アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

黄金のバックル

2014-12-31 09:34:16 | 刑事コロンボ
『黄金のバックル』 ☆☆★  今年もついに大晦日となりました。私も昨日まで仕事に忙殺されていましたが、なんとか一区切りつき、今日は心静かに過ごしたいと思います。皆様も、良いお年をお迎え下さい。  ~ ~ ~ ~  刑事コロンボ39番目のエピソード、『黄金のバックル』。今回は同族経営の美術館における殺人で、犯人は女性館長、被害者はその弟である理事と警備員。美術館は財政難から維持が難しくなり、理 . . . 本文を読む

ラストスタンド

2014-12-29 21:51:50 | 映画
『ラストスタンド』 キム・ジウン監督   ☆☆☆★  英語版DVDで再見。カリフォルニア州知事を辞めたシュワルツェネガーの俳優復帰作である。  それにしても、見事なくらい新しいものが何もない、既視感まみれのアクション映画だ。それも、ちょっと古いタイプの既視感。設定も、ストーリーも、悪役キャラや善玉キャラも、ハラハラさせつつところどころコミカルさで笑わせるスタイルも、すべてがお約束。ラストが主人 . . . 本文を読む

国盗り物語

2014-12-27 20:20:59 | 
『国盗り物語(一・二・三・四)』 司馬遼太郎   ☆☆☆☆☆  『関ヶ原』『城塞』と来て、今度は『国盗り物語』である。時間を遡って織田信長の時代に行ったわけだ。正確に言うと、この『国盗り物語』は斉藤道三篇、織田信長篇の二部に分かれている。斉藤道三はマムシと呼ばれ、油商人でありながら美濃の支配者となった風変わりな人物で、物語はまず彼が乞食同然の身から立身するまでを描き、次に、いわば彼の志を継ぐも . . . 本文を読む

Robbie Dupree

2014-12-25 11:57:05 | 音楽
『Robbie Dupree』 Robbie Dupree   ☆☆☆☆   皆様、メリークリスマス。またしても聖なる季節がやってきました。私、今年のクリスマスは本業の方が多忙をきわめ、連日一人でオフィスに残って悪戦苦闘する日々です。もうフラフラです。が、なんとかメドが立ち、今日は休むことができました。これから年末にかけて、ちょっとは骨休めできそうです。読みたい本も大量に買い込んでいます。皆様一 . . . 本文を読む

地下室のメロディー

2014-12-22 22:54:17 | 映画
『地下室のメロディー』 アンリ・ヴェルヌイユ監督   ☆☆☆☆  日本版ブルーレイを購入して初鑑賞。一言で言えば、ゴージャスな映画である。色んな意味で、ひたすらゴージャスだ。ジャン・ギャバンとアラン・ドロンの新旧スター共演。ギャバンの渋みと重厚、輝くようなドロンの美貌。舞台となるコートダジュールのホテル、プール、カジノの華麗さ。プールで寝そべる、舞台で踊る、カジノでドレスをまとう、続々登場の美女 . . . 本文を読む

別荘

2014-12-20 20:15:14 | 
『別荘』 ホセ・ドノソ   ☆☆☆☆☆  最近邦訳が出たドノソの長編を読了。『夜のみだらな鳥』に匹敵する、ドノソの絢爛たる悪夢的想像力が炸裂する異形の小説だ。中南米のある国で金箔ビジネスを一手に掌握し、経済を支配する富裕なペントゥーラ一族が主役で、舞台はその辺境の別荘だが、別荘のまわりには人食い人種が跋扈している、というからすでに世界が歪みきっている。ドノソの悪夢世界へようこそ。  この広壮な . . . 本文を読む

愛について、ある土曜日の面会室

2014-12-17 23:36:14 | 映画
『愛について、ある土曜日の面会室』  レア・フェネール監督   ☆☆★  2012年に日本公開されたフランス映画を日本版DVDで鑑賞。あちこちで絶賛されていることと、三つの独立した物語が刑務所の面会室で交錯するという仕掛けが面白そうだったので観たが、予想に反し、私にはあまり大した映画には思えなかった。  悲しみと不幸に関する映画である。冒頭から、夫が紙切れ一枚と引き換えに連れて行かれたと泣き叫 . . . 本文を読む

自画像

2014-12-15 23:36:57 | 創作
          自画像  彼は、シチリア島の寒村に生まれた。19xx年、それはヨーロッパがまだバラ色の未来を夢見ていた頃のことだ。画家の幼年時代はほとんど知られていない。両親をなくした後、ミラノに住む遠い親戚が、市から支給される支度金とともに少年を引き取った。一家は小さな文房具の店を構えて、つましいが実直な生活を送っていた。家にはまだ四十前の夫婦と、彼より年上の男の子が一人、年下の女の子が . . . 本文を読む

アリバイのダイヤル

2014-12-13 15:58:17 | 刑事コロンボ
『アリバイのダイヤル』   ☆☆  コロンボ12作目のエピソード。犯人役は『指輪の爪あと』に続いて二度目の登板、常連俳優ロバート・カルプ。『指輪の爪あと』でも短気な犯人像をうまく演じていたが、今回は輪をかけて短気な男だ。題材はアメリカン・フットボール。冒頭スタジアムが映ってチアガールが踊ったり、なかなか華やかである。  が、個人的にはかなり弱いエピソードだと思う。観終わった後の印象が非常に薄い . . . 本文を読む

小銭をかぞえる

2014-12-10 21:13:35 | 
『小銭をかぞえる』 西村賢太   ☆☆☆☆  西村賢太の文庫本を再読。例によって例のごとし、痛々しく滑稽でかつ果てしなく哀しい男女の関係を活写した「秋恵もの」二篇が収録されている。「秋恵もの」といっても本書では固有名詞はまったく出てこず、「私」と「女」で通されているが、このシリーズの面白さは『人もいない春』『廃疾かかえて』で詳しく書いたので繰り返さず、本書収録短篇の内容にフォーカスしてご紹介した . . . 本文を読む