(昨日の続き)
笑えるシーンもたくさんあるが、ディックに馴染みのない人はまったく笑えないかも知れない。例えばアークター達が自転車の変速ギアについて議論するシーン。「前に三つ、後ろに六つギアがある。足して9段変速だ、18段変速じゃない」「なくなったギアはどこいったんだろ?」「あいつらが分解した時に付け忘れたんだ。取りに行こう」「追加料金を取られるぞ」もちろん、3x6で18段変速なのだ。それから . . . 本文を読む
『スキャナー・ダークリー』 リチャード・リンクレイター監督 ☆☆☆☆☆
前に映画館で予告を観て、「ほー、『暗闇のスキャナー』が映画化されたのか」と興味をひかれてはいたが、映画館に行かないうちにいつの間にか終わってしまっていた。実写とアニメを融合したような映像が面白そうだったのだが、フィリップ・K・ディック原作の映画化で成功した例はあまりないし、キアヌー・リーヴス主演ということで、ひょっとし . . . 本文を読む
『イート、スリープ、リピート』 コープランド ☆☆☆☆
コープランドの新譜を入手した。前作の『In Motion』があまりにも良かったのでいやが上にも期待が高まっていたわけだが、さすがにあのレベルの傑作を連発するのは辛かった。まあしかし、それを言っちゃ酷だ。
全体に暗め、と自分達でも言ってるらしいし、まあ明るい陽光を浴びていたような前作と比べれば確かに暗めかも知れないが、普通に聞けばそ . . . 本文を読む
『Love Actually』 Richard Curtis監督 ☆☆☆☆★
DVDを購入して鑑賞。観たのは初めてだったが、こんないい映画とは思ってなかったのでびっくりした。ヒュー・グラント出演、『ノッティング・ヒルの恋人』の脚本家が監督、などという情報で、ありがちな甘いラブコメかと思っていたからだ。
19人の登場人物の恋愛模様を描いた群像劇になっている。クリスマスの5週間前から始まり . . . 本文を読む
『怒りの葡萄』 ジョン・フォード監督 ☆☆☆☆☆
DVDにて再見。スタインベックの原作も何度読み返したか分からないぐらい好きだが、映画もいい。
ジョン・フォードというと『駅馬車』のイメージが強くて、西部劇を撮るハリウッドの職人監督みたいな先入観があったのだが、実はとても美しい映像を撮る人なのだった。この映画のモノクロ映像の美しさは特筆ものである。光と影のコントラストが素晴らしいし、構図も実 . . . 本文を読む
『赤い右手』 ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ ☆☆☆★
国書刊行会発行のカルト・ミステリ。カルトだけあってかなり異様なミステリである。帯には「探偵小説におけるコペルニクス的転回ともいうべきカルト的名作」とある。コペルニクス的転回というのが気になって買ってしまったのだが、読んでみるとまあ、なるほどねという感じだ。私はそれほど熱心なフーダニット系ミステリの読者ではないので、マニアが読むとも . . . 本文を読む
『Bacalao Con Pan』 Irakere ☆☆☆☆☆
最近、このイラケレにはまっている。いやもう、メチャクチャええんどす。快感そのもの。キューバ音楽である。キューバン・ジャズってことになるのかも知れないが、詳しいジャンル分けは知らない。そんなもんどーでもええけんね、というジャンル・ミックスな野放図さと逞しさ、明るさと生命力が満ち溢れているのだ。
この『Bacalao Con . . . 本文を読む
『博士の愛した数式』 小泉堯史監督 ☆☆★
友人からDVDを借りて鑑賞。原作がとっても良かったので、映画やいかにと思って観たが、あかんかったと言わなければならない。
いきなり吉岡秀隆のルートが数学教師として現れ、回想を始める。原作と違い、映画全体がルートの回想になっている。これは博士とルートの絆が強調されるという以外に、物語のキーワードとなる数式、数学を、吉岡秀隆が観客に分かりやすく説 . . . 本文を読む
『クライム・マシン』 ジャック リッチー ☆☆☆★
本日読了。短篇集。「このミステリーがすごい!」海外編で第一位になったらしい。うーん、まあなかなか面白かったが、一位っていうのはどうだろう。ミステリ風味ではあるが、ミステリーというには変り種だ。「ヒッチコック・マガジン」の看板作家だったらしいが、確かにヒッチコック劇場的である。
例えば表題作の『クライム・マシン』では、殺し屋のところへ恐 . . . 本文を読む
『世にも怪奇な物語』 ロジャ・ヴァディム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニ監督 ☆☆☆☆
まぎらわしい邦題だがタモリは関係ない。エドガー・アラン・ポーの短篇を有名監督が映像化した短篇映画集で、ロジャ・ヴァディム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニという豪華三本立て。もともとの企画ではオーソン・ウェルズやヴィスコンティも入っていたというからすごい。
それぞれ邦題はヴァディム『黒馬の哭く . . . 本文を読む