アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

黒の超特急

2012-12-31 13:08:41 | 映画
『黒の超特急』 増村保造監督   ☆☆★  ついに今年も大晦日となった(日本の皆様はすでに正月を迎えられていることと思いますが、米国では今ちょうど31日の午後なのです)。ぼやぼやしているとあっという間に一年たってしまうが、残りわずかな2012年は心静かに、有意義に過ごしたいと思う。皆様良いお年をお迎え下さい。  さて、『黒の報告書』に続き、『黒の超特急』を観た。主演・田宮二郎、共演・藤由紀子、 . . . 本文を読む

灰夜

2012-12-29 16:20:14 | 
『灰夜』 大沢在昌   ☆☆☆★  新宿鮫シリーズ七作目。これは異色作だ。まず舞台が新宿ではない、東京でさえない。どこか(確か九州だったような)の地方都市である。従って鮫島以外のレギュラー陣が登場しない。桃井、藪、もちろん晶も出てこない。完全な鮫島の孤軍奮闘だ。かつ、「鮫島鮫」のネームバリューも通用しない。いつもなら鮫島を見て「ああっ、し、し、新宿鮫!」とビビるヤクザも(<そこまでビビらないだろ . . . 本文を読む

展覧会の絵

2012-12-27 11:12:00 | 音楽
『展覧会の絵』 エマーソン・レイク&パーマー   ☆☆☆☆★  最近音楽ではフュージョンばかり紹介しているので、久々にロックを取り上げたい。プログレの名盤、エマーソン・レイク&パーマーの『展覧会の絵』である。  これはもちろんムソルグスキー作曲の有名なクラシック曲のロック版で、ライヴ録音されている。『タルカス』に続く三枚目のアルバムだが、発売の経緯は複雑らしく、海賊版が出回ったため急遽出された . . . 本文を読む

黒の報告書

2012-12-25 18:19:12 | 映画
『黒の報告書』 増村保造監督   ☆☆☆  大映が1960年代に製作した「黒」シリーズのDVDがいくつか出ていて、ノワール系が嫌いじゃない私はその中の『黒の報告書』と『黒の超特急』を入手した。まずは『黒の報告書』。  法廷ものである。主人公は検事の城戸(宇津井健)。映画は殺人事件の現場からスタート。警察とともに捜査し、関係者に尋問する城戸。やがて有力な容疑者が浮かび、証言も証拠も挙がる。凶器に . . . 本文を読む

笹まくら

2012-12-23 22:17:38 | 
『笹まくら』 丸谷才一   ☆☆☆☆  『笹まくら』を読了。これは米原万里氏の書評で「打ちのめされるようなすごい本」として紹介されているそうで、そのためかアマゾンのカスタマーレビューやネットでは絶賛の嵐が吹き荒れている。中には「世界にいくつあるかというレベルの大傑作」という評まであり、いくらなんでもそれはちょっと違うんじゃないかと思うし、小説の価値なんてものは読者一人一人によって変わるものだから . . . 本文を読む

Heads

2012-12-21 23:51:48 | 音楽
『Heads』 Bob James   ☆☆☆☆☆  先日紹介したフォープレイのキーボーディスト、ボブ・ジェームスのソロ5作目。一枚目から四枚目まではOne, Two, Three, Bj 4と数字だったが、5枚目からはちょっと捻って、数字に関係のある別の何かで代替させる方式となった。で、「Heads」はコインの表のことで、ジャケット写真は5セント硬貨。  フォープレイのアルバムがどれも洗練と . . . 本文を読む

レガシー

2012-12-19 23:59:26 | 映画
『レガシー』 リチャード・マーカンド監督   ☆☆☆  1978年の恐怖映画を観賞。ホラー映画より恐怖映画という方がしっくり来る。キャサリン・ロス主演。この女優さんは『ステップフォード・ワイフ』など当時の恐怖映画にいくつか出ているが、これもその一つ。はっきり言ってB級映画である。ジャンル内映画以外の何物でもない。しかしジャンル内映画と割り切って観る限りにおいては、そこそこ愉しめるクオリティだと思 . . . 本文を読む

聖なる侵入

2012-12-17 20:00:53 | 
『聖なる侵入』 フィリップ・K・ディック   ☆☆☆★  再読。ディックのヴァリス二部作の二作目、あるいはヴァリス三部作の二作目である。人称が一人称になったり三人称になったりし、現代のカリフォルニアが舞台で、時空を自在に飛び回る実験的なナラティヴが特徴的だった『ヴァリス』と異なり、この『聖なる侵入』はディック本来のパルプSF的語りによるSF作品の体裁を一応取り戻してはいる。が、一見SFの容れ物の . . . 本文を読む

Fourplay

2012-12-15 13:45:13 | 音楽
『Fourlpay』 Fourplay   ☆☆☆☆☆  これはフュージョンというよりスムース・ジャズというべきなのかも知れない。とあるレコーディングで顔を合わせ、意気投合した凄腕ミュージシャン四人、ボブ・ジェームス(キーボード)、リー・リトナー(ギター)、ハーヴィ・メイソン(ドラムス)、ネーザン・イースト(ベース)によって結成されたフォープレイは、スムースでクールな曲想と演奏が身上の、まさに「 . . . 本文を読む

コフィン・ダンサー

2012-12-12 19:31:14 | 
『コフィン・ダンサー(上・下)』 ジェフリー・ディーヴァー   ☆☆☆☆  これはディーヴァーの「リンカーン・ライム」シリーズの二作目で、私見ではシリーズの中でも『ウォッチメイカー』と並ぶ傑作だ。とにかく最初から最後までずっとスリル満点、ハイテンションで突っ走る。コフィン・ダンサーとは要するに凄腕のヒットマンなのだが、彼の殺し技の凄さと、ライムの頭の回転の速さのせめぎあいが読みどころだ。コフィン . . . 本文を読む