミステリを久しぶりに再読。最初に読んだのは高校生ぐらいの時だったと思う。中学生の時にエラリー・クイーンの『Xの悲劇』を読んで本格ミステリに激しくハマり、その後しばらくはミステリばかり読み漁っていた私だったが、その私の本格ミステリへの熱を見事に冷ましてくれたのが、何を隠そうこの本だった。まあちょうど本 . . . 本文を読む

ピアニスト

2018-12-22 15:04:37 | 映画
『ピアニスト』 ミヒャエル・ハネケ監督   ☆☆☆★  ハネケ監督の『ハッピーエンド』がとても好きで繰り返し観ているので、iTunesで2001年公開の『ピアニスト』を観てみた。  私が最初にハネケ監督の名前を知ったのは、『ファニーゲーム』みたいな観客にとって不快な映画を撮る監督としてだった。その後『アムール』を観てこの人は本物の芸術家だと直感し、リスペクトするようになったわけだが、不快な映画 . . . 本文を読む

ワイルド・ソウル

2018-12-19 23:45:16 | 
『ワイルド・ソウル』 垣根涼介   ☆☆☆☆★  垣根涼介という作家さんの本を初めて読んだ。ミステリや冒険小説や時代小説など幅広くエンタメ小説を書いている人だが、本書は1900年代に日本政府が推進したブラジル移民の話をベースに、日系ブラジル人たちの子孫が日本政府に復讐するという一種のピカレスク・ロマンになっている。ただし、真正の犯罪者を主人公にして人間のダークサイドを掘り下げる馳星周みたいな小説 . . . 本文を読む

ジャッカル

2018-12-16 11:48:02 | 映画
『ジャッカル』 マイケル・ケイトン・ジョーンズ監督   ☆★  iTunesのレンタルで鑑賞。あの名作『ジャッカルの日』のリメイク、かつブルース・ウィリスが暗殺者ジャッカルを演じているというので面白そうだと思ったのだが、もう全然ダメだった。あきまへん。あの素晴らしく冴えた映画をリメイクしてこんなどんくさいB級映画を作ってしまうとは、一体どういうことなのか。不思議である。どういうわけかこの監督は、 . . . 本文を読む

望み

2018-12-13 21:38:19 | 
『望み』 雫井脩介   ☆☆☆☆  『犯罪小説家』に続いて雫井脩介本を読了。これはまたかなり趣向が違って、ごく普通の家庭を舞台に、重たいテーマをリアリスティックにストレートに描き出した小説である。  主人公の石川一登(いしかわかずと)は自分の事務所を構えている建築家で、妻の貴代美(きよみ)はフリーランスの校正者。二人には高一の息子・規士(ただし)と中三の娘・雅(みやび)がいる。規士はこのところ . . . 本文を読む

ラブレス

2018-12-10 23:42:01 | 映画
『ラブレス』 アンドレイ・ズビャギンツェフ監督   ☆☆☆☆★  ズビャギンツェフ監督の新作をiTunesのレンタルで鑑賞。この監督の作品はとりあえず見ないと気がすまないようになった。完璧なまでの映像美もさることながら、画面が強烈な謎をはらんで観客に何事かを問いかけてくるようなこの呪縛力は、他の映画ではなかなかお目にかかれない。  さて、本作のストーリーはシンプルきわまりない。これまでのズビャ . . . 本文を読む

大江健三郎自選短篇

2018-12-06 21:46:44 | 
『大江健三郎自選短篇』 大江健三郎   ☆☆☆☆☆  私は大江健三郎の大ファンでもないし、いい読者とも言えないが、やはりこのノーベル賞作家の仕事は気になる。だから「作家自選のベスト版短篇集であると同時に、全収録作品に加筆修訂がほどこされた最終定本」などと言われると、これはやはり読まないわけにはいかない。というわけで、このやたら分厚い文庫本をアマゾンで取り寄せた。  大きく初期短篇、中期短篇、後 . . . 本文を読む

閉店時間

2018-12-03 23:03:23 | 映画
『閉店時間』 井上梅次監督   ☆☆☆  若尾文子の主演映画DVDをまたひとつAmazonで入手した。1962年公開作品。共演は例によって川口浩、野添ひとみなどで、まあ『あなたと私の合言葉 さようなら、今日は』『女経』『婚期』などと同じような感じではあるが、本作では三人娘の一人を演じる江波杏子が面白いアクセントになっている。  まったく予備知識なしに観たものだから、タイトルバックに「原作・有吉 . . . 本文を読む