アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

クイズショウ

2017-07-31 21:28:23 | 映画
『クイズショウ』 ロバート・レッドフォード監督   ☆☆☆★  Netflixで再見。この映画を観るのはもう四度目か五度目ぐらいだろう。それほど大傑作ではないが、昔から妙に好きな映画である。監督はあのロバート・レッドフォードで、題材は硬派な社会問題告発型、悠揚迫らぬペースで織り成される人間ドラマ。二人の男の人生の対比。まさに王道ハリウッド映画の風格で、レッドフォード本人のイメージにぴったりだ。 . . . 本文を読む

エデンの東

2017-07-28 23:58:50 | 
『エデンの東(1~4)』 ジョン・スタインベック   ☆☆☆☆  スタインベックの『エデンの東』全四巻を読了。ただ、全四巻と言ってもこのハヤカワ文庫版は文字サイズが大き目で、あっという間に一冊読み終わってしまう。だから全部読んでもそれほどの重量感はない。  スタインベックといえばピューリッツァー賞を獲った『怒りの葡萄』が有名だが、スタインベック自身はこの『エデンの東』を自己の最高傑作と呼んでい . . . 本文を読む

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(その2)

2017-07-25 22:07:30 | 映画
(前回からの続き)  そして壮絶な戦いの果て、プラン奪取の達成感とともに荘厳な結末に至る。仲間を失って二人だけとなったジンとキャシアンを、惑星を焼き尽くす業火が呑み込んでいく。チーム・ローグワン、全滅。が、彼らが全滅と引き替えに奪取したデススターのプランこそが、エピソード4で描かれる革命軍巻き返しのいしずえとなるのである。  見事におなか一杯のクライマックスだが、さらにデザートが控えている。プ . . . 本文を読む

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(その1)

2017-07-22 13:11:41 | 映画
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』 ギャレス・エドワーズ監督   ☆☆☆☆☆  英語版ブルーレイを購入して鑑賞。公開時に映画館でも観たが、日本人の私としてはキャプション付きの方がやっぱりストーリーが良く分かる。一体何年アメリカに住んでるんだという話だが、それはそれとして、過去のスターウォーズ・シリーズの中でもかなり評価が高い『ローグ・ワン』、やはり私もこれは傑作だと思う。シリーズの本 . . . 本文を読む

新選組 幕末の青嵐

2017-07-19 21:18:07 | 
『新選組 幕末の青嵐』 木内昇   ☆☆☆☆☆  昔は新選組なんて全然興味がなく、三谷幸喜脚本の大河ドラマも観なかったが、浅田次郎の『壬生義士伝』『輪違屋糸里』、そして司馬遼太郎の『燃えよ剣』『新選組血風録』と読むうちにだんだんハマってきた。この『新選組 幕末の青嵐』もアマゾンのカスタマーレビューで好評だったので読んでみたが、当たりだった。やっぱり面白い。  過去読んだ新選組関係の小説では短篇 . . . 本文を読む

イタリアン・レストランにて

2017-07-16 22:19:46 | 創作
          イタリアン・レストランにて  ぼくたちは映画を観たあとで、港区に最近オープンしたばかりのイタリアン・レストランを訪れた。ミシュランの三ツ星シェフが経営する店で、すばらしい料理を出すという評判だった。白い外壁に赤い屋根、プラタナスの木立の陰の階段、ロココ調の鉄柵に優美な蔦が絡まった店の外観は、まるでヨーロッパの古い町の絵葉書のようで、ぼくたちの期待感を高めるに十分だった。外はま . . . 本文を読む

男はつらいよ ぼくの伯父さん(その2)

2017-07-13 20:12:48 | 映画
(前回からの続き)  寅と満男も佐賀で別れ、満男は柴又に帰ってきて憮然としている博に家出を謝罪し、受け入れられ、皆の拍手でめでたしめでたしとなる。この場面の、博の「家出息子の帰還を迎える頑固おやじ」の典型的芝居も、お約束をうまく使っていてイイ感じなのだが、なんといっても秀逸なのは佐賀で満男が泉と別れるシーンだ。満男は帰りが遅くなったことで泉の叔父さんに叱られ、泉とも気まずくなる。家を出て、送って . . . 本文を読む

男はつらいよ ぼくの伯父さん(その1)

2017-07-10 23:56:45 | 映画
『男はつらいよ ぼくの伯父さん』 山田洋二監督   ☆☆☆☆★  シリーズ第42作目。全部で48作なので、ほぼ最終期の作品である。渥美清の体調問題もあって、寅次郎よりも満男にスポットを当てたエピソードとなっており、いわゆる後期の「満男三部作」の第一作目に当たる。渥美清の体が動かなくなってきたことによって、どんどん寅次郎の元気がなくなってくる時期の作品だが、この作品ではまだそれほど衰えは目立たない . . . 本文を読む

とるにたらないちいさないきちがい

2017-07-07 21:00:33 | 
『とるにたらないちいさないきちがい』 アントニオ・タブッキ   ☆☆☆☆☆  タブッキの本邦初訳短篇集。本国イタリアでは『インド夜想曲』の後、『遠い水平線』の前に出版されたようだ。短篇集としては『逆さまゲーム』と『ベアト・アンジェリコの翼あるもの』の間となる。タブッキがまさに一番タブッキらしかった頃の短篇集であり、当然ながら期待を裏切らない充実ぶりである。なぜ今まで邦訳されなかったのか、まったく . . . 本文を読む

The Lesson

2017-07-03 21:44:44 | 映画
『The Lesson』 Kristina Grozeva, Petar Valchanov監督   ☆☆☆★  iTunesレンタルで鑑賞。2014年のブルガリア映画。ブルガリアの映画を観たのは多分初めてだと思う。  主人公はブルガリアの女教師。冒頭、彼女の教室で盗難事件が起きる。彼女は生徒たちに、このままではすまさない、必ず犯人を見つけて教訓を与えると宣言する。この生徒による盗難事件は、言 . . . 本文を読む