アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

別離

2013-02-28 19:28:33 | 映画
『別離』 アスガー・ファルハディ監督   ☆☆☆☆☆  いやー面白かった。2011年のイラン映画だけれども、アカデミー賞外国語映画賞、ベルリン映画祭金熊賞その他色んな賞を総なめにしたと聞いて観てみたら、大当たりだった。  タイトルや評判から、家族愛や苦悩を扱った人間ドラマだろうと思って観たが、ハズレではないもののかなり予想と違っていた。なんとなく文芸映画っぽいものを想像していたのである。特徴と . . . 本文を読む

Bloody Tourists

2013-02-26 22:07:10 | 音楽
『Bloody Tourists』 10cc   ☆☆☆★  『愛ゆえに』に続く、10cc6枚目のアルバム。ゴドレー&クレーム抜きの二人だけで作った『愛ゆえに』と違い、今度はメンバーを補充し6人編成のバンドとして生まれ変わったニュー10ccの作品である。ただし今度のバンドは、四人が対等にアイデアを出し合っていたオリジナル・ラインナップとは異なり、あくまでエリックとグレアムの二人が頂点に位置し、そ . . . 本文を読む

マッチポイント

2013-02-24 16:29:12 | 映画
『マッチポイント』 ウディ・アレン監督   ☆☆☆★  英語版DVDで観賞。ウディ・アレンにしてはわりと普通の、アレン色が強くない映画だ。テニスのインストラクターをしている野心家の若い男(ジョナサン・リース・マイヤーズ)が資産家一家と知り合いになり、娘とつきあい、結婚し、不倫し、崖っぷちとなる。そして殺意が芽生える。シリアスで、リアリスティックなタッチ。自業自得ではあるけれども、主人公クリスの追 . . . 本文を読む

64

2013-02-22 21:07:26 | 
『64』 横山秀夫   ☆☆☆★  久々の横山秀夫である。新刊のハードカバーが平積みになっているのを見て買ってしまった。このミス国内部門第一位、アマゾンのカスタマーレビューでも絶賛の嵐ということで、とても文庫になるまで待てなかった。で、週末に一気読み読了。  が、正直、期待したほどではなかった。力作だし、世間の評価が高いのも分かる。面白くないことはない。しかし個人的には刺さらなかった。舞台は『 . . . 本文を読む

A Good Day to Die Hard

2013-02-20 19:47:53 | 映画
『A Good Day to Die Hard』 John Moore監督   ☆☆★  『ダイ・ハード』5作目をニュージャージーのいつもの映画館で観た。先週末封切りされたばかりだというのにガラ空きで、ゆったり特等席で観ることができた。ひょっとしてコケてるのか? という心配はどうやら当たらなかったようだが、それにしても、こりゃかなりダメなんじゃないかという出来だった。もちろんこれまでのシリーズは . . . 本文を読む

北の愛人

2013-02-18 12:22:50 | 
『北の愛人』 マルグリット・デュラス   ☆☆☆☆  デュラスの『北の愛人』を読了。これは『愛人』と同じ話の語り直し、つまりかつて恋人だった中国人の、それまで想像すらしなかった死の知らせを聞いてあふれ出てきた感慨を踏まえて、また『愛人』では二人の恋人同士としての細かい描写を盛り込めなかったという反省(?)を踏まえてデュラスが作成した、別バージョンの「愛人」である。『愛人』が写真を意識して始まるの . . . 本文を読む

六つの心

2013-02-16 09:23:33 | 映画
『六つの心』 アラン・レネ   ☆☆☆☆★  日本版DVDで観賞。面白く美しいのと同時に、とんでもなく奇妙な映画でもある。  タイトルや紹介のされ方からは、『バレンタイン・デー』や『ニューヨーク・ニューヨーク』みたいなオムニバス形式の恋愛映画を連想してしまうが、実際観てみるとかなり異質である。アマゾンの紹介文では、これは「孤独」を描いた映画だという。確かにこの映画に登場する人々はみんな孤独を抱 . . . 本文を読む

世界幻想文学大全3 幻想小説神髄

2013-02-13 21:06:23 | 
『世界幻想文学大全3 幻想小説神髄』 東雅夫・編   ☆☆☆☆  『怪奇小説精華』に続いて『幻想小説真髄』を読了。しかしすごいタイトルだな。  西洋の幻想小説の系譜を辿るという意味では面白いし、特に最初の方に収録されている数編はこういうキリスト教的世界観が幻想物語の源泉にあることを示してくれて、なかなか興味深いものがある。ジャン・パウルの「天堂より神の不在を告げる死せるキリストの言葉」は神不在 . . . 本文を読む

Amour

2013-02-11 08:53:36 | 映画
『Amour』 Michael Haneke監督   ☆☆☆☆☆  2012年のパルムドールを獲ったミヒャエル・ハネケ監督の「アムール」を、先日リンカーン・センター・シネマで観てきた。  これは広義の「難病もの」と言っていいだろう。ある日突然妻が発症し、半身麻痺となる。最初は意識はしっかりしているが、だんだん朦朧としていき、やがて話すことすらできなくなる。夫は妻を自宅で看病する。病名ははっきり . . . 本文を読む

世界幻想文学大全 怪奇小説精華

2013-02-08 19:13:41 | 
『世界幻想文学大全 怪奇小説精華』 東雅夫・編   ☆☆☆★  東雅夫編集のアンソロジー『怪奇小説精華』と『幻想小説真髄』を入手、まずは『怪奇小説精華』を読了した。  全体にクラシック、ベーシックな怪談のコレクションという印象である。怪談の原型みたいな話も多く、たとえば「幽霊屋敷」や「背の高い女」などがそうで、新鮮味という意味ではちょっと物足りないけれども、どれも一味プラスアルファがあって決し . . . 本文を読む