『エムブリヲ奇譚』 山白朝子 ☆☆☆☆☆
アンソロジー『バタフライ和文タイプ事務所』収録の「〆」が面白かったので短編集『エムブリヲ奇譚』を入手。作者の山白朝子はかの乙一氏の別名である。「〆」と同じく、旅本作家・和泉蝋庵とその付き人・耳彦の旅の物語集で、全部で九篇収録されている。時代は明確にされていないが、日本全国の街道が整備された頃という描写から、たぶん江戸時代頃と思われる。
奇譚なの . . . 本文を読む
『Three and Two』 オフコース ☆☆☆☆
オフコース7枚目のオリジナル・アルバム、『Three and Two』。1979年発表のアルバムで、傑作『We are』のひとつ前、五人体制となって最初のアルバムである。
当時すでにオフコースのファンだった私は、このアルバムが出た時のことをよく覚えている。色んな意味で衝撃的だったからだ。まずはジャケットを見て唖然となった。「誰だこい . . . 本文を読む
『日本文学100年の名作第5巻1954-1963 百万円煎餅』 池内紀/松田哲夫/川本三郎・編集 ☆☆☆☆★
「日本文学100年の名作」シリーズ、今回5冊目に手に取ったのは50年代から60年代にかけての名作集である。かなり古くなってきた。時代的には「戦後」というキーワードがぴったりくる時代だ。混沌としていたであろう終戦直後より、むしろ戦後というものが生々しく立ち上がってきた時代なのかも知れ . . . 本文を読む
『フォー・ウェディング』 マイク・ニューウェル監督 ☆☆☆☆
所有するDVDで久々に再見。私は何を隠そうヒュー・グラントのファンなのだが、これはそのヒューのブレーク作である。脚本は後に『Love Actually』を監督するリチャード・カーチス。ロマコメ・ファンならとっくの昔にご存知の通り、本作はその後のヒューの十八番となるロマコメの原型であり、また一つの完成形と言っても過言ではない。
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『図書館の殺人』 青崎有吾 ☆☆☆☆
「平成のエラリー・クイーン」こと青崎有吾の三つ目の長編小説を読了した。一作目の『体育館の殺人』にはかなり感心し、二作目の『水族館の殺人』はちょっと落ちると思ったが、この『図書館の殺人』の推理の緻密さはまたデビュー作並みだ。「密室」「アリバイ崩し」と続いた本格ミステリの王道テーマを掲げる趣向も踏襲され、今回のテーマは「ダイイング・メッセージ」。ずっとこの . . . 本文を読む
『ソフィスティケイテッド・ルー』 ルー・ドナルドソン ☆☆☆☆
私が週末の朝にかけるBGMとしてとっても重宝しているCDをご紹介したい。ルー・ドナルドソンの『ソフィスティケイテッド・ルー』である。ルー・ドナルドソンは1950年代ぐらいから活躍したアメリカのサックス奏者で、このアルバムは1972年に発表されたアルバム。高齢ながら今も現役のようだ。もともとチャーリー・パーカーから強い影響を受け . . . 本文を読む
『日本文学100年の名作第6巻1964-1973 ベトナム姐ちゃん』 池内紀/松田哲夫/川本三郎・編集 ☆☆☆☆☆
日本文学100年の名作シリーズ、今回は更に遡り、60年代から70年代の名作集『ベトナム姐ちゃん』である。まあこれまで4冊ぐらい読んできたが、やっぱりこのシリーズはレベルが高い。特濃ジュース並みの内容の濃さである。この調子だと全巻読破しなければおさまらなくなりそうだが、一気にい . . . 本文を読む
『オービタル・クラウド(上・下)』 藤井太洋 ☆☆☆☆
最近すっかりSFから遠ざかっている私だが、昔はハヤカワSF文庫を手当たり次第に読みまくっておりました。といっても好んで読んでいたのは科学理論を駆使したハードSFよりディックみたいな妄想系、シュール系だったが、今回ふと手に取ってみた『オービタル・クラウド』は、謳い文句の通り現代のハードSFというにふさわしい小説だった(とはいえ、作者本人 . . . 本文を読む
『父、帰る』 アンドレイ・ズビャギンツェフ監督 ☆☆☆☆☆
ズビャギンツェフ監督のデビュー長編『父、帰る』を英語版ブルーレイで鑑賞。定規で測ったような幾何学的風景と超美麗な映像、哲人タルコフスキーを思わせる重たい静謐と瞑想性はこのデビュー作から歴然としている。かつ、すべてを説明し尽くさず数々の謎をそのまま放置する大胆なスタイル、すべてのシーンにみなぎる冷たい緊張と不安感など、この監督はあら . . . 本文を読む
『いのちのパレード』 恩田陸 ☆☆☆
アンソロジー『バタフライ和文タイプ事務所』で「かたつむり注意報」に感嘆し、しかも解説で「これを収録した短編集『いのちのパレード』は想像力の限りを尽くした短篇ばかりの傑作」と書かれていたので、これは買うしかないと思ってすみやかに入手した。
が、期待値が高すぎたか、結果的にはまあまあレベルだった。想像力の限りを尽くした短篇ばかり、というのはちょっと言い . . . 本文を読む