さて、本日はオールタイム・ベストの日本文学篇である。選出時のルールは基本的に海外文学篇と同じ、ただし日本限定だと長編と短編集それぞれで10作品を選ぶほど思い入れがある作品が多くないので、両方合わせて10作品とした。
それから念のため繰り返しておくが、振っている番号は順位ではなく私がその作品と出会った順番なので、お間違えなく。
1. 筒井康隆「脱走と追跡のサンバ」
2. 夏目漱石「ここ . . . 本文を読む
今日はいつもと趣向を変えて、私自身のオールタイム・ベストをご紹介したいと思う。まずは海外文学から。
一応ベスト10ということで10作品選んでみたが、数ある偏愛小説群の中からたった10篇だけ選ぶというのはかなり無茶な話で、だから今の気分で選ぶとこうなる、ぐらいにご理解いただければと思う。来月選べばまた微妙に変わってくるかも知れない。とはいっても、オールタイムベストというぐらいだからどれも昔から . . . 本文を読む
『真夜中に海がやってきた』 スティーヴ・エリクソン ☆☆☆☆☆
これはエリクソンが『アムニジアスコープ』の後に発表した長編小説である。いつもの混沌としたエリクソンの世界には違いないが、『黒い時計の旅』あたりで特徴的だったノワール映画的な暴力的な要素は後退し、瞑想的で儚げなムードが全体を覆っている。スナッフ・ビデオ(つまり本物の殺人を映したビデオ)のエピソードなどは出てくるものの、むしろその . . . 本文を読む
『愛のポルターガイスト』 小島麻由美 ☆☆☆☆
小島麻由美の5thアルバム。以前紹介した『さよならセシル』より私はこっちの方が好きなのだが、コジマユ・ファンの中では異端的な一枚なのか、現在では廃盤になっている。
全部聴いたわけじゃないけれども私が所有する他二枚のアルバムと比べた時の特徴は、サウンドが厚く作りこまれていて、全体の音に「重い」「濃い」といった印象があることだろう。『さよなら . . . 本文を読む
『祝砲の挽歌』 ☆☆☆★
刑事コロンボ28作目。犯人は士官学校の校長。儲からない士官学校を廃校にしようとする創立者の孫を、記念式典中に大砲を自爆させて殺害する。
コロンボ・シリーズの名犯人役として何度か登場することになるパトリック・マクグーハン初登場のエピソードである。私見では、推理の面白さという点では本作は大したことはない。犯人とコロンボの丁々発止のやりとりみたいなものはあまりなく、コロ . . . 本文を読む
『藤澤清造短篇集』 藤澤清造・著/西村賢太・編 ☆☆☆☆
うーむ、やはりこういうものが出たか。西村賢太が「歿後弟子」を自称する私小説作家、藤澤清造の作品集である。これは短編集で、もう一冊代表長編『根津権現裏』も同じ新潮文庫から出ている。西村賢太がこれだけ売れて、しかもその文章のほとんどでこの作家のことに触れているとなれば、「西村賢太が入れ込んでいる藤澤清造ってどんなんだろ?」と思う人が多数 . . . 本文を読む
『喜劇 男は愛嬌』 森崎東監督 ☆☆☆
これは『男はつらいよ』シリーズ第三作『フーテンの寅』の森崎監督が、渥美清を使ってそれと同年に撮った映画である。共演者には佐藤蛾次郎や太宰久雄など「寅さん」チームの面々も含まれていて、ヒロインは賠償千恵子の妹・倍賞美津子。姉が演じる可憐で清楚なさくらと違って、妹の美津子が演じる春子は冒頭シーンでいきなりブラジャー丸出しで着替えたり、入浴シーンがあったり . . . 本文を読む
『パラダイス・シアター』 スティクス ☆☆☆★
アメリカのプログレ・ハードのバンド、スティクスが1987年に発表したアルバムで、大体においてこれが彼らの代表作とされている。要するに一番売れたということだ。
スティクスとは神話に出てくる「三途の川」のことだが、このバンド名からも分かるようにもともとはプログレッシヴ・ロック的な志向があり、ハードロックながらどこか耽美的な作風だった。イエスや . . . 本文を読む
『ホテル・ニューハンプシャー(上・下)』 ジョン・アーヴィング ☆☆☆☆★
『ガープの世界』で有名なジョン・アーヴィングをまだ一冊も読んだことがないと気づき、休暇中に読むために『ホテル・ニューハンプシャー』を買った。なぜ『ガープの世界』じゃないかというと紀伊国屋書店に置いてなかったからである。家に帰って調べると『ホテル・ニューハンプシャー』も『ガープの世界』に劣らない傑作と評価されている . . . 本文を読む
『空飛ぶタイヤ』 麻生学、鈴木浩介監督 ☆☆☆☆☆
非常に面白かった『空飛ぶタイヤ』がWOWWOWでドラマ化されていて、これがまた異常なくらい評判が良い。これは観ないわけにはいかない、というわけでDVDを購入、期待感をいっぱいに膨らませて観賞した。ここまで期待すると普通はコケるものだが、これは見事に期待に応えてくれた。大満足。
内容はかなり小説に忠実である。小説の男性キャラクターを何 . . . 本文を読む