『噂の二人』 ウィリアム・ワイラー監督 ☆☆☆★
iTunesのレンタルで鑑賞。1961年公開のモノクロ映画である。
邦題はどう考えてもロマンティック・コメディのタイトルだが、実際はきわめてシリアスかつスキャンダラスな内容で、ある意味サイコ・サスペンスといっても過言ではない。それぐらいコワい映画である。原題は「The Children's Hour」。舞台は女学校で、中学生ぐらいの女の . . . 本文を読む
『マイタの物語』 バルガス・リョサ ☆☆☆
リョサの邦訳本が出たのでさっそく入手した。ただしこれは新作ではなく、実は30年以上前に出版されていたにもかかわらずこれまで邦訳が出ていなかった作品である。邦訳が出ていなかった理由はよく分からないが、推測するにあまり売れないと判断されたんだろう。正直、ストーリーテラーたるリョサの本領が発揮されているとはいいがたい。
ペルーで実際に起きた事件を題 . . . 本文を読む
『華岡青洲の妻』 増村保造監督 ☆☆☆★
これも若尾文子出演映画のひとつ。有吉佐和子の原作を読んだ後で映画も観てみた。もともとが嫁と姑の争いを描いた陰湿な話なのだが、映画はコントラストが強いモノクロ映像と尺を短くするための刈り込みでさらに怖くなっている。増村監督と新藤兼人と若尾文子の組み合わせということで、あの恐るべき映画『清作の妻』に似たムードがある。ちなみに、こっちの方が後の作品。
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『コスメティック』 林真理子 ☆☆☆☆
林真理子の短篇集、エッセーと読んだ後、ひとつ長篇も読んでみようと思ってピックしたのが本書。舞台は化粧品業界。本社がフランスにある外資系化粧品会社のPR担当者になった北村沙美の物語である。私にしてみればまったくなじみも関心もなかった世界の話なので、逆に「へええ、こんなことがあるのか」と新鮮だった。やっぱり、女性の化粧品にかける熱意ってすごいんですなあ。 . . . 本文を読む
『男はつらいよ 寅次郎春の夢』 山田洋次監督 ☆☆☆★
シリーズ第24作を再見。マドンナは香川京子、その娘に林寛子。まあ総合的に言えば、シリーズ水準作だと思う。寅とマドンナの関わりも特にどうということはない。本作の見どころはもう、アメリカ版寅さんとして登場するマイケル・ジョーダンのさくらへの恋、これしかない。
マイケル・ジョーダンとはバスケットボール選手ではなく、アメリカのアリゾナ州か . . . 本文を読む
『モンローが死んだ日』 小池真理子 ☆☆☆★
小池真理子のホラー・サスペンスものが読みたくなって、Amazonで評判が良かったこれをチョイスしたのだが、これは私の選択ミスだった。作品紹介に「濃密な心理サスペンス」とあり、まあ登場人物が失踪するので嘘ではないものの、これはサスペンスというより恋愛もの、またはヒューマンドラマである。
冒頭、語り手である孤独な50代の女性、幸村鏡子がつきあっ . . . 本文を読む
『青空娘』 増村保造監督 ☆☆☆☆
またしても若尾文子先生の映画を日本版DVDで鑑賞。もちろんヒロインの青空娘こと有子(ゆうこ)が若尾文子で、相手役は菅原謙二と川崎敬三のふたり。菅原謙二は『あなたと私の合言葉 さようなら、今日は』で若尾文子の婚約者を演じていた俳優さんである。
まあそれにしても、昔の少女マンガみたいな映画だ。海辺の田舎ですくすくと育った少女、有子はおばあちゃんと二人暮ら . . . 本文を読む
『ルンルンを買っておうちに帰ろう』 林真理子 ☆☆☆★
林真理子のデビュー・エッセイを読了。タイトルだけは有名なので昔から知っていたが、まさか自分がこんなタイトルのエッセイ集を読むことになるとは夢にも思わなかった。ちょっと前までまったく関心のかけらもなかったわけだが、読んでみると意外に面白かった。
これまでになかったような女性エッセイを、という狙いで書かれたものらしい。女性エッセイとい . . . 本文を読む
『ヴェラの祈り』 アンドレイ・ズビャギンツェフ監督 ☆☆☆☆
ズビャギンツェフ監督が2007年に発表した二作目の映画、『ヴェラの祈り』を日本版ブルーレイで鑑賞。私はこの監督の映画は『エレナの惑い』がとても好きで『裁かれるのは善人のみ』はまあまあ、他は観ていない、という程度の初級ファンなのだが、この確信犯的にゆったりしたテンポ、計算し尽くされた精密な映像、ミステリアスで多義的な物語、という組 . . . 本文を読む
『朱鳥の陵』 坂東眞砂子 ☆☆☆★
坂東眞砂子の長篇を読んでみようと思い立ち、アマゾンのカスタマレビューで平均点が高かった『朱鳥の陵』を購入。「あかみどりのみささぎ」と読む。飛鳥時代の奈良を舞台にした古代の伝奇ロマンで、女帝・持統天皇の生涯が題材。要するに、日本書紀に書かれている頃の日本(倭国)の話である。
ちなみに歴史に疎い私は全然知らなかったが、この持統天皇というのは悲劇的な生い立 . . . 本文を読む